
来週の3月18日(火)から春の甲子園、選抜高校野球大会が始まります。開幕試合は、大分の柳ケ浦vs東京の二松学舎大付です。
それぞれを「代表」と書かなかったのは、春の選抜は地区ごとにチームが選出されるからです。
北海道(1校)
東北(3校)
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関東・東京(6校)
東海(3校)
北信越(2校)
近畿(6校)
中国(2校)
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四国(2校)
九州(4校)
21世紀枠(2校)
明治神宮大会枠(1校)
春の選抜は地区ごとに学校数が決まっています。最初に各都道府県の連盟から1校が推薦され、さらに地区推薦などを経て出場校が決定します。
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この中でまず気になるのが、明治神宮大会枠。これは2003年に導入されました。学生野球のトーナメント大会である明治神宮大会の優勝校が所属する地区に、出場枠1を割り当てる制度で、昨年は神奈川の横浜が優勝したので「神宮大会枠」は関東・東京地区に与えられることに。6校だった関東東京枠は7枠に増えました。
そして3月20日(木)、優勝候補の一角と目される兵庫の東洋大姫路と対戦するのが、21世紀枠で選出された長崎の壱岐です。
この枠の条件は、前年の秋季地方大会で規定以上の成績を収めていることに加えて、(ここが妙味なのですが)高校野球の模範となるような高校であること、という条件を満たす必要があります。夏の甲子園と違って、春の選抜は主催の毎日新聞社の選考委員会が選出する「招待試合」なので、大会成績以外の結果も重視して、大会に多様性を持たせています。
この枠のおかげで、これまで多くの学校が甲子園に新しい風を運んできました。先述の壱岐(いき)は選手全員が地元の島出身という点も評価されたのでしょう。強豪校への"越境入学"に対するアンチテーゼとも言えますね。
21世紀枠の選考には、各校の最終プレゼンも大きな影響を与えるそうです。選手の自主性を重んじたマネジメントで力をつけた横浜清陵は、神奈川の県立高として71年ぶりの甲子園出場になるそうです。どんなアピールが響いたのか気になりますが、高校野球フリークのいけだてつやさんによれば、「いいプレーが出てもガッツポーズをしない」「喜んでいいのは試合後の1分間だけ」といったユニークな指導方法だったとか。
ただ、近年では21世紀枠の見直しを求める声もあるようです。その理由は、県大会や地方大会を勝ち上がってきた「一般選出校」との実力差にあると聞きます。実際に、21世紀枠の高校が一般選出校を相手に勝利したのは、10年前までさかのぼります。
ただ、21世紀枠で出場した高校からプロ野球選手になった選手もいます。今年、巨人にFA移籍した甲斐拓也選手の人的補償で、ソフトバンクに移籍した伊藤優輔投手も、都内屈指の進学校・小山台3年時に21世紀枠で出場しています。1回戦で大阪の履正社に敗れしましたが、その時に履正社の四番を打っていたのは、ヤクルトにも在籍した中山翔太選手(現オイシックス新潟アルビレックスBC)でした。
21世紀枠の高校からプロに入って最も成功したのは、2008年春に出場した愛知の成章でエースを務めていた、ヤクルトの小川泰弘投手でしょう。新人王や最多勝利のタイトルを獲得し、ノーヒットノーランを達成した球界を代表する名投手です。そう考えれば、「21世紀枠は勝てない」と見直しを求めるのは早計かもしれません。
今年の選抜はどんな逸材が現れるのか。"判官びいき"で21世紀枠の高校に熱い視線を送るのもいいのではないでしょうか。
それでは、また来週。
構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作