
これから子どもを保育園に預けるとなると保育料もかかってきます
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、総額6500万円の住宅を購入し子どもも生まれ、支出が増えることから返済ができるか不安になってきたという31歳の会社員女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
アップルパイさん(仮名)女性/会社員/31歳
関東/借家
家族構成
夫(33歳・会社員)、子ども(0歳)相談内容
身の丈に合わない物件を購入してしまったのではないかと不安で仕方ありません……。妊娠がわかる前から住宅を探しており、注文住宅を建てました。住宅にかかる総額は6500万円ほど。そのうち諸経費などで約400万円を自己資金、残り6100万円をローン(35年・変動金利当初0.47%)で組みました。現在の貯蓄は、諸経費400万円+手付金100万円を支払った後の残額です。
ローンの支払いは2カ月前から開始。月々12万〜13万円、ボーナス月はプラス30万円となる見込みです。これから子どもを保育園に預けるとなると保育料もかかってきますし、時短勤務となるため、収入も減ります。
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ただ、もう後戻りできないので、生活していくためにどうやりくりしていけばいいのかご教示いただけると幸いです。
家計収支データ
アップルパイさんの家計収支データは図表のとおりです。
家計収支データ補足
(1)収支について(相談者コメント)記載していない支出に、2カ月に1回、1万円ほどの美容院代があります。貯蓄額に夫の財形貯蓄、確定拠出年金は含めていません。記載している手取り月収は産休前のものです。復帰後は時短勤務となり、手取りは14万〜15万円ほどだと思います。ボーナスも減額予定。
(2)住居費について
・購入時の物件の状況:新築
・物件価格:6500万円
・ローン残高:6100万円
・金利のタイプ:変動金利0.47%
・毎月の返済額:約12万円
・ボーナスの返済額:30万円
・固定資産税:大体10万〜12万円ぐらいと聞いています。
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【夫】
・収入保障保険(60歳まで、万が一の際10万円/月)=毎月の保険料2340円
・生命保険(終身タイプ、死亡保障200万円)=毎月の保険料3736円
・生命保険(終身タイプ、450万円、払込期間15年)=毎月の保険料1万6875円※教育資金
・医療保険(終身タイプ、5000円/120日、3大疾病30万)=毎月の保険料3610円
【本人】
・生命保険(終身タイプ、死亡保障200万円)=毎月の保険料3176円
・医療保険(終身タイプ)=毎月の保険料2801円
・生活習慣病保険(保険期間3年間、がん・3大疾病)=毎月の保険料784円
※相談者コメント「入院、手術をしたため、特約が付いた保険内容になっています」
(4)教育費について(相談者コメント)
子どもは、0歳4月入園で希望を出しています。また、子どもはできれば、もう1人欲しいと思っています。
進路については、中学から塾通い、高校までは公立(公立が受からなかった時は高校から私学)。その後、大学進学を予定。実家から通う想定です。
私の両親は近くに住んでおり、多少のサポートは得られますが、2人ともフルタイムで働いています。義両親は遠方のため、日常的なサポートは得られません。
(5)ボーナスの主な使い道について
・夫の奨学金返済(年間18万円、39歳までとのこと)
・帰省費用(飛行機代20万円/大人2人分)
・旅行(20万円)
・衣服代(夫:スーツ、妻:洋服/約30万円)
・冠婚葬祭(約10万円)
・家具(120万円)※前回の場合
・家電(40万円)※前回の場合
・貯金
(6)お勤め先について(相談者コメント)
退職金は1500万〜2000万円程度と聞いています。また、60歳以降も働く予定でいます。正社員になれる制度は今のところ、ありません。生活のため、社員として働かざるを得ないと思っていますが、本音はフルタイムではなく、パートなど短時間の仕事で働きたいと思っています。
FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:現状の貯蓄ペースから少しダウンするが、問題なしアドバイス2:子ども2人の教育費も大丈夫。老後資金は5000万円程度
アドバイス3:ただし、油断禁物。できればフルタイム勤務で復帰を
アドバイス1:現状の貯蓄ペースから少しダウンするが、問題なし
これから出産、子育てが始まり、アップルパイさんの勤務形態次第では、確かに6100万円の住宅ローンは気がかりですが、後戻りできない、と覚悟を決められたようですし、現状の家計を維持していくように頑張れば、大丈夫です。
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現在、毎月18万〜20万円の貯蓄ができているのは立派です。ただ、住宅ローンの返済、今後は保育園代がかかり、アップルパイさんの収入も時短勤務で減ることを考慮すると、毎月10万円の貯蓄が上限になりそうです。
また、ボーナスからの貯蓄は例年170万円程度できているようですが、今後は住宅ローンの返済が年間60万円ということですから、ボーナスからの貯蓄は110万円が限界かもしれませんね。
そうなると、毎月10万円で年間120万円。これにボーナスから110万円で、合計230万円。第1子が小学校に上がるまでの6年間で1380万円貯蓄できることになります。
また、仮に3年後に第2子出産とすると、都合10年ぐらいはこのペースでの貯蓄となりますが、第2子は幼稚園とすれば、第1子が小学校に上がってからの3年間は、毎月3万〜4万円、年間60万円程度は貯蓄を増やせるかもしれません。
これから6年間で1380万円。その後の3年間は290万円×3年で870万円。10年後には2250万円の貯蓄ができています。
その後も、年間290万円のペースを継続できれば、ご主人が定年退職する60歳までの18年間で、5220万円。合計7470万円が今後貯蓄できる金額ということです。
固定資産税が毎年かかるようになったり、子どもの成長とともに家計支出は増えたりしますので、計算どおりにはいきませんが、そうしたことを考慮しても、約7000万円は貯蓄できる力があるということです。
アドバイス2:子ども2人の教育費も大丈夫。老後資金は5000万円程度
子どもの教育費については、仮に高校から私立となった場合、大学卒業(大学の進路にもよりますが)までにかかる費用は、1人あたり、約1000万円です。2人で2000万円が必要となります。塾通いなど、お金をかけようと思えばキリがありませんが、アップルパイさんの場合は、7000万円の貯蓄ができるわけですから、教育費に2000万円使っても、5000万円は60歳時点で残ることになります。
加えて、ご主人の退職金が1500万円から2000万円。老後資金としては、十分ではないでしょうか。
住宅ローンの完済は68歳時ですが、それまでの貯蓄のペース、教育費に問題なければ、繰り上げ返済をして、返済期間を短縮していくことも可能でしょう。
また、住宅に関しては、外壁塗装、設備の交換など定期的に修繕費がかかりますが、これも問題なく対応していけるでしょう。
アドバイス3:ただし、油断禁物。できればフルタイム勤務で復帰を
ここまで、現在の情報で試算していきましたが、冒頭で説明したように、出産、子育て、勤務形態など、流動的な要素もあります。アップルパイさんはパート勤務を希望されていますが、できれば、子どもが小学校に上がるタイミングに、フルタイム勤務で復職されるのが望ましいでしょう。
今のところ、家計で大きな無駄遣いは見当たりませんが、ボーナスで衣服代30万円など、大きなお金の使い方をする傾向も見受けられます。
また、家を新築すると、一般的に賃貸住宅よりも、水道光熱費が増える傾向にあります。これからの生活で支出がこれから増えることはあっても、減ることはないと思ってください。
家計の安定ということ、社会保険加入で年金額を増やすためにも、可能であれば、フルタイム勤務を検討してくださいね。
最後に、お子さんが生まれたので、保険の見直しをしてください。ご主人の保険のうち、終身保険は払い済みにして、以降の保険料はなしとします。
2人目のお子さんが生まれたら、定期保険で1000万円、保険期間10年で加入してください。ご主人の保険は、これで当面は大丈夫です。
アップルパイさんの保険は、医療系の保険だけで大丈夫です。貯蓄のつもりだと思いますが、終身保険は払い済みにして、新たな死亡保障は現状では不要です。もしも心配であれば、総合保障タイプの共済がいいでしょう。
保険の見直しで浮いた分などは、ご主人の確定拠出年金の上乗せ、場合によっては、アップルパイさんがiDeCoに加入するなどして、資産形成に有効に使ってください。これは、生活が落ち着かれてからでいいでしょう。
ボーナスの使い方に注意し、家計管理は現状のまま、しっかりとなさっていけば、大丈夫です。頑張ってください。
相談者「アップルパイ」さんから寄せられた感想
この額のローンを組んだ時点で子ども2人は厳しいかなと思っていましたが、叶いそうで少し安心しました。仰る通り、普段できるだけ支出をおさえようとする反動でボーナス時に大きな出費をしがちです。まとまったお金が入るため衝動買いしてしまいがちですが、これからは本当に必要なものなのかを見極めて購入するようにしていきます。
また私の仕事について、子どもが生まれたことで一緒に過ごしたい気持ちが大きかったのですが、やはり将来のことを考えてフルタイムでの勤務を前向きに検討したいと思います。ローンの返済も始まりましたので、今後はより一層気を引き締めて家計を管理していきます。ありがとうございました。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文:伊藤加奈子
(文:あるじゃん 編集部)