ぼやく石破総理「“減税も福祉充実も”、みんなウケること言いたがる」 与野党協議は最終局面

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2025年02月23日 07:31  TBS NEWS DIG

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国会では、2025年度予算案をめぐる与野党協議が最終局面を迎えている。少数与党のため、野党の協力を得ないと新年度予算を成立させられない与党は、「高校授業料の無償化」などをめぐり日本維新の会と、「年収103万円の壁の引き上げ」などをめぐり国民民主党との協議を重ねる他、「学校給食の無償化」など約3兆8000億円の予算案の修正を迫る立憲民主党とも政策責任者同士で意見を交わしてきた。どの党の主張も、減税など家計を支援する政策で世論ウケはいいのだが、財源の問題がついて回る。難航する与野党協議に石破総理のぼやきが止まらない―

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高校生相手に総理が本音をポロリ…

2月17日夕刻、石破総理は官邸で政策コンテスト「全国高校生政策甲子園」で最優秀賞を受賞した高校生と面会していた。自由設定部門で最優秀賞に選ばれた東京学芸大学附属高校の生徒は「選挙が人気投票になっている」などと指摘し、“候補者ではなく公約に投票する”新たな選挙制度を提案。すると石破総理は、政治家は世論にウケたがると話し、野党が減税や生活者支援を迫ってくることを踏まえ、こうぼやいた…

「みんな、税金はまける、福祉は充実する、公共事業もやる、国債は幾ら出してもそのうち返せると。そういうことなら世の中苦労しない」

支持を得る「年収の壁引き上げ」「高校授業料無償化」 だが、課題も…

2月18日、自民・公明・国民民主3党による「年収103万円の壁」の協議が、およそ2か月ぶりに再開された。所得税がかかるようになる「年収103万円の壁」をめぐっては、去年178万円への引き上げを主張する国民民主党に対し、与党は123万円への引き上げを決め、その後溝が埋まらない状況が続いてきた。

こうした中、新年度予算案の年度内成立を目指し、国民民主党の賛同を得たい自民党は非課税枠を「年収200万以下は160万円に拡大」「年収200万円超〜500万円以下は25〜26年分の特例措置として10万円上乗せする」とする新たな提案をおこなった。だが、これに対し国民民主党の古川代表代行は「ボールは返ってきたけど、かなり暴投だ」と猛反発。

連立を組む公明党からも「不十分で有権者の理解は得られない」との声があがり、その後、公明党が非課税枠を広げる対象者をこれまでの年収500万円以下から
850万円以下に拡大し、4段階に分ける新提案をおこない、3党は近く再協議を行うこととなった。

「年収103万円の壁」の見直しを巡っては、これまでも課題との認識は持ちながらも与党が対応を怠ってきたことが、去年の国民民主党の躍進に繋がったにもかかわらず、自民党が引き上げに慎重な姿勢を見せることにSNS上を中心に自民党への反発は高まっている。

ただ、国民民主党が求める178万円への引き上げでは7兆円〜8兆円の税収減が見込まれていて、その穴埋めを国民民主党が提示できていないのも事実だ。自民党幹部はこう苦言を呈す「軽々しく豆腐みたいに簡単に1兆、2兆っていうよなぁ…」

国民民主党との協議と平行して、与党は「高校授業料の無償化」をめぐり、日本維新の会とも協議を続けている。教育の機会均等を図る高校授業料の無償化については、来年4月から私立高校の支援額を年間45万7000円に引き上げることなどで合意する見通しがついてきた。

ただ、維新の要求に応じて支援額がつり上がっていることに、自民党の萩生田元文科大臣は「サービス合戦でバナナのたたき売りのようだ」と皮肉り、「中身は全然議論しないまま、野党の言いなりに押し倒されて予算成立を急いだということになれば、将来に遺恨を残す」と批判する。

実際、高校授業料の無償化をめぐっては、次のような課題が指摘されている

<高校授業料無償化の課題例>
▼浮いたお金を塾代に充てるなど受験戦争が過熱。子どもに新たな格差が生まれる
▼私立高校は授業料を引き上げ財政余力をつけ、設備の充実や優秀な教師を確保。私立と公立に新たな格差が生まれる
▼公立・私立の選択肢は地域によって異なり、国が全国一律で支援すべきものではない

維新の吉村代表が大阪府知事であることを踏まえ、自民党内からは、こんな恨み節も聞こえてくる「教育無償化を先行してやっている大阪は、この影響で財政が相当悪くなっているようだ。その肩代わりを国にやってもらいたいという思いもあるんだろ」(自民党関係者)

与野党双方に求められる「政治の責任」

「年収103万円の壁の引き上げ」や「高校授業料の無償化」など、野党の主張する政策は、物価高などに苦しむ有権者から支持を得ている。特に「年収103万円の壁の引き上げ」は去年の衆院選での国民民主党の躍進やその後の支持率の上昇を見ても期待する声が大きいことが窺える。

ただ、ここで問題になるのが、やはり財源だ。明確な財源を示さずして聞こえの良いことだけを言うのでは、有権者の不満の受け皿にはなれても責任ある政治とは言えない。

では、財源はどう生み出すのか。主に3つの方法が俎上に上がっている。

(1)行財政改革・無駄な予算の削減や、外為特会の余剰金の活用などで、財源とする
(2)国債の発行(国の借金)をして、財源とする
(3)生産性を高めるなどして税収を増やし、財源とする

いま、与野党間で主に議論されている財源の生み出し方は(1)だ。立憲民主党は「本気の歳出改革チーム」を作り、新年度予算案について約3兆8000億円の“ムダ”を指摘。その分をガソリン価格の引き下げや学校給食の無償化に充てるよう要求している。

一方、国民民主党や日本維新の会は主張する政策実現のための十分な財源は示せておらず、政府・与党側に財源を考えるよう求めている。特に国民民主党が求める「年収103万円の壁」の178万円への引き上げには7〜8兆円の財源が必要となることから、実行するなら(2)の国債発行(国の借金)をすることになる可能性が出て来る。

“今の苦しい生活を乗り切るためには減税は必要”との主張は生活者に寄り添う姿勢のあらわれでもあるが、ツケはいつかは自分たちや将来世代にはね返ってくるものだということを忘れてはならず、国会での丁寧な議論が必要だ。

自民党は(3)「生産性を高め税収を増やす」ことを主張する。一時的な減税は消費の喚起に繋がるが、少子高齢化で生産年齢人口が減少する中、今の公共サービスなどを維持するためには、減税により国の財政を不安定化させるのではなく、生産性を高めることが重要との考えだ。
ただ、派閥の裏金問題の実態解明に本気で取り組む姿勢は見えず、信頼回復が出来ていない中、何を訴えても有権者に声が届きにくくなっているのが現状だ。

減税や生活者支援の政策に慎重な姿勢を見せることは有権者の理解が得られにくい。確かに今の生活に苦しむ国民に政治は向き合わなければいけないが、同時に未来にも責任を持たなければいけない。政治家に求められるのは「勇気と真心を持って真実を語る」ことだ。これは渡辺美智雄元総理が語り、石破総理が就任前まで度々引用してきた言葉だ。

各党、今夏に控える東京都議会議員選挙や参議院選挙を見据え激しい駆け引きを繰り広げているが、「今」だけではなく「未来」にも責任を持った真摯な議論が求められている。

TBSテレビ政治部
官邸キャップ 中島哲平

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  • 立民党は「本気の歳出改革チーム」を作り新年度予算案について約3兆8000億円の“ムダ”を指摘、と。が、その信ぴょう性は?信ぴょう性を証明する為、予算案全体とその明細書を示していただきたい。
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