“うまく描けた”と思うときは?アニメーター・川元利浩の画業を振り返るトークショー

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2025年03月16日 18:53  コミックナタリー

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左から数土直志氏、川元利浩。
アニメーター・川元利浩のトークショーが、「第3回新潟国際アニメーション映画祭」の一環として本日3月16日に新潟・日報ホールで開催された。聞き手は映画祭のプログラムディレクターでもある数土直志氏が務めた。

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映画祭でも上映された「カウボーイビバップ」のキャラクターデザインをはじめ、多くのボンズ作品に携わり、アニメファンには知られた存在である川元。トークショーでは過去に出版された川元の画集をもとに、川元がコメントを挟みながらこれまで携わった作品を振り返っていった。

その前段としてアニメーターになったきっかけを聞かれると、「高校を卒業して普通にサラリーマンになったんですが、『ナウシカ』や『カリオストロの城』、『マクロス』や『ビューティフル・ドリーマー』などが立て続けに発表された時期で、とても刺激を受けたというのが一番大きいです。幼少の頃から白い紙があったら絵を描き続けたり、授業中は教科書にパラパラマンガを描いたりしていました」と振り返る。自身の絵に自信があったというわけではないそうで、「SNSもなく、絵を評価してもらう機会が本当に少なかった時代なので、アニメ誌に投稿して掲載されると、なんとなく受け入れられたように思っていたことはありました」と控えめに語った。

専門学校を経てグループどんぐりに籍を置き、最初に携わった作品は「プロゴルファー猿」。これには「新人を教えるには藤子作品の線にトライさせるのがいいんじゃないか」という考えがあったのではと話す。最初にクレジットされた作品は「うる星やつら」の180話。「アリオン」の動画に参加しつつ、「機動戦士Ζガンダム」の動画にも少しだけ携わり、それがきっかけで「機動戦士ガンダムΖΖ」で原画を手がけることに。「安彦良和さんのような絵が描きたい」という思いが強くあったという川元は、1989年に安彦原作・監督の「ヴイナス戦記」に参加する。念願の安彦作品への参加はキャリアのターニングポイントになったという。画集に収められた「ヴイナス戦記」の版権イラストを示しつつ「初めて描いた版権イラストで、この1枚を描くにもかなり苦労しました」と回顧した。

画集にはキャラクターだけではなくメカのイラストも収められており、キャラクターの絵の印象が強い川元だが、メカを描くのも好きだという。「スタジオどんぐりで原画を始めるとき、自分を教えてくれた師匠筋の人がメカ描きの人だったんです。だから『メカカットは俺が描くからキャラカットはお前が描け』と割り振られたところから、キャラクターの仕事が増えていった」と裏話を明かした。またOVA「GOLDEN BOY さすらいのお勉強野郎」でキャラクターデザインを手がけた折には、原作の江川達也の絵に強く影響を受けたと語った。

「カウボーイビバップ」の話題では、エドは企画当初は男の子であり、途中で女の子に変更されて描き直したというエピソードや、アインは極力写実的に描いたうえで仕草や表情を見せたいという思いがあったという話も。続く「WOLF'S RAIN」では、「自分の中では『ビバップ』から離れたテイストのものを作りたくて、キャラクターのラインを意識的に変えていった」と振り返った。一方で「血界戦線」や「ノラガミ」など多数の原作もののアニメにも携わり、「原作ものはあくまでも原作ファンを大切にしたいと思っていて、そのまま動かしたいなって気持ちがあります」と思いを述べる。また「自分の中で、うまく描けたと思うときはどういうとき?」という質問にも、「オーダーしてくれた人が喜んでくれるに越したことはない」と謙虚に答えた。

最近では4月に放送を開始する「ヴィジランテ-僕のヒーローアカデミア ILLEGALS-」の作業に参加しているという川元。未発表の新作アニメのキャラクターデザインも控えているとのことで、「期待していただければと思います」と微笑んだ。

「第3回新潟国際アニメーション映画祭」は3月20日まで新潟市内で開催中。長編アニメーションを中心とした映画祭で、国内外の長編作のコンペティションや、ゲストを招いた上映プログラムが展開される。

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