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TBS系で好評放送中の日曜劇場「御上先生」。第7話の放送を前に是枝文香を演じている吉岡里帆の取材会が行われた。
−本作に出ることなった時の思いと、撮影現場の雰囲気をお聞きしたいのですが。
映画『新聞記者』(19)には映画館に2回見に行ったほど心を動かされました。その時にどんな脚本家さんなんだろうと思って調べたことが、このドラマの脚本を書いた詩森ろばさんを知ったきっかけです。かなり早いタイミングで1話から最終話までの台本が全てそろっていて、読んでみると、ろばさんのやりたいことが明確で、その完成度の高さにとても感動しました。撮影現場では、飯田和孝プロデューサーが現場をよく見てくださっていて、対話の多い現場です。みんながこの脚本に共感して、これを届けなければ、届けたいという強い思いを持って参加している空気感があって、意見交換もしますし、自分の役柄を通して、どうしたらこの脚本の良さを伝えることができるのかを考えながら、緊張感と工夫を持って撮影に挑んでいます。
−是枝は、聞き役であると同時に前に出ていくタイプではない役ですが、演じていてどう感じていますか。
是枝は、自分の気持ちをさらけ出したり、自分の内側を見せるようなことがほとんどないので、いろんなことを抱え込んでいきます。でも、それを卑下したり悲しんだりするのではなく、それすらも抑え込んで、前向きな姿勢で生徒たちと向き合って、自分にできることを考えながら行動します。また、御上先生の話を聞くたびに、反省しながら少しずつ成長していくキャラクターなので、役割としては、皆さんのお芝居をしっかりと受けとめて、自分を出し過ぎないということを心掛けています。その回のメインの子たちが引き立つように、御上先生が素晴らしい先生であることが際立つように見せることを意識しています。あとは、成長していく生徒たちを見ている側なので、生徒たちの本質的なところを見ることに気を付けています。
−松坂桃李さんと岡田将生さんとは「ゆとりですがなにか」(16)以来の共演ですが、お二人の印象はいかがですか。
松坂さんは、改めて心から尊敬できる先輩だなと感じました。「ゆとりですがなにか」の時も松坂さんが担任で、私は教育実習生の役でしたが、今回も横を並走していくようなキャラクターを演じてるので、間近で学ぶことが多いです。松坂さんは懐が深いと言いますか、人の話をちゃんと聞いてくださる方なので、お芝居のことで悩んだり、そのシーンのことをどう考えるかみたいなことも相談しやすいです。「ゆとりですがなにか」で一緒に過ごした時間があるからこそ、今の関係性も築けていると思いました。岡田さんは、今回はあまり一緒のシーンがないのですが、久しぶりにお会いしたら相変わらず若々しくてびっくりしました。あとは、今回は官僚でキリッとした役ですけど、ご本人は少しだけ抜け感もある方だと思っていて。現場でも面白い一面を見せてくださるので、みんなで話しているとすごく楽しい雰囲気になります。
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−ここまで演じてきた中での印象を。
日本の教育界に切り込みを入れていくという本当に難しい題材で、演じていても毎回毎回考えさせられています。毎シーン練りに練ったお芝居でみんなで挑んでいるので、チームとしての結束力が生まれています。是枝は、御上先生が、生徒を成長させていく様子をそばで見つめている役なので、1話の初めての教室のシーンから、最終話の最後の教室のシーンまでの変化の大きさと言いますか、撮影しているこの4カ月の間で、みんながすごく主体性を持って仕事に挑んでいる姿と、作品の中の生徒たちの成長がリンクしていると思いました。作り物ではない生の感覚や、自分のこととして社会の問題に取り組んでいく姿勢が、撮影中に育まれていったことを感じます。
−生徒役の人たちから刺激を受けることもありますか。
たくさんあります。生徒たちのお芝居を間近で見ていて、何てみずみずしいんだろうと思いますし、皆さんが今の年齢にしかできないお芝居を日々されているので、そういう特別な瞬間に立ち会っているという気持ちになります。皆さんがこれから大人になっていった時に、あの時間がすごく貴重だったと感じるのだろうなと思います。ただ時々、悩みごとの相談をしてくれたり、こういう時はどうしたらいいと思いますかと聞いてくれるので、役の上での生徒と先生とはいえうれしいですし、かわいいなって思います。
−教師役として心掛けていることはありますか。
御上先生の横にいる副担任としての是枝を演じているので、ただ後ろに付いているのではなく、ちゃんとアシストできる関係性になること。小さなことからサポートしたり、寄り添っていることがとても重要だと思っているので、御上先生とは違う側面から生徒を思いやることに気を付けてます。
−第7話の台本を読んだ感想を。
このドラマは、全話を通して、生徒たちが抱える問題が社会的な問題と通じているという“パーソナル・イズ・ポリティカル”を、まさに生徒たちが体現していくんですけど、その中でも7話に出てくる椎葉さんは、社会問題を凝縮したようなキャラクターなんです。生理の話、格差の話、貧困の話など山積みで、それを小さな体で1人で抱えている。1人で背負うにはあまりにも大きな問題ですよね。彼女が1人ぼっちにならないような希望を見いだせるようになればいいなと。戦っている人もきっとこのドラマをたくさん見てくださっていると思うので、少しでも救いになるような回にしなければと思いました。
−第7話の放送を前に、視聴者の皆さんにメッセージを。
教室全体も1話の時からみるとみんながすごく成長していて、人の気持ちを考えたり、考えていることをみんなの前で発言する力や、主体性が育まれている様子を見ることができます。御上先生によって成長してきたみんなが、大きな社会問題が山積みになった椎葉さんが抱える問題とどう対峙(たいじ)していくのかという、そのさまが本当に素晴らしいです。椎葉さんを演じた吉柳咲良さんが、本当に心の奥に刺さるような素晴らしいお芝居をされてるので、注目していただきたいです。それで是枝はまたヘマをします。もう本当に成長が一番遅いんじゃないかと思っているんですけど、凝り固まった大人の役なので成長が遅いんです。是枝が椎葉さんのことを心配するあまり、考えさせられるシーンが出てくるので、皆さんも一緒に考えていただけたらうれしいです。
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(取材・文/田中雄二)
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