久しぶりに来ました、超弩級コンパクトデジカメ。業界の慣習としてレンズ一体型カメラを「コンパクトカメラ」と呼んでるので、誰がどう見てもコンパクトじゃないのはご容赦ください。
それが、2018年に登場した「COOLPIX P1000」の後継機「COOLPIX P1100」である。カメラの製品サイクルが長くなり、特に市場がシュリンクしたコンパクトデジカメ市場だとなかなか新製品は難しいけれども、マイナーチェンジとはいえこうして出てきてくれた。
何が超弩級かというと、ズーム倍率。非常識にもほどがあるという125xなのだ。12倍じゃなくて125倍。
そこまで超望遠だと何を撮るんだ、という感じだけれども、何はともあれ撮るのだ。
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●125倍の迫力で月と鳥を撮る
125倍ズーム。35mm判換算だと24-3000mm相当となる。
広角端と望遠端はこんな感じ。天に向かってまっすぐ伸びるぜって意思を感じる。
イメージセンサーはコンパクトデジカメらしく1/2.3型で画素数は1605万画素。開放F値はさすがに望遠端だと暗めで、F2.8-8.0だ。
レンズやセンサーは先代P1000と同じなので(多少改良はされているかもしれないが)、高感度にはさほど強くなく、AFもコントラスト検出AFなのでさほど速くはない。昨今の像面位相差AFに慣れていると、遅く感じるだろう。そこはしょうがないですな。
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それで何を撮るのか。撮影モードダイヤルを見ると、「これを撮りたいんでしょ」とばかりにP1100ならではの撮影ポジションが2つある。「月」と「鳥」だ。
最初に月を撮ってみよう。
残念ながら今週は月が昼間に出ているタイミングだったり、夜まで待ってたら曇ってしまったりで運がなかったので夕刻のショットです。
まずは24mm。かろうじて木と木の間に月が見えます。
月モードにすると、自動的に3秒のセルフタイマーがオンになり、月の色合いを選べる。クールにしたり、やや赤くしたり。ホワイトバランスを調整してくれる。今回はノーマルで。
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OKを押すと自動的に1000mm相当になる。月をほどよいサイズで撮れてなおかつ見失わない焦点距離だ。
月撮影が厄介なのは露出のコントロールで、分かっちゃえばマニュアルでささっとできるのだけど、月モードを使えば月が露出オーバーにならず、クレーターの陰影もしっかり見えるレベルに自動調整してくれる。そうなると、手持ちで十分撮れるのだ。
そして3000mm相当まで上げると月がじゃっかん画面からはみでる。
月ばかり撮ってて飽きないかといわれると、意外にそうでもなく、季節や月の位置や月齢で表情を変えるので楽しいのである。
続いて「鳥」だ。
EVFは約2336万ピクセルで前モデルと変わらず。ハイエンドのミラーレスほどの性能はなく、AFもそれほど速くはないので鳥なら何でもイケるというわけじゃない。
ただ前モデルに比べると鳥モード時のAF枠設定が増えるなど使いやすくはなっている。
鳥モード時はOKボタンを押したときのデフォルトが500mm相当になる。それで鳥を中心に抑えて必要に応じてズームアップしてくださいということだ。
500mm、3000mmと連続してどうぞ。アオサギである。
この迫力はなにものにも代えがたい。
連写は秒7コマまで。電子シャッターを使えば先取り撮影(プリキャプチャーだ)や超高速連写も可能だが、その場合、画像サイズががくっと小さくなる(先取り撮影だとなんと1Mサイズ)ので使いどころはあまりないかな。
また、レンズがF8でISO感度が最高でISO6400なので曇天下や日陰など条件が悪いときはシャッタースピードを上げづらく、大きく動いている鳥や動物を撮るときは晴天下に限るかも。
ちなみに、これはISO6400で望遠で撮った猫。さすがにセンサーサイズが小さいこともあって高感度時はディテールがつぶれやすい。
まあそこは仕方がないところか。
●基本的な作例で性能チェック
では、月と鳥以外を撮りつつ性能をチェック。
上から見ると、非常にシンプル。前述したように鳥モードと月モードがある意外はポピュラーな撮影モードダイヤル。右手親指の位置には電子ダイヤル。
左側面はP1100ならではだ。
シャッターボタン回りにズームレバーはあるが左側面にも装備。レンズを左手で支えた状態でズーミングができる。
その横にあるボタンは「クイックバックズーム」ボタン。超望遠にするとわずかな手ブレで被写体を見失ったり、被写体がちょっと動いただけで「あれ? どこへいった?」ってことがあるわけで、その時、これを押すと押している間だけズームアウトしてくれる。指を離すとまた戻るので、これで見失った被写体をみつけ、中央に置いてまた超望遠に戻すという便利な使い方をするのだ。
モニターはバリアングル式で3.2型。前モデルと同じだ。
背面はシンプルでカスタマイズの余地はあまりない。十字キーの下がマクロになっているのが懐かしいところかも。
ちなみにマクロモードにすると、24-155mmの間でより近距離までピントがあう。3000mmだと7mが撮影最短距離だが、マクロモードにして約155mmにするとこのくらいの距離まで近寄れるのだ。最短でレンズ前1cmだが、個人的にはこの望遠マクロがいい。遠近が強く出ないのでモノの形をきれいに撮れるのだ。
では基本性能を踏まえたところで人を撮ってみる……といっても、ついやっちゃうよね、24mmと3000mmの比較。
125倍って笑っちゃうほど、想像できないほど倍率が高い。何しろ肉眼で米粒にしか見えない距離まで離れてもらっても顔のアップいけちゃうのだから。
ちなみに超望遠メインのカメラだけど、内蔵フラッシュはもっている。
日中、逆光で人を撮るときにおすすめ。当たり前なのだけど、最近フラッシュを内蔵しないカメラが増えている(動画メインなら使わないし)ので、あえて使ってみた。
最後にいつものアレ。広角端だとディテールの描写は甘いけど、望遠側でもっとも性能が出る設計なのだと思う。
もう一つ、せっかくなので望遠で河津桜。
なお、使ってて気になったのは望遠時のAWB。望遠時はAWBのための情報が少なくなるので仕方がないところではあるが、ちょっと不安定でなところがあるかな。
●唯一無二の超望遠ズームカメラは健在だった
そうそう、ハード的にはほぼ変わらないマイナーチェンジモデルではあるのだが、一つ新しくなった点がある。
USB端子だ。前モデルではmicroUSB端子だったが、今回のP1100では無事USB Type-C端子になった。いまさらmicroUSBってのはないからね。これは大事な点。
また、ワイヤレスリモコンのFnボタンが使えるようになった、シーンモードの比較明合成に花火モードも追加されたなど機能面での追加もある。
ともあれ、この3000mmといわれてもどのくらいなのか想像しづらいレベルの超弩級超望遠カメラが健在なのはうれしい。このド迫力のズームは他のカメラでは味わえない写真を撮れるわけで、それでいて価格は14万9600円(ニコンダイレクト価格)なのである。
さすがにベースが2018年のカメラなので不得手なシーンは結構あるけれども、得意ジャンルでは他カメラの追随を許さない写真を撮れるのだ。それを考えると安いかも。
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