東日本大震災から14年となり、追悼のハト形の風船を飛ばす人たち=11日午後、宮城県名取市閖上 東日本大震災の発生から14年となった11日、各地の被災地では犠牲者への追悼の祈りがささげられた。多くの人の生活が一変した「あの日」。遺族らは発生時刻の午後2時46分に合わせ、家族や友人をしのぶとともに、震災の教訓を次代に伝える思いを新たにした。
岩手県大船渡市の伝承施設「大船渡市防災学習館」では、慰霊碑の前で住民らが犠牲者に祈りをささげた。施設を管理する三浦求さん(74)は津波で親戚を亡くし、自身も辛うじて津波にのまれずに済んだ経験をした。「あの黒い波は今も忘れられない」と振り返り、「山林火災もあったが、活気ある街に戻ってほしい」と願った。
700人以上の住民が犠牲となった宮城県名取市の閖上地区では、地元住民ら約350人が集まり、「忘れない」「ずっと見守っていてね」といった文言が書かれたハト型の風船約460個を空へ放った。北海道恵庭市から訪れた女性(74)は「震災のことをこれからも伝えていかないと」と力を込めた。
津波で町職員ら43人が犠牲となった宮城県南三陸町の旧防災対策庁舎前では、地震発生時刻を知らせるサイレンが鳴り響く中、遺族らが犠牲者の冥福を祈った。同県気仙沼市の村上勝正さん(75)は、今も行方が分からない長男の宏規さんを思い浮かべ、「14年もたった。いつになれば帰って来るんだ」と語った。
今も31人が行方不明の福島県浪江町では、集まった県警双葉署の警察官ら約70人が海岸を捜索。署員らは活動を終えると海に向かって整列し、地震発生時刻に合わせて黙とうした。自身も同県いわき市で被災したという同署復興支援課の賀沢夢海巡査(22)は「一つでも手掛かりを見つけ、家族だった証しを(親族の元に)返したい」と誓った。
同県相馬市の海岸では、集まった住民らが海に向かって黙とうした後、思い思いのメッセージを書いた木の葉の舟を海面に浮かべた。津波で祖母を亡くした同県南相馬市の会社員田中春菜さん(23)は「『結婚したよ』と報告した。空から見守ってほしい」と笑顔を見せた。

東日本大震災の発生時刻に合わせ、旧防災対策庁舎前で黙とうする人たち=11日午後2時46分、宮城県南三陸町

メッセージを記した木の葉の舟を海に流す参加者ら=11日午後、福島県相馬市