コレクターズアイテムとして“雑誌”が注目される理由ーー背景は電子書籍の普及による“紙文化”の見直し?

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2025年03月16日 14:30  リアルサウンド

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380万円で落札された、新品状態の「週刊少年ジャンプ」1984年第51号



■紙の雑誌と電子書籍

  紙の雑誌の発行部数が急激に落ちている。例えば、日本雑誌協会が発表したデータによれば、「週刊少年ジャンプ」の部数(2024年10月〜12月の3ヶ月ごとの平均印刷部数)は107万5000部で、いよいよ100万部を切りそうな勢いだ。1994年末に発行された1995年3・4合併号は653万部を発行していたことを考えると、30年の間で実に6分の1以下になってしまったことになる。


 では、漫画市場が落ち込んでいるのかというと、そんなことはない。紙の本の代わりに、電子書籍で漫画を読む人は増加している。また、メディアミックスなども盛んになって、大手出版社の業績は絶好調だ。テレビドラマやアニメを見ても漫画原作の作品が多く、コンテンツ供給源としても漫画は依然として最強なのである。


 そんななかで、ヴィンテージ古書のコレクターの界隈では、紙の雑誌が盛り上がっている。日本最大級のコレクターズショップ「まんだらけ」では、80〜90年代の「ジャンプ」や「サンデー」などの漫画雑誌が軒並み高値になっている。数千円で取引されることはザラであり、『ドラゴンボール』や『SLAM DUNK』などの人気漫画が表紙を飾ったり、連載が開始された号は数万円で取引されることが珍しくない。


■雑誌のコレクターが増加中

  3月7日に開催された「まんだらけオークション」に、ほぼ読まれた形跡がない新品状態の「週刊少年ジャンプ」1984年第51号が出品され、380万円で落札されて話題になった。ここまで漫画雑誌が高騰しているのは様々な要因が考えられる。まず、人気のある漫画が表紙になっている雑誌を入手し、楽しむという、これまでになかった雑誌の楽しみ方を見出したコレクターがいたことだ。


 そして、当時子供だった人が大人になり、懐かしんで買い始めた人が集中しているようだ。これは近年値上がりが著しいファミコンソフトなどにも該当する。さらに、コロナ騒動の巣籠り需要などによってNetflixなどの動画配信サイトが急速に普及し、日本の漫画やアニメが海外に広がったことで、外国人のコレクターも増加した。さらに、現物資産の一環として、値上がりを見越して投資目的で買っている人もいる。


  こうした傾向のほかにも、筆者は、電子書籍が一般化したことで紙の魅力を再発見した人が多くなった結果ではないかと見ている。紙の雑誌は実に魅力的である。手触りもそうだし、インクの匂い、そして手にした時の重さなどは電子書籍では到底味わえないものだ。電子書籍と比べたら漫画の線がかすれたりしている箇所も多いが、それをむしろ味わいとして捉える人も増えているようだ。


■紙の雑誌がプレミアム仕様に?

  今後、古書の世界では雑誌のコレクターが増加することは間違いなく、市場が活性化するのではないかと筆者はみている。コレクターズアイテムになりやすいものは、第一に、所有欲を満たす仕様であることだ。雑誌は適度な重量感があり、年月を経たものは経年変化で独特のオーラを放っている。そして何より、コレクターはデジタルで所有するよりも実物があることに価値を見出す傾向が強い。


  電子と紙のすみ分けはさらに進みそうだ。漫画の場合、手軽に読む場として電子が一般化する一方で、紙の新刊は最初からコレクターズアイテムとして製作されるものが増えていくのではないか。漫画の単行本も、既に森薫の『乙嫁語り』などは造本にとことんこだわった特別仕様の本が出ている。この先、紙質や印刷まで、ムック本並みに凝った仕様の雑誌がブームになってもおかしくなさそうである。



 



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