東京高裁=東京都千代田区(AFP時事) 東京都足立区の病院で2016年、手術直後の女性患者の胸をなめたとして準強制わいせつ罪に問われた医師関根進さん(49)の差し戻し控訴審判決が12日、東京高裁であった。斉藤啓昭裁判長は「女性が幻覚を見た可能性が否定できない」と述べ、無罪とした一審東京地裁判決を支持し、検察側控訴を棄却した。
一審は、全身麻酔での手術後に陥ることがある意識障害「せん妄」の影響で女性が幻覚を見ていた可能性があるなどとして無罪(求刑懲役3年)を言い渡したが、二審は被害証言の信用性を認めて懲役2年とした。最高裁は、証言を裏付ける関根さんのDNA量の検査について「信頼性を解明すべきだ」として審理のやり直しを命じた。
斉藤裁判長は、検査が行われたのは1回のみで、「相当程度の誤差があり得る」と指摘。女性の胸に付いた多量のDNAは、なめたことに由来するとの検察側主張について、「唾液の飛沫(ひまつ)が影響した可能性が排斥できず、なめたことで唾液が付着したとは断定できない」と退けた。
その上で、せん妄により幻覚が起きる頻度はまれではないとする研究報告などを基に、一審の判断を是認した。
関根さんは16年5月10日、女性の右乳腺腫瘍摘出手術を行った直後に病室で左胸をなめたなどとして起訴された。
判決後に記者会見した関根さんは、「結果は当然だ。生活や仕事を奪われ、警察や検察に強く憤りを感じている」と話した。
伊藤栄二・東京高検次席検事の話 判決内容を十分に精査し、適切に対処したい。