第75回ベルリン国際映画祭ジェネレーション部門でスペシャルメンションされた映画『海辺へ行く道』(2025年晩夏公開)の横浜聡子監督 ドイツで開催された世界三大映画祭の一つ「第75回ベルリン国際映画祭」ジェネレーション部門で上映された横浜聡子監督の映画『海辺へ行く道』(英題:Seaside Serendipity)が、スペシャルメンション(特別表彰)を受けた。
【画像】映画『海辺へ行く道』公式上映時の横浜聡子監督、原田琥之佑 現地時間22日、HKW 1 - Miriam Makeba Auditoriumにて行われた授賞式に出席した横浜監督は「この映画は劇的な出来事は起こりませんし、社会問題を叫ぶ映画でもありません。何か素敵なことが起こるかもしれないというささやかな予感を胸に、無邪気に作品を作り続ける若者たちの映画です。今回賞をいただけたのは、そんな、目に見えない、言葉で表せない彼らの”予感”が伝わったからかもしれません。ジェネレーション部門の審査員の皆さん、この作品を選んでくださり本当にありがとうございます」とコメント。
さらに、「ベルリンの観客の皆さんは、この映画にちりばめられたユーモアを見てたくさん笑ってくれました。私はその瞬間が一番幸せでした。ベルリンで聞いた笑い声と温かい拍手を支えにこれからしばらく生きていける気がします。観客の皆さん、ありがとうございます」と観客へ感謝の言葉を送り、喜びをかみしめた。
ジェネレーション部門は1978年に設立され、子どもが主人公であり、子どもを題材に扱った作品が対象。今回、『海辺へ行く道』は、4歳以上が対象となるGeneration Kplusに選出され、国際審査員によるスペシャルメンションを授与された。国際審査員からは、「この映画は、優しさと遊び心のあるユーモアで私たちの心を掴みました。明るく陽気な想像力と創造力で、芸術の無限の可能性と、予期せぬ出来事と出会う幸福を思い出させてくれました」と評された。
なお、これまでの日本映画で、同部門でのスペシャルメンション獲得は、『ウィーアーリトルゾンビーズ』(19年、長久允監督)、『風の電話』(20年、諏訪敦彦監)があったが、Generation Kplusでの授与は本作が日本初となった。
現地時間17日にワールドプレミアとなる公式上映、舞台あいさつ、Q&A、フォトコールに参加し、一足先に帰国していた主演の原田琥之佑は「横浜監督はじめ、大好きなメンバーで作ったこの作品が素晴らしい賞をいただけたのは超絶うれしいです!この映画は、僕たち中学生が主な登場人物になっています。だからこそ、【ジェネレーション部門】という同世代の子どもたちの部門で選んでもらえたことにご縁を感じましたし、すごく誇らしく思います」とコメントを寄せ、「もっともっと世界の人へ届いてほしいと思っています」と、これからの劇場公開に向けて期待を寄せた。
本作は、『ジャーマン+雨』『ウルトラミラクルラブストーリー』『俳優 亀岡拓次』『いとみち』に続く横浜監督の待望の新作。知る人ぞ知る孤高の漫画家・三好銀(1955−2016年)の最高傑作と名高い「海辺へ行く道」シリーズ(全3巻)の映画化に挑んだ。本編の撮影は23年の夏にオール小豆島(香川県)ロケで実施。小豆島特有の陽光や海と空に囲まれた絶好のロケーションが十二分に生かされている。
物語は、アーティスト移住支援をうたう、とある海辺の街が舞台。のんきに暮らす14歳の美術部員・奏介(原田)とその仲間たちは、夏休みにもかかわらず演劇部に依頼された絵を描いたり新聞部の取材を手伝ったりと毎日忙しい。街には何やらあやしげな“アーティスト”たちがウロウロ。そんな中、奏介たちにちょっと不思議な依頼が次々に飛び込んでくる。自由奔放な子どもたちと、秘密と嘘にまみれた大人たち。果てなき想像力と生命力が乱反射する海辺で、人生の素晴らしさを描く。
本作で長編映画初主演を飾った原田は、22年公開の映画『サバカン SABAKAN』で映画デビュー、本作には約800人のオーディションを経て選ばれた。ワールドプレミア時に原田は「今は15歳ですが、撮影は13歳の夏でした。(撮影を行った)小豆島は、とっても綺麗で、空気も新鮮で、空もすごく青くて、自然と(演じた)南奏介にどっぷり入り込めるような環境でした。撮影時は163センチくらいだった身長も今は173センチまで伸びました」と撮影時を振り返っていた。
日本での公開は今年の晩夏を予定している。