『フェイクニュース時代の科学リテラシー超入門(ディスカヴァー携書)』竹内 薫 ディスカヴァー・トゥエンティワン いまや1億総ネット社会。SNSを開けば今日もさまざまな情報が洪水のように流れてくる中で、皆さんはどのように「正しい・正しくない」を判断していますか? その基準として最近よく使われるのが「エビデンス」という言葉。「主張の理由となる根拠や客観的な裏付け」のことで、「科学的根拠」を指すこともあります。では、科学的に正しいというお墨付きがあれば、その情報は100%信じられると言えるのでしょうか?
「『科学的に正しい』はすべてを一気に解決する必殺技にはなり得ない」と言うのは、『フェイクニュース時代の科学リテラシー超入門』の著者でサイエンス作家の竹内 薫さん。なぜなら、科学はつねに反証可能であるという「反証可能性」なる概念があり、「ある主張について科学的に検証すると、くつがえる可能性がつねにある」(同書より)からだそうです。
また、現代の科学でもわかっていないことは非常に多くあります。生命の起源や意識の正体、宇宙について、「なぜ全身麻酔をかけると意識がなくなるのか」についても、長らくそのしくみはわかっていなかったといいます。さらに世界には100年近く続けて解明された実験もあるというから驚きです。
こうしたことからも、「科学的に正しい」と言われると鵜呑みにして安心したり、間違いだと証明する理論が出てきてもつっぱねてしまったりするのは、危うい姿勢であることがわかるのではないでしょうか。
そこで私たちにとって大切になるのが「科学リテラシー」を身につけることです。竹内さんは「この社会がどんなふうに動いていて、これからどうなっていくのかを知るためには、科学リテラシーが必須のスキルになります。科学リテラシーがないと、ともすればフェイクニュースや陰謀論、ニセ専門家が流す間違った情報に惑わされてしまうんです」(同書より)と記します。
また、「リスクを考える時にはひとつの面だけを見てすぐに判断せずに、いろいろな面から見て、深く背景を知ろう」(同書より)と竹内さん。同書では、ワクチンや民間療法、健康食品、原子力発電などさまざまな実例を挙げながら、科学リテラシーを鍛えるコツについて紹介しています。
「科学」と聞くと、理系の分野として身構えてしまう人もいるかもしれません。しかし、たとえば目的地までの道順や電車の乗り換えパターンを組み立てたり、朝に目が覚めたあと「次に何をしよう」と複数の仮説を立てたりと、実は日常の中でも私たちはたくさんの仮説検証をおこなっているのです。こうした積み重ねで考える力が育まれ、「水素水の話やワクチンの話が出てきても科学的に判断する力が発揮される」(同書より)と竹内さんは記します。これからの時代を生き抜くために必須となる「科学的なものの見方」を、皆さんも同書から学んでみてはいかがでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]
『フェイクニュース時代の科学リテラシー超入門(ディスカヴァー携書)』
著者:竹内 薫
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
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