メルカリ“まさかの”好決算 取引高横ばいも、営業利益79%増のワケ

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2025年02月13日 10:51  ITmedia ビジネスオンライン

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業績が好調だったメルカリ

 メルカリの業績が、ここにきて絶好調だ。


【画像】「爆益」をもたらしたフィンテック事業(FY2025.6 2Q 決算説明資料より)


 メルカリが2月6日に発表した2025年6月期第2四半期決算(2024年7月〜12月累計)によると、売上収益は前年同期比1.9%増の941億円と、横ばいに近い水準だった。


 一方で、コア営業利益は同28.9%増の111億円、営業利益は同45.9%増の114億円、純利益は同62.3%増の73億円と大幅な増益を記録した。特に、純利益については前年同期の決算において、その前の年の同期間と比較して289.4%も増益しており、そこからさらに62.3%も利益を積み増すという驚異的な伸びを示したことになる。主な要因としては、国内のフィンテック事業であるメルペイの収益化が進み、同社の収益構造の改善に寄与したことにあるという。


 決算が公表される前は、10月の暖冬による冬物商品の販売不振や、SNSで炎上したクレジットカードの不正利用問題の影響もあり、ネガティブな決算を予想する声もあった。実際、メルカリのCtoCビジネスをめぐっては、取引高(GMV)の成長鈍化や米国事業の不振が懸念されていた。その影響からか、メルカリの主力事業である国内マーケットプレイスのGMVは前年同期比5%増にとどまっている。平均利用者数は2016年以来初めて前年同期を下回った。


 しかし、利益面では大きな伸びを見せている。なぜ売り上げが横ばいでも利益が急増したのか。本稿ではその理由を考察したい。


●好決算の要因は単なるコストカットではない


 メルカリの営業利益が急伸した最大の要因は、広告宣伝費やマーケティングコストの最適化が奏功したことだろう。特筆すべきは、その最適化が、単なるコストカットだけでなく、成長戦略も織り込んだ施作となっていたことだ。


 同社は新規ユーザー獲得のためのプロモーションを抑制していたが、AIを活用したレコメンド機能の強化により、既存ユーザーの取引頻度を高めることに成功した。既存顧客のライフタイムバリュー(LTV、顧客生涯価値)を底上げする形で利益率向上につなげたことも、決算が市場に高く評価された要因の一つだろう。


 もう一つの成功要因は、フィンテック事業における成長である。決算によれば、メルペイの債権残高は前年同期比38%増の2133億円に達し、コア営業利益は12億円の黒字となった。足元では幅広い品目で物価高が懸念されているが、その受け皿としてメルペイの後払いサービスが選択された可能性がある。


 メルペイの債権は99.3%が回収されており、優良な顧客層を維持しているのも興味深い。これにより、従来のマーケットプレイス事業に依存していた収益構造が多様化し、安定した利益成長が可能になった。


 米国事業の損失縮小も業績改善の一因となっている。メルカリUSの流通取引総額は前年同期比27%減の1億7500万ドルと大幅減となったが、手数料体系の見直しとコスト削減策により、セグメント損失は前年同期の21億円から14億円に縮小した。さらに、12月には単月黒字を達成しており、今後の業績回復が期待される。


●アクティビストは好決算に寄与してないのか


 今回の好決算に、「アクティビスト」の影響はあるだろうか? 個人投資家でビジネスインフルエンサーでもある人物が、メルカリの経営に対し積極的な提言を行ってきた。主な提言としては、米国事業からの撤退、配当性向30%での配当開始などが挙げられる。


 これらの提言がメルカリの業績に直接的な影響を与えたかを評価するのは難しい。現時点で、メルカリがその提言を受け入れ、具体的な経営戦略の変更や業績改善策を実施したという姿勢は確認できず、メルカリの米国事業は継続しており、配当もゼロのままだからだ。


 しかし、こうした提言が、他の株主や投資家やメディアの注目を集め、メルカリの経営方針や業績に対する関心を高める効果をもたらしたことは評価に値するだろう。


 実際に、2024年9月に開催されたメルカリの株主総会の内容を振り返ると、業績や経営戦略などについての踏み込んだ質問が多く寄せられていたように筆者は受け取っている。また、総会で度々問題となる「株主の質」が向上しているように感じられた。


 そのため、上述のような提言を定量的に評価することはできないものの、株主や投資家の関心を高めた可能性については評価すべきだろう。市場からの注目が集まることで、経営陣に緊張感を与え、ガバナンスが改善される効果があることも事実だ。


 今後もメルカリが株主の反応をどのように受け止め、経営戦略に反映させるかに一層注目が集まるだろう。


●「メルカリハロ」は売り上げベースでも成長を模索


 国内では、CtoC取引の活性化に加え、越境ECやBtoC領域への展開が求められてきている。BtoC領域においては、単発アルバイト仲介サービス「メルカリハロ」などの新サービスが好調な滑り出しを見せているようだ。今後のメルカリは、「モノ」の市場だけでなく「ヒト」の市場という新たな分野で収益機会を獲得していくことだろう。


 メルカリの2025年6月期第2四半期決算は、取引高の横ばいが続く中で、コスト管理とフィンテック事業の収益化により、大幅な利益成長を遂げた。


 今後は、特に国内市場の成長維持、フィンテック事業の拡大、米国事業の収益改善がカギを握る。これらの施策が成功すれば、メルカリの企業価値は一段と向上し、株価のさらなる回復が期待される。


 成長と収益性のバランスをいかに取るかに注目が集まりそうだ。


●筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCEO


1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手掛けたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレースを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CEOとしてビジネスモデル構築や財務などを手掛ける。



このニュースに関するつぶやき

  • とりあえず、マイナンバー登録か就業ビザの登録を義務付けて、販売額からちゃんと所得税取る仕組みにしろよな。
    • イイネ!3
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