【写真】木戸大聖&岡田将生が同じ女性を愛してしまう――『ゆきてかへらぬ』場面写真
本作は、「文化の百花繚乱(りょうらん)」が咲き誇る大正時代を舞台に、実在した男女3人の壮絶な愛と青春を描いた作品。『ツィゴイネルワイゼン』や『セーラー服と機関銃』の田中陽造が40年以上前に書いた幻の脚本を、この脚本に焦がれ続けていた根岸吉太郎監督が16年ぶりにメガホンを取り、映像化した。美しい時代を火花散らすように駆ける3人の男女を広瀬すず、木戸大聖、そして岡田将生が演じる。
今回公開となったのは、木戸演じる不世出の天才詩人・中原中也と岡田演じる稀代の文芸評論家・小林秀雄をとらえた新カット6点。煙をくゆらせながら物思いにふける2人、軒下で雨をしのぎながら泰子を待つ2人、詩を朗読する2人、互いの才能を誰よりも認めつつも、運命の女性・小林泰子(広瀬)との出会いによって翻弄されていく男たちの物憂げで色気溢れる表情がとらえられている。
木戸は、これまで映画やドラマでは破天荒な部分がデフォルメされていた中也を、年上の泰子に対して虚勢を張り、どこか背伸びしてしまう無邪気さが垣間見える新たな中也像として体現。岡田は、そんな中也の才能を誰よりも理解し、認めつつも中也の恋人・泰子を愛してしまう小林の揺らぐ心と情熱をエレガントに演じている。
それぞれの形で泰子に愛をぶつける2人だが、泰子は才気あふれる男たちの仲睦まじい様子に、自分だけ置いてけぼりにされているような、さみしさに複雑な気持ちになる。いつまでも重ならないベクトル、刹那のすれ違い。ひとりの女が、ふたりの男に愛されること。アーティストたちの戻ることのない「青春」をぜひスクリーンで見届けてほしい。
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