南野拓実の高い貢献度、前田大然の神出鬼没の動き チャンピオンズリーグ(CL)日本人選手総括

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2025年02月20日 19:20  webスポルティーバ

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 新しいレギュレーションで実施されている今季のチャンピオンズリーグ(CL)。リーグフェーズ上位24チームの9位から24位までの16チームが決勝トーナメント進出を懸けて争うプレーオフも、これまでにはなかった新しい試みだった。

 CLの決勝トーナメントを戦ってこそ一流の証。選手としてのステイタスが代表チームでの活躍よりCLでの活躍に移行した感のあるいま、クラブにとってはもとより、選手にとっても絶対に負けられない戦いとなる。日本人選手も例外ではない。

 日本人選手が所属するクラブでリーグフェーズでの脱落が決まったのはシュツットガルト(チェイス・アンリ)、ザルツブルク(川村拓夢)の2チーム。逆に8位以内に入り、すでに決勝トーナメント進出を決めているチームはリバプール(遠藤航)、アーセナル(冨安健洋)だ。

 16強入りの8枠を懸けたこのプレーオフには、以下の6人の日本人が挑んでいた。伊藤洋輝(バイエルン)、上田綺世(フェイエノールト)、前田大然、旗手怜央(セルティック)、南野拓実(モナコ)、守田英正(スポルティング)。

 このうち通過できなかったのは前田、旗手、南野、守田の4人。伊藤所属のバイエルンは決勝トーナメント1回戦でアトレティコ・マドリードかレバークーゼンと、上田所属のフェイエノールトはインテルかアーセナルと対戦する(抽選は2月21日)。

 伊藤は対セルティック戦の後半33分から、左SBとして交代出場を果たした。記念すべきCLデビュー戦は、同時に欧州屈指の名門、バイエルンでのデビュー戦だった。それは35人目となる日本人チャンピオンズリーガー誕生の瞬間でもあった。シーズン直前に負ったケガから無事に回復。朗報と言わずにはいられない。

 だが、楽観は許されない。バイエルンの左SBは、ベテランのラファエル・ゲレイロ(ポルトガル代表)を筆頭に、セルティック戦で交代出場するや土壇場で決勝弾を決めたアルフォンソ・デービス(カナダ代表)、右SBも兼務するヨシプ・スタニシッチ(クロアチア代表)と人材豊富だ。バイエルンというビッグクラブの激しい競争のなかで、どれほど出場機会を得られるか。

【高い位置でのプレーが板についてきた南野】

 上田は逆に故障で戦線離脱した。ミラン戦のファーストレグでは先発を飾ったものの、後半開始時にその姿はなかった。これまでスタメンを飾っていたサンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)が今冬のマーケットでミランに移籍。せっかく巡ってきたチャンスを故障でフイにした格好だ。エースストライカーを奪われた先のミランに対してチームは勝利。まさに値千金の勝利を飾り、万々歳の成果を得たが、上田は蚊帳の外に置かれてしまった。決勝トーナメント1回戦には間に合いそうにないという話だ。

 故障の話を続ければ、ドルトムントに敗れたスポルティングの守田も、セカンドレグはベンチ外となった。日本代表では「守田のチーム」と言われるまでになり、クラブでもさらなる飛躍が期待された今季だったが、そうはならなかった。守田が万全ではない日本代表にどんな影響が生じるかも気になる。

 一方で、11月の日本代表戦で故障した南野は、無事に復帰。ベンフィカと対戦したプレーオフでは、ファーストレグこそ途中出場に甘んじたものの、セカンドレグではスタメン出場。ゴールを決めるなど、好印象を残した。

 ポジションは5−3−2の2トップの一角。これまで4−2−3−1の1トップ下を定位置としてきた南野にとって、ベンフィカ戦のセカンドレグは、よりアタッカー色の強いポジションでのプレーとなった。MFかFWかと言えば、これまでMF的だった南野だが、高い位置での動きがすっかり板につき、アタッカーらしくなっている。

 試合は、ファーストレグを0−1で落としたモナコが、試合を終始リードする展開となった。ベンフィカに決勝弾を奪われたのは後半39分。それまで最前線で走り回った南野が、ベンチに下がったのはその3分後だった。その出場時間の長さに貢献度の高さがうかがい知れた。

【バイエルン守備陣を慌てさせた前田】

 ベンフィカ対モナコ戦以上に競った試合を演じたのが、バイエルン対セルティックだった。先述したデービスの決勝弾が決まったのはアディショナルタイムの後半48分。前田、旗手がチームの中心としてプレーするセルティックは、格上バイエルンに大善戦した。

 1週間前にセルティックホームで行なわれたファーストレグでは、後半4分までにバイエルンが2−0でリードする展開だった。順当な結果に終わるだろうと思われたが、そこからセルティックは踏ん張った。チームで最も鮮烈な動きをしたのは、後半20分、ポジションを左ウイングから1トップに変えていた前田だった。

 持ち前のスピードで最前線のディフェンダーと化した前田は、高速で走りに走った。FWにも守備を求める発端となったのは1990年前後にイタリアで始まったプレッシングであるが、その最新の進化形を前田のアクションに見た気がする。前田のスピードに見慣れているつもりの日本人の目にも恐ろしく速く映った。バイエルンのディフェンダーは慌て、ペースを奪われることになった。

 前田は後半34分にはスコアを1点差とする得点も奪っている。CKのチャンスからヘッドで押し込んだゴールだが、前田の神出鬼没さが欧州に知れ渡った瞬間でもあった。「なんだ、あのスキンヘッドの日本人は!」と仰天した視聴者は世界中に多かったはずだ。

 ファーストレグで見せた最前線で構える猛烈なディフェンダーぶりは、アリアンツアレーナ(バイエルンのホーム)で行なわれた折り返しのセカンドレグでも発揮された。ブレンダン・ジョーンズ監督は、前田を試合開始時から1トップで起用した。前線の流れを維持しようとした狙いは奏功する。最前線でプレッシングに最大限貢献した前田の特異性こそが、最終盤まで試合がもつれた原因だった。

 今冬、セルティックを去り、フランス1部のレンヌに移籍した古橋亨梧はこの前田の活躍をどう見ただろうか。フランスリーグはリーグランキング5位で、欧州5大リーグの一角をなし、ランク11位のスコットランドリーグよりレベルは数段高い。だが、CLのレベルはその比ではない。名門バイエルンとのガチンコ勝負は、フランスリーグで現在13位に位置するレンヌにとって、ないものねだりに等しい。古橋の移籍は栄転だったのか。

 前田の今季のCLにおける得点は4点となった。言うまでもなく日本人最高の数字である。その走力は日本の新しい武器になる。来月行なわれる日本代表戦(20日・バーレーン戦、25日・サウジアラビア戦)は、今が旬な前田の1トップで臨むべし、と言いたくなる。

 あらためて整理すれば、決勝トーナメントに出場する可能性を秘めた日本人選手は4人(遠藤、冨安、上田、伊藤)である。だが、冨安は長期離脱中で、上田もケガで出場が危ぶまれている。遠藤も主力メンバーとは言えないし、伊藤も復帰したとはいえポジションを得るには時間がかかりそうだ。

 まだまだ少なすぎる。W杯でベスト8以上を狙おうとしているチームの人数ではないと言うべきだろう。スタメン出場を飾りそうな主力級が最低でも5人ぐらいいないと、ベスト8以上は現実的な目標とは言えないのだ。欧州組の活躍をまだ手放しで喜ぶわけにいかない状況にある。

 CLの決勝トーナメントを戦ってこそ一流の証。ここからの4試合こそが本番だ。楽しみに目を凝らしたい。

 ちなみに英国ブックメーカー各社の優勝予想では、プレーオフでマンチェスター・シティを合計スコア6−3で下したレアル・マドリードが、リバプールをかわし1位の座に就いた。ウイリアムヒル社のオッズによれば3位タイはバルセロナとアーセナルで、以下5位バイエルン、6位パリ・サンジェルマン、7位インテル、8位アトレティコ・マドリードと続く。 

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