中条あやみ、フォトエッセイに込めた想いーー自分をさらけ出したことで伝えたかったこと

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2025年02月18日 13:00  リアルサウンド

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フォトエッセイ『明日へのことば』を執筆した、女優・中条あやみ

 『Seventeen』『CanCam』など名だたるファッション雑誌の専属モデルを務め、『君と世界が終わる日に』『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』など人気ドラマシリーズに立て続けに出演し、ファッションモデルとしても女優としても第一線を走り続ける、中条あやみ。彼女にとって初書籍であるフォトエッセイ『明日へのことば』(幻冬舎)が、2025年2月4日に発売された。


 本書は、中条が今の自分をつくってきた経験、気持ちを支えてきた出来事から生まれた想いを“言葉”にして記録したフォトエッセイ。今回のインタビューでは制作の経緯から本書に込めた想いを語ってもらった。


◾️言葉を届けるために、自分をさらけ出した


ーー中条さんにとって、今回が初めての書籍となります。「フォトエッセイ」という形式を選ばれた理由を教えてください。


中条あやみ(以下、中条):もともとSNSでも自分のパーソナルなことを発信することが得意ではなく、自分をさらけ出すことにも苦手意識があり、本を出すということはそれまで考えたことはなかったのですが、編集者の方から「中条さんがインタビューやSNSで発する言葉が印象的で、影響を受けました」と伝えていただいて。14歳でこの仕事を始め、今年で28歳。気づけば、人生の半分をこの仕事とともに歩んできました。そんなタイミングで「言葉」にフォーカスしたフォトエッセイを出す、という提案をいただいた時には、私も自然と「やってみたい!」と思えて。


 やると決まった瞬間に、撮りたい写真や訪れたい場所など具体的にやりたいことがイメージすることが次々と頭に浮かび、実際に完成した本を見ても、それが全て実現できたと思います。


ーー本書を読むと、中条さんが言葉をとても大事にされていることを感じます。言葉への意識は、いつ頃から芽生えたのでしょうか?


中条: このフォトエッセイを制作している時も「私はいつからこんなに言葉に影響を受けていたんだろう?」と振り返ってみて、小学生の頃は図書室に通うのが大好きだったことを思い出しました。ナイチンゲールやヘレン・ケラーのような強く生きる女性たちの伝記本を読んでドキドキしたり、2年前に翻訳させていただいたサン=テグジュペリの『星の王子さま』にも大きな影響を受けました。


 それと、少し恥ずかしいのですが、ノートに歌詞を書いていたりもしていて(笑)。昔から本を読むことや書くことが好きで、言葉に敏感だったんだと思います。


ーー鈴木亮平さんやカール・ラガーフェルドさん、吉岡里帆さんといった方々から贈られた言葉も綴られていますね。忙しい日々を過ごしながら、どのようにして言葉を記憶に留めているのでしょうか?


中条:昔から日記を書いているんです。自分が「素敵だな」と思った言葉って、苦しんでいる時や大変な時だからこそ気づけるもので、逆に自分が満たされている時にはスッと入ってくるものではないと思っていて。今回のフォトエッセイを書くにあたって、過去に書いた日記を読み返しながら、贈ってもらった言葉を振り返りました。


【画像】インタビューに答える、中条あやみの最新カット


ーー中条さんにクールな印象を持っていたのですが、この本を読んでから「熱血」という印象も加わりました。本書には「『順風満帆だよね』と言っていただくことが多いけれど、実はそんなことはなくて」と書かれていますね。


中条: ありがたいことに、「順風満帆ですね」「クールな方ですよね」と言っていただくことがあります。そう言っていただくことはとても嬉しいことなのですが、本にも「雑草魂」と書いているように、実際の私は大阪生まれ大阪育ちの下町っ子(笑)。本来の自分とは少し距離のある印象を持たれることが多いことは感じていました。


ーーSNSやYouTubeで自分自身のことやご自身の趣味を発信することで、世間のイメージと本来の自分とのギャップを縮めようと思うことはありましたか?


中条: それにはあまり興味がありませんでした。俳優として役を演じるうえで、パーソナルな情報がそこまで必要だとは思わなかったですし、私自身もタイミングによって変わっていく部分もある。自分のイメージをコントロールするよりも、作品を観てくださった方に自由に受け取っていただきたい、と考えていました。


ーーそんな中条さんが本書ではパーソナルなことについても綴られています。


中条:この本では自分自身のことをしっかり書こうと思ったのは、自分のことについて説明しないまま言葉を書いてしまっても、私が本当に伝えたいこととは違う形で受け止められてしまうかもしれない、と思って。だからこそ、この本では、まず最初に自分自身について書くことにしました。それも、素の自分をさらけ出せるスタッフの方々と一緒に制作できたこと、そして阿蘇という地で撮影できたからこそ書くことができたんだと思います。この一冊を読めば中条あやみという人間が全て分かるんじゃないかな、というくらい全てを綴りました。


ーー本書の撮影地である熊本・阿蘇は、中条さんが選ばれたんですよね。


中条:熊本には東京ガールズコレクションで訪れることはありましたが、会場の外を歩くことはなく、阿蘇に訪れたのは今回が初めてでした。これまでにもCMやMVなどの映像を見て「綺麗だな」と思って調べてみると、ロケ地が阿蘇だったことも多くて。「綺麗」という言葉には「純粋」や「清らか」「澱みのない」という語源があるらしく、そこから水をイメージし、水が綺麗な熊本が思い浮かびました。そこで以前から気になっていた阿蘇で撮影することを決めました。


ーー実際に訪れた熊本はいかがでしたか?


中条:熊本には、清らかな雰囲気と生命力あふれるイメージを持っていたのですが、実際に訪れてみると、人も温かくて、まるで実家のような居心地のよさがありました。ご飯屋さんに行ったときも、初めて会った川柳を詠んでるおじちゃんがずっとダジャレを言いながら、だご汁(熊本の郷土料理)を出してくれて(笑)。人も街もご飯も、すべてが素敵で、自然と力が湧いてきました。


 鍋ヶ滝(なべがたき)に行ったときは梅雨の時期だったので、空が曇っていたのですが、到着した瞬間、雲の合間から光が差し込み、まるで光のカーテンのような景色が目の前に広がっていて……。撮影では、そんな奇跡のような瞬間にたくさん出会いました。


◾️自分が助けられたからこそ、誰かを言葉で救いたい


ーー本書に綴られた言葉には「誰かを励ましたい」という想いを強く感じました。多くの人々にとって憧れの存在である中条さんには悩み相談が寄せられるのではないかと思います。例えばファンの方からInstagramのDMも来たりするそうですね。


中条:すごく来ますね。たまに返信することもあります(笑)。


ーー返信されるのは意外でした(笑)。


中条:もちろん長文を送るのは難しいのですが、すごく悩んでいる子のメッセージを読んで「自分もこういうことがあったよ」と返したこともあります。


 以前は私も「あんな人になりたい」と誰かに憧れていたのですが、年齢を重ねるにつれて、仕事でも年下の子と接する機会が増えてきました。後輩の子たちを見ていると、自分も悩んでいた時期があるからこそ「後悔してほしくない」と思うんです。また、私自身も先輩の言葉や想いに助けられてきたことがたくさんありました。だからこそ、私の言葉で誰かを救うことができたらいいな、という想いは常に持っています。


ーーオーディションをたくさん受けて「結果は散々」だったことも書かれていますが、華々しく世に出てきた印象があったのでとても意外でした。ある意味では苦い記憶でもあると思うのですが、書こうと思ったのは、どのような想いがあったのでしょうか?


中条:私もドキュメンタリー番組など観ていて「こんなにすごい方でも、こんなに苦労しているんだ」と思うことがありました。ハリウッドセレブのようなスターも苦悩を抱えていて、どんなに幸せそうに見えても、人は見かけによらず、いろんなことを考えている。完璧な人なんていないんだなと強く感じていました。私自身もコンプレックスや悩み、できないことを抱えています。でも、まずは自分を大切にすることで、周りの人のことも大切にできるようになる。「まずは自分が自分の一番の味方でいてほしい」という想いを込めて、言葉を書いていました。


◾️偉大な先輩から芝居の現場で学んだ「伝えることの大切さ」


ーー大切にしている持ち物を紹介するページでは、それぞれのアイテムが中条さんの人生で関わってきた人々との思い出と結びついており、家族や仕事仲間への感謝が綴られていますね。誰かへの想いは常に伝えるようにされているのですか?


中条:私の父がイギリス人で、いつも「I love you.」「I’m proud of you.」と気持ちを言葉にしてくれる文化で育ちました。言葉にするのは少し恥ずかしいけれど、本書にも書いた言葉でもあるのですが、國村隼さんが「(お芝居がもっとうまくなりたいとかいろんなことを心のなかで考えていたとしても)結局、伝わらないと意味がない」とおっしゃっていて。それはお芝居においても日々を過ごしていても同じことだと思うんです。もちろん本にすることで言葉にできたこともありますが、日々を生きていても感じたことはちゃんと言葉にして相手に伝えようと思っています。


 極端な話かもしれませんが、もしかしたらその人と会えるのはその瞬間が最後になるかもしれない。前に、人は亡くなるときにできなかったことや言えなかったことを強く後悔する、と読んだことがあって。私は後悔を残したくない。だからこそ、私はできるだけ想いを言葉にして伝えていきたいと思っています。暑苦しく感じるかもしれませんが(笑)。


ーー俳優として自分ではない誰かの言葉を発していると、自分を見失うものなのでしょうか。


中条:そうですね。この仕事を続けていても、「私は本当にこの仕事が好きなのかな?」「誰のために、何のために頑張っているんだろう?」と、自分の気持ちが分からなくなることがありました。燃え尽きたような気持ちになり、「辞めようかな」と思った瞬間も何度もありました。


 崖っぷちに立たされたような気持ちになったとき、「自分がどう見られたいのか」「自分は何をしたいのか」と考えることすら、一度すべて手放してみようと思ったんです。まるで無人島のような場所に逃避した自分を想像して、すべてがゼロになった状態で「自分には何があるのか」と、改めて向き合ってみました。そこで、何も持っていない自分に何があるのかを考えてみると「人と話すことが好き」「作品を作ることが好き」ということが最初に浮かび、自分が本当に好きだったことが明確になったんです。


 私は、これからも映画や雑誌を通じて、みんなと作品を作り続けていきたい。そう強く思うようになったのは、25〜26歳になってからのことです。仕事を始めて10年近くかかりましたが、今では心から「この仕事を一生続けていきたい」と言えるようになりました。


(取材・文=リアルサウンドブック編集部、撮影=はぎひさこ、スタイリスト=藤井希恵(THYMON)、ヘアメイク=横山雷志郎(Yolken))



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