“考察祭り”の金ドラ支える、39歳俳優の「えげつない演技力」。見たことない弁護士像だと確信したシーンは

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2025年02月14日 16:20  女子SPA!

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画像:松山ケンイチInstagramより
 1月から放送開始したドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)の放送が毎週楽しみでならない。浅見理都氏の同名漫画を実写化した本作は、クリスマスイブの夜に元警察官の父親・山下春生(リリー・フランキー)を殺された娘・心麦(広瀬すず)が、父が残した手紙をキッカケに事件の闇に迫っていく姿を描いたサスペンスドラマだ。原作がまだ完結していないこともあり、視聴者のみならずキャストの間でも“考察祭り”が繰り広げられている。

「春生を殺したのは誰なのか?」「春生と心麦に血縁関係はあるのか?」という謎を軸としながら、真相が明らかになるどころか、毎話謎が深まっていく展開にどんどん引き込まれてしまう。本格的なサスペンスドラマということで考察要素も多く、それでいて奥深い。ただ、放送が待ち遠しくなる要因はストーリーだけではない。それは弁護士・松風義輝役の松山ケンイチの演技だ。

◆仏頂面だけど感情豊か。1話で早々に心を掴まれる

 春生を殺害した容疑で、遠藤友哉(成田凌)が早々に逮捕される。友哉は春生が殺人事件の犯人として逮捕した死刑囚の一人息子だ。しかし、春生の手紙には「友哉は冤罪であり、友哉の弁護を松風義輝に任せてほしい」という趣旨の内容が記されていたため、心麦が義輝に協力を求めたところから本格的にストーリーが始まる。そして、1話の心麦が義輝の弁護士事務所を訪れるシーンで早々に心を掴まれた。

 まず義輝は外食を済ませて、鼻歌交じりで事務所に戻ってくる。その後、依頼に来た心麦から春生の書いた手紙を読み上げるシーンになるが、手紙の中に自身の名前が書かれていることに気付き、「えっ?」とどこか間抜けな声を上げて固まる。心麦から「父とはどういった関係ですか?」と聞かれると、「いや、正直名前も聞いたことがないです」と回答すると、間髪入れずに「怖っ、何で俺のこと知ってんの?」とツッコむ。

 こう書くとひょうきんな弁護士かと思うが、表情は基本的に仏頂面。ただ、表情とは裏腹に、言動による感情表現はとても豊かだ。さらには、1話ラストでは「自分の父親を殺したかもしれない犯人を野に放とうとしてるのかも」と心麦に厳しい言葉を向けたり、義輝に友哉の弁護を依頼することを決めた心麦に「お父さんを信じる君を信じるよ」と言ったりなど、厳しさや熱さも見せた。

◆前例のない弁護士キャラが、松山の底知れぬ表現力で誕生

 優秀だったり腹黒かったりなど、リーガルドラマをはじめ、これまで様々なドラマで弁護士が登場してきた。しかし、義輝には「あの弁護士キャラっぽいな」などと思わせる要素はない。前例のないタイプの弁護士である。先述した通り、表情では喜怒哀楽が見えないが、セリフの言い方や間の使い方を巧みに使い、義輝というキャラの人間らしさを表現している松山の演技力はすさまじい。

 2024年の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)では頑固で気難しい裁判官・桂場等一郎を演じ、2023年のドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系)ではコミカルさがありながらも熱さを持つ刑事・魚住譲を演じた松山。義輝はそれらの役の魅力を掛け合わせながらも、桂場や魚住のようなキャラではなく、真新しい魅力を放つキャラになっている。松山の底知れぬ表現力の高さを毎話見せつけられ、知らず知らずのうちに目が離せなくなっていた。

◆ずっと見ていたくなる、周囲との掛け合いも最高

 義輝は単体でも魅力的ではあるが、他のキャラとの掛け合いも最高。2話冒頭、雑誌記者の神井孝(磯村勇斗)に不用意に接触した心麦に対して「君、危なっかしい」「行動力、大いに結構」「結構ではあるがやみくもに動きすぎ」と注意。3話では家に真っすぐに帰るように指示した心麦を夜中に街中で見かけると「心麦さん、どうしてここにいるのかな? お家帰る約束は?」と満面の笑みを浮かべて指導する。保護者のようにとがめるシーンが多く、毎度微笑ましい。逆に心麦が義輝を茶化すケースも珍しくなく、2人の掛け合いはずっと見ていたくなる。

◆義輝を中心に作られる空気の変化に、登場が待ち遠しくなる

 一方、義輝が留置所で友哉と面会する際にはシリアス全開。また心麦に執着する記者・神井と接する時は、冷静ながらも好戦的なバチバチした空気が流れる。楽しげな空気からどんよりとした重い空気まで義輝を中心に作られており、必然的に義輝が登場する時の期待感が増していく。

 義輝の登場が待ち遠しくなり、いろいろなキャラとの絡みも見たくなるし、コミカルな一面も当然見たくさせる。加えて、同じキャラであるにもかかわらず、違和感を与えることなく、コミカルもシリアスもどちらもしっかり空気を作れてしまう松山の演技にやはり驚かされる。

 すでに『クジャクのダンス、誰が見た?』が最終回を迎えた時には、義輝ロスが起きることが確定している。それでも、より深いロスを味わうことを覚悟して義輝に注目したい。

<文/望月悠木>

【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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