大阪・豊中市のマクドナルド庄内店が「他店よりもおいしい」とネットで大バズリ 食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、食トレンド、スーパーマーケットやスタバ、ダイエットフード、食育などの情報を“食の専門家”として日々発信しています。
大阪の“ある店舗のマクド”が話題になっています。それは、大阪・豊中市にあるマクドナルド庄内店。きっかけは2022年7月にラジオパーソナリティー・コラムニストのジェーン・スー氏がX(当時はTwitter)上で、その店舗が過去で一番美味しかった旨を投稿した内容でした。
その投稿が今年になりSNS上やネットメディアなどでも広く話題になり、庄内店は大注目されることに。
その違いを確かめるため? 味わうため? に、最近は大行列になることもあるそうで、ついにはその真相を確かめるようなテレビ番組まで……。いやー、楽しい!
実際にどれほどの違いを感じたかは、食べた人によって違うようですが、X上では、「明らかに他と違う」、「パンがふわふわ」、「ポテトの味が濃い」という称賛コメントがずらりと並ぶ状況に。
これは、私たちの多くがイメージとして持っているかもしれない、“チェーン店はみな同じ”という常識を楽しく覆えしてくれるような話題とも言えそうです。
そこで今回は、「飲食チェーン店に違いはあるのか?」をテーマに、他にもあった! 有名チェーンの知られざる違いをご紹介しながら、チェーン店の楽しみ方についてご案内していきたいと思います。
◆店舗によっておいしさの違いが出るのは自然なこと?
そもそもマクドナルドには、“おいしさのゴールデンルール”という独自のこだわりがあります。
その内容は、新鮮な国産卵をお店でひとつひとつ手割りをして丁寧に調理をする、外はカリッと中はホクッとした食感を出すため高温で二度揚げするといったもの。
料理を少しでもやったことがあればイメージしやすいかもしれませんが、これらの調理工程は工場でロボットが作るようなケースとは違い、担当する人によって差が出てきて当然ですよね。
この視点で考えれば、話題になっている庄内店では、店内オペレーションや調理指導に細やかな実効性があり、それが仕上がりの違いにつながっているのではないかと想像できるのです。
もちろん本部としては、チェーン店は同質(いつでもどこでも同じおいしさを提供する)であって欲しいので、違いを認めたくないはず。
しかしこれは“うれしい否認”かもしれず、全店のさらなる質向上を目指せるチャンスとして生かすこともできそうです。
さて、話を変えましょう。マクドナルドの他にも飲食チェーンはたくさんあります。
今回のマクドナルドのように微妙な違いを発見することは、お客の立場からすればチェーン店を楽しむ秘訣になること間違いありません。
そして実は他チェーンでもうれしい違いがあるケースをご存じでしょうか? ここからはその事例をご紹介していきたいと思います。
◆ドトールのミルクレープに、極上品あり
はじめは、ドトール。全国に1074店(2025年1月時点)を展開するコーヒーチェーンであり、その看板ケーキとして長く愛されているのが、「ミルクレープ」です。
実はこのミルクレープにさらなる極上品があるのをご存じでしょうか?
それは、「ドトール珈琲店」、「ドトール珈琲農園」という看板を持つドトールの特別店。
ここで提供されるミルクレープはスタンダード店と比較すると110円の違いがありますが、食べてみると別次元のおいしさに驚きます。重量や大きさ、1層多いという優位性がありながらも、食べてみるとクリームのなめらかさ、風味、くちどけ感がまったく異なるのです。
◆丸亀製麺には、おいしいうどんが打てる「麺職人」がいる
続いては、丸亀製麺。丸亀のうどんは、毎日店舗で粉から打ち、できたてのおいしさを提供するのが強みの一つになっていますが、実はそのうどんを打つ技術に差があるのをご存じでしょうか?
丸亀では製麺技術に画一的なマニュアルを導入せず、「麺職人」という丸亀独自の制度を設置。
その日の気温や気候などに合わせておいしいうどんが打てるノウハウ・職人技を持つ店員に対して、レベルによって一つ星〜四つ星が与えられ、最高位は「麺匠」という究極の称号まで存在します。
麺職人の見分け方は襟元が紺色であること。
丸亀のサイトにも麺職人名鑑が公開されていますから、おいしい店舗探しができるようになっています。
◆ミスド、特別な“幻のドーナツ”も
ミスタードーナツでもおいしい店舗差を発見することができます。
それは、「ファンシードーナツ」と呼ばれるドーナツ。
期間限定販売されるドーナツの原材料が余った場合に作られる、食品ロス削減を目的として作られた本部公認の商品なのですが、各店舗の状況によって作られるため、お客の立場からすれば、“いつもと違う味”が楽しめるとして、SNS上などで話題になっています。
どんなドーナツか一例を紹介すると、定番のフレンチクルーラー生地に期間限定の塩キャラメルクリームを組み合わせ、ホワイトチョコレートでコーティングした「塩キャラメルフレンチ」や、定番のイースト生地にポン・デ・黒糖でおなじみの黒五黒糖シュガーをまぶし限定の濃いほうじ茶ホイップを詰めた「濃いほうじ茶ホイップ」など。チェーン店ならではの創意工夫が具現化された、お客がウキウキする試みです。
さあ、いかがでしたか? 大手飲食チェーンの新しい楽しみ方を知れば、店舗探しが楽しくなるに違いありません。
今回ご紹介した以外の他店でもユニークな試みがたくさんありますから、ご自身で探してみると、“もっとおいしい体験”が味わえるかもしれません。
<文/スギアカツキ>
【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12