【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【ノーザンテースト】
ノーザンダンサーを生産したカナダの大馬産家E・P.テイラー氏の生産馬。1972年7月、米ニューヨーク州のサラトガセールに上場され、当時24歳の吉田照哉氏(現社台ファーム代表)が約10万ドルで落札しました。フランスで現役生活を送り、芝1400mの仏G1フォレ賞を勝ったあと、1976年から日本で種牡馬となりました。
左目に掛かった特徴的な白斑を持ち、筋肉質で幅のあるコロッとした馬体は父ノーザンダンサー譲り。配合によって多彩な産駒を出し、距離の長短、芝・ダートの適性はさまざまですが、共通しているのは能力の高さ。アンバーシャダイ、ダイナカール、ギャロップダイナ、ダイナガリバー、ダイナアクトレスなど多くの名馬を送り出し、82年から通算10回総合チャンピオンサイアーの座につきました。四肢頑健、成長力があり、気性的な問題もなく、80年代から90年代前半にかけてわが国の競馬を席巻しました。
父系は途絶えたものの、母の父として15年連続チャンピオンとなるなど、母方に入っての影響力はいまなお大きく、ステイゴールド、ダイワメジャーというサンデー系有力種牡馬の母方にはノーザンテーストの血が入っています。ステイゴールドの代表産駒オルフェーヴルはノーザンテースト4×3です。エアグルーヴ、サクラバクシンオー、スクリーンヒーローといった影響力の強い血にも含まれています。
◆血統に関する疑問にズバリ回答!
「アガ・カーン4世殿下が亡くなりました。競馬への影響は?」
2月4日、ポルトガルのリスボンで逝去されました。88歳。海外の競馬ニュースサイトはこの話題で持ち切りです。
ここ100年以上にわたり、アガ・カーン3世殿下→アリ・カーン殿下→アガ・カーン4世殿下と続いてきたサラブレッド帝国は、新たな後継者のもとで継続されることになります。おそらく娘のザラ・アガ・カーン王女が継ぐのでしょう。
アガ・カーン4世殿下は、ブラッシンググルーム、シャーガー、ダルシャーン、シャーラスタニ、シンダー、ダラカニ、ザルカヴァなどの名馬を生産または所有しました。コマーシャリズムに流されず、深い血統理論に基づく実践を数十年にわたって継続してきた真の馬産家であり、その別格ともいえる格調の高さは、世界中のホースマンから尊敬を集めてきました。
ヨーロッパに拠点を置くメジャーなオーナーブリーダーは、昨今、規模を縮小したり解散するケースが目に付きます。世界最大規模の競馬の庇護者であったこの一族が、これまでと同様に競馬と関わることを、おそらくは世界中のホースマンが願っていることでしょう。