村上春樹が選ぶ“一生ものレコード”「僕がいつまでも聴いていたいと大事にしているレコードを紹介したいと思います」

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2025年02月23日 20:10  TOKYO FM +

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村上春樹が選ぶ“一生ものレコード”「僕がいつまでも聴いていたいと大事にしているレコードを紹介したいと思います」
作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00〜19:55)。2月23日(日)の放送は「村上RADIO〜村上の一生ものレコード〜」をオンエア。村上さんが大事にしている「いつまでも聴いていたい」 “一生もの”の貴重なレコードを紹介しました。この記事では前半1曲について語ったパートを紹介します。



こんばんは,村上春樹です。今夜は「村上の一生ものレコード」というタイトルで、僕がいつまでも聴いていたいと大事にしているレコードを紹介したいと思います。それも「これぞ名盤」みたいな鉄板ものはできるだけ外して、「世間的な評価はともかく、あくまで個人的に偏愛している」みたいなものを取り上げてみたいと思います。
さて、どんな音楽が出てくるでしょうね。お楽しみに。今日は全部そっくりうちのアナログ盤でお送りします。

<オープニング曲>
Donald Fagen「Madison Time」

考えてみれば、ずいぶん長い年月、音楽を熱心に聴き続けています。家でも毎日何かを聴いています。ところが、うちの奥さんは音楽にほとんど興味のない人で、自分から進んで何かを聴くということがまったくありません。どうやら「今、こういう音楽が聴きたい」というような欲求はないみたいです。僕とはずいぶん違います。

しかし、「これは聴きたくない」という音楽はしっかり一貫してあるみたいで、僕がそういうものをかけると、ぶつぶつ文句を言います。不思議な性格ですね。いや、不思議じゃないのかなあ? 長い間結婚生活を送っていると、何が不思議で何が不思議じゃないか、だんだんわからなくなってきます。みなさんのお宅はいかがでしょう?

◆Nat 'King' Cole And His Trio『After Midnight』より「When I Grow Too Old To Dream」
ナット・キング・コールはもともとジャズ・ピアニストとして評価の高い人でしたが、途中で歌手に転向しました。本人はもっとジャズをやりたかったみたいだけど、ポピュラー・ソングを歌う歌手として人気が高くなりすぎて、ジャズ演奏のお声がかからなくなってしまったんです。ピリッと渋い、優れたジャズ・ピアニストだったんですがね。でもこのレコード『アフター・ミッドナイト』では、歌手としてのコールと、ジャズ・ピアニストとしてのコールがうまくかみ合って、聴きごたえのあるパフォーマンスになっています。
ピアノはもちろんコール、そこにゲスト・ミュージシャンとしてファン・ティゾールやスタッフ・スミス、ハリー・エディソン、ウィリー・スミスといった練れた実力派ミュージシャンが加わり、1曲ごとに1人が見事なソロを聴かせてくれます。クラブでバンド演奏を終えたあと、友だちのミュージシャンが遊びに来て、軽くお酒でも飲みながら、自分たちだけの親密な音楽を演奏するという設定でレコードが作られています。洒落てますね。いつまでも永く聴いていたいレコードです。
スタッフ・スミスの艶やかなヴァイオリン・ソロがフィーチャーされた「夢見るころを過ぎても」を聴いてください。

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2月23日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 3月3日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:村上RADIO〜村上の一生ものレコード〜
放送日時:2月23日(日)19:00〜19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/
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