
GII金鯱賞(中京・芝2000m)が3月16日に行なわれる。GI大阪杯(4月6日/阪神・芝2000m)や、香港のGIクイーンエリザベスII世カップ(4月27日/シャティン・芝2000m)を目標とする有力馬の始動戦、といった意味合いもあるレースだ。
そうした背景もあってか、現在の施行時期となった過去8年で1番人気は5勝、2着2回、3着1回と、かなり安定した成績を残している。しかしその一方で、6番人気以下の伏兵が馬券に絡むことも頻繁にあって、ひと筋縄ではいかない一戦となっている。
実際、2021年には10頭立ての10番人気ギベオンが逃げ切り勝ち。断然人気のデアリングタクトが2着に敗れて、3連単では78万円超えという高額配当が飛び出している。
それゆえ、中日スポーツの大野英樹記者は、今年も穴馬の激走に期待している。
「3連覇を目指すプログノーシス(牡7歳)をはじめ、昨秋のGI天皇賞・秋(10月27日/東京・芝2000m)で3着に入ったホウオウビスケッツ(牡5歳)、パワフルな先行力が売りのデシエルト(牡6歳)などタレントぞろいながら、今年も10頭立てと落ちついた出走頭数。一見すると、穴を狙うのは難しそうな一戦ですが、それでも人気の盲点となりそうな馬は存在します」
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そうして、大野記者は波乱の使者として2頭をピックアップした。1頭目は、ラヴェル(牝5歳)だ。
「新馬戦(小倉・芝1800m)、GIIIアルテミスS(東京・芝1600m)とデビュー2連勝を飾って、早くからその活躍が期待されていた素質馬。アルテミスSでは、のちの三冠牝馬リバティアイランドを下していますしね。
ただそれ以降、2年近く低迷。折り合い面に悩まされて苦戦が続いていました。完璧に折り合って進むことができたGIオークス(東京・芝2400m)では、10番人気の低評価ながら4着。折り合いさえつけば、結果が出ることは証明されていましたが、とにかく行きたがる馬でした。
3歳秋になっても、折り合い難は解消されずじまい。力があってもリラックスして走れないというシーンが散見されました。
そんな繊細な馬に進境が見られたのは、昨年の秋です。GIエリザベス女王杯(11月10日/京都・芝2200m)では、スタート後にいくらか行きたがるところを見せましたが、馬群の中団で我慢させることに成功。直線、外から脚を伸ばして2着と好走しました。
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さらにその後、前走のGIIIチャレンジC(11月30日/京都・芝2000m)でも中団の馬群のなかで折り合って、じっくりと運ぶ理想のレースぶりを披露。直線で早め先頭に立って、そのまま突き抜けました」
ラヴェルと同じ矢作芳人厩舎の管理馬で、馬主がキャロットファームの牝馬と言えば、リスグラシューを思い出す。同馬は2歳時からずっとコンスタントに活躍していたが、強烈な覚醒を見せたのは、5歳になってから。金鯱賞でも5番人気ながら2着と奮闘している。
「陣営も『リスグラシューのようになれば』と期待しているラヴェル。今は大人になり、カイ食いに不安がなくなってしっかり攻められるようになり、オンオフのスイッチがつけやすくなりました。折り合いさえつけば、GIでも十分に戦える馬です。
今回予想される展開は、ホウオウビスケッツがデシエルトを押さえ込んで逃げる形でしょうが、たとえゆったりした流れでも今のラヴェルなら我慢できるはずですし、道中で末脚を温存することができれば、終(しま)いは確実な馬。メンバーがそろった一戦でも、好勝負を演じてくれると見ています」
大野記者が推奨するもう1頭は、ライラック(牝6歳)だ。
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「こちらもラヴェル同様、かかり癖に悩まされている馬。GIでも勝ち負けできる力がありながら、力を発揮できずに終わってしまうケースが多々ありました。
それでも、この馬も昨秋のエリザベス女王杯では2着ラヴェルからはコンマ1秒差の6着と健闘。掲示板を外したとはいえ、内ラチを進んで折り合い面で進境が見られました。
続く前走のGIIアメリカジョッキークラブC(1月26日/中山・芝2200m)でも、馬群のなかで荒ぶることなく、中団の内をスムーズに追走。最後は5着に食い込んで、一時の不振を脱したばかりか、6歳になってようやく円熟味のあるレースができるようになった印象を受けました。
折り合いさえつけば、先行有利の開幕週にあっても大駆けの可能性は大いにあると思います」
折り合い難を抱えてきたラヴェルとライラック。これまで、本来の力を出し切れずに終わったレースは数知れない。だが、年を重ねて落ちついた競馬ができるようになった今なら、ここで勝ち負けを演じても何ら不思議ではない。