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「『御上先生』が他のドラマと明確に違うところが一つだけあるんです。それは、先生が“答えを教えない”のです」
と語るのは日曜劇場『御上先生』(TBS系)の教育監修を行っている現役東大生の西岡壱誠さん。
ドラマの教育監修という仕事
「金八先生や他の学園ドラマでは“こうしたほうがいい”と教師が生徒を諭しますが、御上先生は“君たちはどう考える?”と問いは投げかけ、“考えて”と言うのが不思議なところです。今は一緒に考えてくれる先生が求められているのかもしれませんね」(西岡壱誠さん、以下同)
ドラマの教育監修とは、どのような仕事なのか。
「週に1度くらいは撮影現場に行っています。御上孝先生役の松坂桃李さんや是枝文香先生役の吉岡里帆さんと関わることが多いですね。
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どういう言い回しがいいか、授業のシーンはどういうふうにすればいいか、といった相談を受けます」
第1話の冒頭で、御上が生徒の神崎拓斗(奥平大兼)に挑発され、多くの生徒が間違えた数学の問題を解説するシーンでは、
「松坂さん自身も何が間違っているのかはわからないので、まず松坂さんに問題を解説して“ここを強調してください”といった指示を出したり、数学の先生の線の書き方を指導したりしました」
現場から電話がかかってくることも多いという。
「『相加・相乗平均(そうか・そうじょうへいきん)』という高校数学で使う言葉の正しいイントネーションを伝えたりしています。ドラマの現場って思ったより大変なんです(笑)」
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ドラマは東大合格者も多い進学校という設定の『隣徳学院』が舞台。生徒役の俳優へのアドバイスでは、
「“この問題難しいなという表情か、目をキラキラさせて面白い問題だ! という表情、どっちのほうがいいですか?”と聞かれて、この生徒の偏差値を考えるとキラキラさせた表情のほうにしましょうかといった演技のアドバイスもしています」(西岡壱誠さん、以下同)
松坂桃李が聞いてきた質問
松坂桃李が現場で見せた素顔についても教えてくれた。
「松坂さんは僕のこともすごく頼ってくれており、“数学の先生ってどういう感じなんですか”など、質問をたくさんしてくれます。そういう俳優の方は少ないので、とてもプロ意識が高くて、すごいなと思います」
西岡さんは高校生のとき偏差値35で2浪の末、東大に合格した。御上も東大出身の官僚で「真のエリートが寄り添うべき他者とは、つまり弱者のことだ」という劇中のセリフがあるが、東大生は真のエリートといえるのだろうか。
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「人口300人の村から東大に入って“地元を守りたい”と総務省に行った友人がいます。そういった思いを持った真のエリートは少なからず東大にはいますが、そういう人ばかりではないのが難しいところです。
東大生はうつ病になる人もわりといて、何をしていても生の実感が湧かないと感じる人もいるんです。学歴があるから幸せというわけでもないんですよね」
当代随一の頭脳をもってしても、人生バラ色というわけではないようだ。