吉柳咲良、舞台『リンス・リピート』出演決定 『御上先生』『白雪姫』など話題作に出演の“輝く20歳”の今に迫る【ロングインタビュー】

0

2025年03月02日 18:00  ORICON NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ORICON NEWS

吉柳咲良 撮影:番正しおり
 TBS系日曜劇場『御上先生』(毎週日曜 後9:00)に出演中の俳優・吉柳咲良(20)。3月20日公開の映画『白雪姫』では主人公・白雪姫役の声優を務め、4・5月上演の舞台『リンス・リピート』にも出演が決定するなど、今まさに注目を集める俳優のひとりだ。そんな吉柳に、現在演じている役柄への想いや、これからの挑戦について話を聞いた。

【写真】舞台『リンス・リピート』に出演が決定した吉柳咲良

■演技への目覚めとデビューのきっかけ

――デビューのきっかけを教えてください。
幼い頃から目立ちたがり屋な性格で、人前に出ることには緊張するけど好きなタイプでもあって、そういうのをどんどんやりたいっていう欲が多分昔からあったんです。
もともとドラマなどをよく見る家庭で育ち、映像で石原さとみさんを見たのがきっかけで、こういう人になりたいって本気で思い始めました。当時12歳で、まだ子役のオーディションが多かったのですが、女優になりたいという夢を叶えてくれるオーディションを探してたら、たまたま石原さとみさんがポスターになってるオーディションを見つけて、それがホリプロタレントスカウトキャラバンとの出会いでした。そこでグランプリをいただいて、デビューにつながりました。

■『ピーター・パン』で得た経験と成長

――ミュージカル『ピーター・パン』のピーター・パン役を約6年間演じましたが、その時の経験で心に残っていることはありますか?
6年間、ピーター・パン役に向き合っていく中で、自分の中で意識がとても変わっていったと思います。ただただがむしゃらに言われたことをやるしかなかった1年目から、「こうしてみたい」とか「ここはこうだと思う」とか、だんだん自我が出てきました。自分なりのピーター・パン像みたいなものが少しずつ出来上がってきたんです。でも、ピーター・パンは子どもで、子どもの本能で動くようなキャラクター。だから、最初は直感で出来てたところが、逆に深めようと思って考えることで、分からなくなっちゃったこともたくさんありました。
ピーター・パンをやりながら別のお仕事をいただく機会が年々増えていくと、初心を忘れないために原点に帰るみたいな気持ちで、毎年ピーター・パンに戻っていましたね。
舞台がどういうものかを知ったのはピーター・パンでしたし、ピーター・パンのおかげでミュージカルに出会えたので、今の私があるのはピーター・パンがあったからかなって思います。

――ピーター・パンの経験がどういう風に活きていますか?
初めはただセリフを覚えるだけで精一杯だったけれど、なぜこのセリフを言うのか?なぜこのかけ合いになるのか?みたいな、台本に書かれているその作品の意図や心情、相手との関係性など細かい部分を読み解けるようになったのは、やっぱりピーター・パンでたくさん稽古していくなかで培ったものだと思います。

■『御上先生』出演で感じた重みと挑戦

――TBS系日曜劇場「御上先生」の出演が決まったときの気持ちは?
何を考えてたんだろうあの時……(笑) 
ちょうど舞台をやらせていただいていた時期にオーディションを受けていて、自分には日曜劇場という重たさみたいなものがのしかかっていく感覚だったのを覚えています。
自分が受けていた役とは違う役で話をいただいて、まず初めにこの子(椎葉春乃)はどんな子なんだろうということを思いました。役柄を聞いたところ、すごくいろいろ抱えている役で。ちょうどその時の自分にとって、あんまり触れてほしくなかったことに繋がるセリフが、台本にたくさんあったので驚きました。役を通して自分と向き合わなければいけないタイミングなんだなということを、役に教えてもらったみたいな感覚です。

――「御上先生」で演じる、椎葉春乃の役柄は?
椎葉は、自分にも他人にも厳しいタイプだと思います。自分なりの正義があって、信念もわりと強くて、真面目で、すごくしっかりしてるが故に、他人への頼り方が分からなかったり、ちょっと抱え込んでしまうタイプ。責任感がすごく強いタイプだと思いますね。そして、根はすごく優しくて、明るい活発なタイプの子だと思います。

――椎葉春乃に共感することは?
椎葉が抱えている”生理の貧困”や”家庭環境の格差”など様々な問題がのしかかってきました。でも、そういう社会的な問題になっている部分は、椎葉としてすごく大切なところでもあります。
それと、彼女が奥深くで抱えていることが発端となって、自分がやらなければいけない責任とは裏腹に、どこかで助けてほしいと思っているのにその声を上げることができないしんどさとか、気持ちが上手く制御しにくくなる状況が描かれていて。「あぁ分かるな」という共感が、台本には散りばめられていました。

――日曜劇場に出演して、刺激になった部分や驚いた部分はありますか?
日曜劇場自体はよく知っていたので、「これはきっとすごいことなんだろうな」っていう感覚がもちろんあったんですけど、だからといって他の現場と何か変わることもなくて。
今回は学園物で、同世代の役者がたくさんいる状況でお芝居ができるので、いろんな人からのいろんな刺激をいただきました。
みんながどういう風に役に向き合っていくか、現場での姿勢や居方など、学ぶことがすごく多かったです。他の生徒のセリフを読んで、自分がこの役をやるならどう演じるだろうかっていうことをなんとなく考えたりしたときに、一人一人の向き合い方やセリフの言い方などが、なんとなく分かる気がしたところも結構あって、全員に共感できたのはすごく面白かったです。

――「御上先生」は同世代の俳優がたくさんいると思うのですが、一緒に過ごしていて印象的なエピソードはありますか?
私の演じる役が全体的に重たかったので、現場ではなるべくそれに飲み込まれないようにと思い過ぎて、役と距離を取ろうとした時期があったんです。その時に影山優佳ちゃんが、自分の目線から見た私自身と椎葉という役について話してくれたり、私が悩んでることの話を聞いてくれたり、常に寄り添ってくださってとても助かりました。それと、親友役の高石あかりちゃんが、こちらの芝居を全部受け取ってくれる絶対的な安心と信頼があったので、あかりちゃんとの掛け合いを楽しみにできました。2人がいてくれたのはめちゃくちゃ大きかったなと思います。

――「御上先生」で共演した松坂桃李さんの印象やエピソードありますか?
松坂さんは、撮影中に誰がどんなミスをしても優しく、「大丈夫、大丈夫」って言ってくださいました。生徒が役としてその場にいやすい空気感を作ってくださる人で、現場がやりやすいようにスタッフさんとも色々話してくださったり、私たちを常に気にかけてくださって、本当に感謝しています。

――演じる椎葉春乃のメイン回(第7話 3月2日放送)の撮影はどうでしたか?どんなことに気を付けましたか?
教室に入ってくるシーンから、「小手先で芝居するのはやめよう」「ただ正直に演じよう」と思いました。
私が7話までずっと溜めてきた椎葉としての気持ちを、私はここで椎葉として、相手にちゃんと届けなければいけないという責任だけを感じていました。だから、細かい演技プランみたいなものがあったわけではなくて、単純にここにいる人たちが全員味方だから、みんなが言ってくれた言葉だけを信じて、ただもうやらなきゃという気持ちでした。
みんなの前に立って全員からの圧を感じながら喋るという緊張感よりも、それを話さなければいけない恐怖心と戦っていた気がします。私は、椎葉としてあそこに立っていたんだな、と後から痛感しました。

■実写映画『白雪姫』での初吹き替え挑戦

――そして、今春公開の実写映画「白雪姫」の吹替も決まりました。決まったときの気持ちは?
「よっしゃー!」と喜んだというよりは、「あ、やばい。なんの曲から覚えなきゃいけないんだ」と、すごく冷静に考えていた記憶がありますね。
本当にちゃんと「受かってよかったな」って思ったのは予告映像が出た後でした。声を録っていく中でももちろん実感していたんですけど、本予告が出たり、歌番組に出させていただいて、色々なところで歌を褒めていただけたり、おめでとうとたくさん言ってもらったときに、「私、本当にプリンセスを演じたんだな」というのを改めて実感して凄く嬉しかったです。

――「白雪姫」の役どころを教えてください。
本質は原作と変わっていないですね。原作の白雪姫がもつ人に対する優しさだったり、平等に接する気持ちだったり、思慮深さは全く変わっていなくて、誰かのために動ける人であって、常に他人を思いやる気持ちで溢れているプリンセスかなと。「夢に見る 〜Waiting On A Wish〜」の歌詞の通り、夢に見てる世界があるという、何かに夢を抱いている姿も変わっていないと思うんです。

――「白雪姫」を演じるにあたって、気をつけたことはありますか?

実写の吹替が初めての経験だったので、とても難しかったです。アニメに当てるよりも距離感が立体的でなければいけないうえに、自分が思うよりも声を出さなきゃいけない中で、絶妙なバランスを取らなければならない点が難しかったです。
私が普段から喋っているポジションで声を当てると、ババっと言葉が投げられるくらいの軽さになってしまうのですが、プリンセスは話す言葉の一音一音を大切にしながら話していると思いました。なので、優雅なプリンセスらしさや美しさを出すには、語尾の使い方とか言葉遣いだけじゃなくて、スピード感とかその言葉一つ一つを出すためにどれぐらい丁寧かみたいなニュアンスによって説得力が出ると思ったので、いつもの自分とはちょっと違う丁寧さを心がけました。

――俳優と声優での違いはありますか?
お手本があるかないかの違いですかね。
吹替はそもそも演じられている方がいらっしゃるので、そこに声を当てるとなると、その人のニュアンスを崩してはいけないと思います。自分が役と向き合うよりも、その役を通して演じた方と向き合っていくという作業になっていくので、その人が表現しているニュアンスを残せるかがすごく大事だと思っています。なので、なるべくちゃんと音を聞くようにして、どういうテンションでどういう風にセリフを言っているのかを聞きながら演じました。

■舞台『リンス・リピート』で挑む新たな表現

――そして満を持して、今年4月には「リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―」という舞台に出演されます。この舞台はどういう話ですか?
今の時代に観たい作品だと思いました。作品内で摂食障害が扱われている一方で、“家族”という、あまりにも距離が近いように感じる間柄だからこそ、見えなくなっていくものとか、向き合えなくなっていくことも描かれていて、家族が本当の意味で分かり合えることなんて、きっとないのかもしれないと感じました。でもそんな中で、家族というある種特別な関係値だからこそ生まれる、いざこざのようなぐちゃぐちゃな感情を、本人たちが分かり合えたり、気づいていくことができる舞台です。
シビアな問題を扱っているんですけど、この舞台をどう届けるべきか、最終的な着地はどうなっていくのか、どこに落とし込むのが良いのか、などを考えています。

――舞台「リンス・リピート」で演じるレイチェルは、どんな役ですか。
私はレイチェルにすごく共感できました。心の奥底で思っていることを必死にもう一人の自分が止めてるみたいな感覚が私にもあって、きっと他人を気にしてしまうからこそ、自分のことが正しいと思えないというか、自分の意思に自信を持っていないタイプだと思っています。レイチェルは、誰かを優先的に考えられる人なのかなと思うし、だからこそ責める対象が自分になっていくというか、そうすることが楽だった子だと思いますし、それ以上の答えが見当たらなかったというのも一つあると思います。
重圧と鎖に繋がれたような状態のレイチェルが、闇から抜け出すことができるようになるまでの話でもあります。なので彼女を表現することは難しいのですが、成長していく過程で最終的に彼女が何を思ったのかや、どこで大きな気づきがあったのかを重点的に考えていきたいなと思っています。

――舞台「リンス・リピート」では、どういう部分を大切に演じたいですか。
最終的に登場人物が立ち上がっていく物語って多いですが、私はどんな結果であれ自分を否定する必要はないと思っています。もちろんその状況から抜け出せた先は素晴らしいのかもしれないけど、その過程であった苦しみとか、一歩踏み出せなかった時の自分の中に溜まっていく自分に対しての黒い気持ちというのは大切に演じたいと思っています。
レイチェルの場合は、それがかなり赤裸々に台本に書かれているイメージがあって、立ち上がれなかった瞬間とか、でも別に立ち上がりたくないわけではなくてただその瞬間だけうまく立ち上がれなかったという葛藤は、絶対に一番届けなきゃいけないと思うんです。
一歩踏み出せた先に何があるかは、抜け出せた人間にしか分からないんです。でも、抜け出せなかった人たちだってきっといるし、抜け出せないから苦しむこともあって、その苦しみに私は共感できました。そういった悩みが、その先で1ステップ上がった時の自分を誇れる気がするので、レイチェルの苦しさほど慎重に表現したいです。

――舞台「リンス・リピート」では、寺島しのぶさんと共演されますが、どういう印象ですか?
稽古がこれから始まるのでまだ深くはお話しさせていただいていないのですが、やはり大先輩ということもあって緊張しています。
「リンス・リピート」では、家族なのに、母と娘の関係なのに、二人の間に謎の緊張感がずっとあるんですよね、特にレイチェルからはすごく感じるというか。でもそれは彼女が気遣いの人だからこそ感じる緊張感なのかなというのもあって。
私はとにかくお客様にレイチェルの細かな心情を、等身大で演じることでお伝えできればと思っています。

■俳優としての未来と大切にしていること

――いままで色々な役に挑戦していますが、自分はどういう性格の人だと思いますか?
影響を受けやすいタイプだなと思います。何にでも影響を受けやすくて、その全てが自覚なく糧になっていると思うし、私の人間性は世の中からの影響によって形成されてきた気がします。思想や価値観を広げていったり、どんなに考えても分からないことを考え続けることが好きだし、それが今の仕事を続けている理由でもあると思います。

――どういう風に自分の興味を広げていますか?
ただ一人の人がどう生きるかを考えた先の答えが好きだったりします。知人との会話でも、なんでそう思ってどういう行動をしてきたのか、その人がどういう過去を持って今こういう人間になったのかという話を聞くのがすごく好きです。行動の裏にある深層心理みたいなものを探ってみるのも好きだし、とにかく人間が大好きなんです。

――いま多忙を極めていると思いますが、普段の生活で大切にしていることはありますか?
仕事とプライベートの境目があまりないので、「この時間が絶対に必要」みたいなものがないですね。誰かと喋っていても、仕事していても、家に帰ってきても、基本的にずっと思考を止めない癖があります。
「こう思った」というその瞬間の思考を忘れたくないから、携帯に書いて残しておくようにしています。それがアーティスト業の歌詞に反映されてるところも結構多いです。

――これから俳優としてのキャリア、どういうことにチャレンジしていきたいですか?
俳優という職業をこなしていく中で、その先にある自分の生き様というか、歩んできた道を振り返ったときに、「私考え抜けるところまで考えたな」と思えればいいなと思います。
それと、「常にいただいたお仕事を責任を持ってやりきる」ということは意識し続けています。巡りあえたお仕事を考え抜いて、自分が「その時の100%を出し切れた」と思えるようにしていきたいです。
未来のためにまずは今を大事にしたいし、先のことばかり考えていたって仕方がないので、将来のことももちろん考えながら、その理想になるために今何をしなければいけないかを考えています。

――最後に応援してくださっている方々に向けてメッセージをお願いします。
私を知ってくださる方は、何をきっかけに知っていただいたかで、その人が持つ私のイメージがそれぞれ違うと思うんです。まだ知られていない部分もきっとたくさんあるので、私は飽きない人間でいれたらいいなと思っています。
それと、ファンの方々が仕事の悩みとか人間関係の悩みとかを私のSNSに吐き出してくれるのが、私はとても嬉しくて。私という存在がいることで少しでも吐き出せる場所があるなら、それはすごく素敵なことだと思っています。応援してくださる方々にとって身近で、味方になれる存在でいたいと思います。

【『リンス・リピート ―そして、再び繰り返すー』公演情報】

2019年に現代に潜む家族問題を扱ってオフ・ブロードウェイの話題をさらった、舞台『リンス・リピート』を2025年4・5月に日本初上演

演出は第30回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞した若手演出家・稲葉賀恵。キャストに寺島しのぶ、吉柳咲良、富本惣昭、名越志保、松尾貴史を迎え、繊細で濃密な家族の物語を創り上げる。

東京公演は2025年4月17日(木)〜5月6日(火・休)・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演、その後京都公演が5月10日(土)・11日(日)・京都劇場にて上演。

    ニュース設定