2010年半ばのメンズノンノを牽引→俳優業でさらに色気を増した31歳俳優「モデル時代はアンニュイと形容されたが…」

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2025年03月10日 16:20  女子SPA!

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成田凌instagramより
 映画、ドラマ問わず出演作が多い成田凌の魅力とは実際のところ、どこにあるのだろうか?

 もともとはモデル出身。アンニュイという形容でその魅力が説明されていた時期もあった。俳優デビューしてからはどうなのか。それを今一度考えてみる必要がある。

 男性俳優の演技を独自視点で分析するコラムニスト・加賀谷健が、初主演映画などの過去作を振り返りながら、方向性を見定めるアンテナを持つ成田凌を解説する。

◆存在の色気が求めていた世界

 坂口健太郎とともに専属モデルとして、2010年代半ば頃の『MEN’S NON-NO』を牽引した成田凌は、「イケメン」を象徴する存在だった。ただしそれは、単なる時勢の言葉としてのイケメンではなく、現象としてのイケメンを定義してしまうくらい象徴的な存在感である。

 2013年から同誌専属になった成田のモデル時代には、よくアンニュイという形容詞が使われていた。フレキシブルなイケメンの表層的魅力を備えていながら、アンニュイが意味する気だるい雰囲気からズシンとくるものを感じさせる。

 そのため、彼が醸すアンニュイは、モデルが写るスチールやスナップの静止画にはおさまりきらないものだった。実際、成田はもともと俳優志望である。彼のアンニュイがおそらく意味している存在の色気みたいなものが、本能的に求めていた世界は、映画やドラマなどの動く画だったのだと思う。

◆映画に身を捧げる俳優

 専属モデルを卒業した2021年までの出演作の多さを確認してみただけでも、成田がいかに動く画の世界から必要とされる人材であり、なおかつ愛される存在であるかがわかる。

 もちろんアンニュイな静止画の中の成田も飛びきり魅力的だった。でも動画の中の成田はもっと魅力的である。どの作品でも水を得た魚のように、画面上を自由に楽しげに走り回っている。

 井浦新と共演した映画『ニワトリ★スター』(2018年)では、冒頭からあられもない肉体をさらけ出している。セクシャルな場面以外でも、ほとんど裸同然の格好でソファに寝そべり、足をバタバタさせる成田の奔放さが躍動した。同作の成田から感じたのは、自分は映画に身を捧げる俳優になるという覚悟と気概である。

◆ベストポジションのカメラが成田凌を捉えた瞬間

『窮鼠はチーズの夢を見る』(2020年)や『雨の中の慾情』(2024年)など、最近の作品でも成田は、露骨な肉体を画面上に提示する。セクシャルな場面が脚本に書かれているいないに関係なく、とにかく丸裸になることを自分にかせているかのようにさえ思える。

 必要だから裸になるのではなく、脱ぎたいから裸になる。そうしたある種、本能的な欲望を封じ込めることで、逆に彼の最大の魅力が引き出された作品がある。初主演映画『カツベン!』(2019年)だ。

 古典的映画の作法を心得た数少ない演出家である巨匠・周防正行監督が見つめ、引き出す成田凌の魅力とは。活動弁士を演じる成田が、ユニークな仕掛け箪笥の前で、周防作品の常連俳優・竹中直人と向き合う場面がある。

 座っているふたりを最初カメラは、引きの位置から捉える。次のカットでカメラが寄る。竹中が成田の両手を握ったあと、今度は両頬に両手をあて、さらに両肩をパチン。成田の魅力がぎゅぎゅっと顔の中央から肩にかけて凝縮されるような色気が感じられた。たったの2カット。周防監督がベストポジションを定めたカメラが成田凌を捉えた瞬間である。

◆方向性を見定めるアンテナ

 成田が同作のオーディションで選ばれた時点から、彼がもっとも魅力的におさまるポジションが、周防監督の中で想定されていたのかもしれない。成田本人も感慨深く公言するように、この初主演映画がターニングポイントになった。

 このターニングポイントに前後して演じる役柄にも変化がある。田中圭演じる会社員がタクシーにスマートフォンを忘れたことから起きる恐怖が描かれる『スマホを落としただけなのに』(2018年)で、成田は狂乱の殺人犯を怪演した。ビニールカーテンをがばっと開け、長髪の成田が狂気の表情で登場する様子は、『サイコ』(1960年)でアンソニー・パーキンスが演じた犯人が重なるようでゾッとする。

 パーキンスはキャリア全体のイメージが固定化された同作によって悩まされることになるが、『スマホを落としただけなのに』の成田は、むしろ狂気のイメージに新たな活路を見出だしている感じがある。

 広瀬すず主演ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS、毎週金曜日よる10時放送)でもゾクッとする雰囲気の容疑者役を静かな狂気を秘めて演じている。成田凌は、映画、ドラマ問わず、毎年何作も出演作を重ねる中で、常に自分の方向性を見定めるアンテナを持つ俳優だ。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu

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