最新技術に触れる機会を通してロボット人材育成へ! 新潟県立長岡工業高校で「ドローン実習授業」

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2025年03月14日 12:21  マイナビニュース

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新潟県立長岡工業高等学校(新潟県長岡市)で、「ドローン実習授業」が実施された。同校の生徒がドローンの基礎知識や最新型ドローンに触れることで、新しい技術に対する知識・興味の向上を図り、地域における将来的な「ドローン活用の更なる推進」および「ドローンの操縦やメンテナンスを行うことができる技術者の育成促進」の契機とすることが目的。

○長岡市とNPO法人長岡産業活性化協会NAZE、NTT東日本の取り組み


長岡市は、NTT東日本と2022年(令和4年)6月に「イノベーション都市 長岡」の実現に向けた連携協定を締結して以来、人材育成プログラムを展開。県立長岡工業高等学校ともデジタルものづくり人材育成連携協定を締結し支援を行っている。



一方、NPO法人長岡産業活性化協会NAZEは、2020年(令和2年)11月に長岡工業高校と市内企業2社との4者で「ロボット人材育成に関する協定」を締結。ロボットをはじめとするDX人材に必要となる知識・技術を身に付ける教育プログラムに取り組んでいる。



このような関係性から、NAZEが主催となり、長岡市、NTT東日本の3者が共同で、DX人材育成の一端を担う活動として開催された今回の「ドローン実習授業」では、実技として、NTT東日本で実装している産業用ドローン「skydio2+」の操縦、座学として、ドローンに関する基礎知識・法令知識・活用事例やDXの重要性を学ぶほか、さまざまなドローン機種の展示やVR体験、NTT東日本の災害時の取組みなどが紹介された。


○日本海側デジタル拠点『イノベーション都市 長岡』の実現へ



長岡市では、変化の波を的確にとらえ、従前にとらわれず市民生活の向上と産業の活性化を実現する「長岡版イノベーション」を推進。その一環として締結されたNTT東日本との連携協定について、長岡市 DX推進部 DX政策課 課長の穂刈美枝氏は、「双方の資源を有効活用した協働の取組にチャレンジすることにより、長岡版イノベーションのさらなる活性化、ひいては日本海側デジタル拠点『イノベーション都市 長岡』の実現を目指したもの」と説明する。


連携協定締結以来、イノベーション人材の育成につながるような最先端の技術の動向を知ることができる「長岡技術フォーラム」の開催、米百俵プレイス「ミライエ長岡」における日本海側唯一のNTT東日本のスマートイノベーションラボの開設、自治体DXに係るアドバイザリーなどが実施されたほか、令和6年からは、連携事項のさらなる加速を図るため、NTT東日本の社員が「イノベーション推進コーディネーター」として、週1回、長岡市に勤務。さらなるイノベーション推進に取り組んでいるという。

長岡市では、一般機械器具や電子部品・デバイス、精密機械器具などの製造業が主要産業となっているが、「近年では、深刻な人材不足解消と製造現場の生産性向上が課題」という長岡市 商工部 部長の西山祐介氏。この課題解決に向けて、長岡市と長岡工業高校は、人材育成に特化した「デジタルものづくり人材育成に関する協定」を締結している。


さらに、長岡工業高校では、市内企業2社とNAZEとの4者間でも、民間主導で将来的にロボット技術を持つ人材輩出を目標とした、若年層の人材育成の契機となる「ロボット人材育成に関する協定」を締結。この取り組みの中で、「近年急速に利用用途が拡大しているドローンについても、地元の学生が体験や学習できる機会を作ることができれば、将来の地域社会での利用拡大や技術者育成に資することができるのでは」との思いから、「すでに業務で活用実績があり、グループ内にドローン専門会社を抱えるNTT東日本様へお声がけし、本施策を検討・実施してきました」とNPO法人長岡産業活性化協会NAZE 常務理事の川上英樹氏は振り返る。


今回行われたドローン実習授業について、「長岡工業高校の生徒は、地域企業の将来を担う大切な人材であり、今後さらに活用が期待される最新型のドローンに直接触れて、学習する機会が出来たことは非常に有意義であり、地域における技術人材の育成や活用拡大のきっかけになればと」と期待を寄せるNAZEの川上氏。実際に授業を実施するにあたり、「特別授業ということで、学校側の授業スケジュールとの調整やドローンを飛行させる会場の調整などが少し大変でした」と苦笑いを浮かべつつ、「(授業で使用したドローンは)NTT東日本様が実践で使用している最新型のドローンであり、私も実際に操作させていただきましたが“自動で障害物を回避する機能”には非常にびっくりいたしました」と最新ドローンの性能に驚きを隠さず、「さらに普段生徒が体験することが少ない『災害対策』や『バドミントンのトッププレーヤーのスマッシュを体験するVR』などとても有意義な授業になったのでは」との感想を述べた。



また、「最新型のドローンを操縦することができとても勉強になった」や「職業選択の一つになりそう」など、過去に授業を受けた生徒からの「前向きな評価」を紹介しつつ、ドローン授業以外にも、ICT人材の育成をコンセプトに、長岡工業高校の生徒を対象とした公開プログラミング講座や市内企業を講師として迎えたロボットアームを利用したロボット講習など、多角的に教育プログラムを展開していることをアピールする。



一方、「ロボット技術を持つ人材を地元から輩出することは、長岡市のような将来の地域社会での技術利用拡大や技術者育成に繋がる」という、長岡市 産業支援課 課長補佐の山本淳氏は、「長岡工業高校の生徒は、その将来を担う大切な人材」と評価し、今回のドローン実習授業が意義深いものであるとの見解を示す。


また、「授業内では、ドローンが動き始めたときの生徒たちの歓声や楽しそうな表情、真剣なまなざしで授業を受講する生徒たちの姿を見ることができた」と話す長岡市の西山氏は、「この授業が人生の一ページに刻まれることで、今後生徒たちが成長し大人になったときに、この経験をもとに地元企業でのびのびと活躍する姿を見届けられることを祈っています」と、今回の授業が今後に与える影響にも期待を寄せた。



NTT東日本新潟グループは、2022年の長岡市との連携協定締結や長岡産業活性化協会NAZEへの加入を契機に、さまざまな人材育成の取組を実施。今回のドローン実習授業については、「受講した生徒の皆様から『もっとドローンについて知りたい』、『今後もドローン体験授業を続けてほしい』などの声をいただきました」と話すエヌ・ティ・ティ エムイー 関信越ブロック統括本部 新潟エリア統括部 サービスセンタ長の河邉治雄氏は、ドローンに関して興味を持つきっかけになったことを一定の成果としつつ、「今回初めて実施したVR体験についても好評でしたので、今後も地域を支える人材育成の取組として、さまざまな技術に触れ合う機会を提供していきたい」との意気込みを明かす。


実際、NTT東日本新潟グループでは、高校生向けの「ドローン授業」以外にも、小中学生向けに、長岡市とともに「マインクラフト」を通じたプログラミング教室などを開催することで、学童・学生のうちからプログラミングに興味を持つような取り組みを実施。さらに、大学生や社会人、企業向けとしても「長岡技術フォーラム」を毎年開催し、より高度な最新のICTや情報セキュリティ、AIなどの情報を継続的に発信するなど、幅広い年代をターゲットにしたアプローチを続けており、「今後も引き続き長岡市様やNAZE様と連携し、この地域の皆様が最新の技術に触れ合う機会を提供することで『イノベーション都市 長岡』の実現に向けて微力ながら貢献できれば」と話すエヌ・ティ・ティ エムイーの河邉氏に対して、NAZEの川上氏は「『イノベーション都市 長岡』の考えに共鳴いただいたNTT東日本様には、これまで細部にわたり多大なご協力をいただきました」と感謝の意を表すとともに、「同じく長岡工業高校様からも、地域社会・人材育成のためにと取り組みにご賛同いただき、場・時間をご提供いただきました。改めて感謝申し上げるとともに、今後とも引き続き将来の大切な人材のための教育プログラムを実施していければ幸いです」と今後のさらなる推進を約束した。



「設備の保守や災害対応などの実際の現場でドローンを活用しているNTT東日本様から、直接操作方法を指導いただいたのは、高校生たちにとって非常に貴重な機会であった」という長岡市の穂刈氏は、感謝の言葉を添えつつ、長岡市とNTT東日本の連携協定が、イノベーション人材の育成を大きな軸としているところから、「高校生の皆さんには、今回の授業の経験を活かして、将来のイノベーション人材として活躍していただけることを期待しています」と続ける。そして、「今年度の『長岡技術フォーラム』では、AIをテーマに取り上げたり、スマートイノベーションラボの活用を検討したりするなど、最先端の技術の導入・活用や地域のDX推進などにともに取り組んでいます」と両者の連携をあらためて紹介しつつ、「イノベーション推進コーディネーター」をはじめとするNTT東日本の社員と活発に意見交換を行いながら、「産業界や自治体の生産性向上に資するような取り組みを進め、『イノベーション都市 長岡』の実現に向けて、引き続き一緒に前進していきたい」と決意を新たにした。



一方、「製造業における人材育成および製造現場の生産性向上は、最も重要な課題であり、成果が実るまでには、沢山のトライアンドエラーを伴った長期的な取り組みが必要」というNAZEの川上氏は、近年では生成AIやセンサー類の超速的な発達から、長岡市内の製造業も変革期を迎えている現状を見据え、「これらに対応できる教育実施、人材確保も喫緊の課題」と指摘。NTT東日本に対して、「協定の締結以降、長岡市だけでは実現の難しい、最新技術に関するさまざまな教育プログラムの実施にご協力いただいてきました」と感謝を述べつつ、「今後とも意見交換をしながら、さまざまな取り組みができれば幸いです」と、協力関係のさらなる強化を希望する。



「現在、弊社ではドローンを使って橋梁や鉄塔等の点検保守業務を行っておりますが、新潟エリアにおいてもインフラなどの老朽化や人手不足が深刻な課題となっており、弊社のアセットを活用することで、地域課題の解決に少しでも貢献できれば」との考えを示すエヌ・ティ・ティ エムイーの河邉氏は、「ご承知のとおり新潟は農業大国でありますが、農業に携わる方の高齢化や就労者の減少が問題になっている」といった課題を言及。「例えば稲作の場合は夏場に20kgを超すような重い機材を担いで農薬散布を実施している」といった例を挙げつつ、ドローンによる作業の軽減やDX化などの取り組みを強化していきたいとの意向を示し、「ドローンには、まだまださまざまな可能性があると思っておりますので、引き続きドローンを活用した地域課題の解決に取り組んで行きたい」と締めくくった。(糸井一臣)

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