気仙沼湾を背にポーズを決める、産地直送気仙沼少女隊「SCK GIRLS」のメンバー。左から4人目は鈴木麻莉夏さん=2月2日、宮城県気仙沼市 宮城県気仙沼市を拠点に活動するアイドルグループ「SCK GIRLS」。東日本大震災後、気仙沼の子供たちの笑顔を取り戻すために地元のボランティアグループなどが結成し、2011年11月にデビューした。メンバーの一人、鈴木麻莉夏さん(27)は市職員として観光PR事業に携わる傍ら、休日はアイドルとして気仙沼の魅力を笑顔で届ける。
中学1年のとき、翌日に控えた卒業式の準備を終え、教室で帰り支度をしていたところ被災した。机の足につかまり激しい揺れに必死に耐えた。津波にのみ込まれた街は気仙沼湾で発生した火災で夜でも明るく照らされていた。言葉にならない光景が今も目に焼き付いている。
「ボランティアやらない?」。震災後しばらくたったころ、学校の先輩に誘われた。「まちのためにできることがあるなら」と、ジャージーに軍手、ゴミ袋を携えて、集合場所へ向かった。到着した公民館の扉を開けると同年代の子たちが踊っていた。がれき処理の手伝いか何かだと思っていた鈴木さんは戸惑いつつも、その場でAKB48の「ヘビーローテーション」を披露することになった。震災後で友達と遊ぶ場所も少なかった分、歌ったり踊ったり体を動かすのは楽しかった。想像していたボランティアとは違い驚きはあったが、活動への参加を決めた。
「私でいいのだろうか」。参加後、しばらくは迷いや葛藤があった。震災で家族も家も無事だった鈴木さんは、「自分よりつらい体験をした人たちを元気づけられるのか」と後ろめたさを感じていたという。
ただ、アイドル活動を通して地元の人と交流するうちに、あの日、この町で起きたことや人々の思いを知ることができた。「(つらい)経験をしていなくても、事実は伝えることができる」。そう気付くと、心の迷いはなくなった。
今では休日に年間約50本ものステージに立つ。活動を通して「気仙沼が好き」と言ってもらえるきっかけになれたらと力を込める。歌とダンス、そしてとびきりの笑顔が、気仙沼を鮮やかに彩っていく。
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「SCK GIRLSのプリンセス破天荒、まりかです!」。10年以上使っている自己紹介とともに、笑顔いっぱいでパフォーマンスする鈴木麻莉夏さん=2024年12月28日、仙台市青葉区
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宮城県気仙沼市の観光課で働く鈴木麻莉夏さん。イベントでは「おいしいところないの?」とよく聞かれるという。「歩く観光案内窓口です」と笑う=1月20日、同市
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ライブ前に円陣を組む鈴木麻莉夏さん(中央)ら「SCK GIRLS」のメンバー=2月2日、宮城県気仙沼市
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レッスン中に笑顔を見せる鈴木麻莉夏さん(左から2人目)。鈴木さんにとって家族のような安心できる居場所だという=2月3日、宮城県気仙沼市