『べらぼう』伝説の花魁役で視聴者の度肝を抜いた小芝風花が語る「やりきった安心感」

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2025年03月16日 19:10  週刊女性PRIME

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大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』毎週日曜夜8時〜(NHK総合)ほか

「普段、色気があるタイプとは口が裂けても言えないので(笑)」と、小芝風花。

 大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』で演じているのは、蔦屋重三郎(横浜流星/以下、蔦重)に思いを寄せる幼なじみ・花の井。蔦重の『吉原細見』(※吉原のガイドブック)の売り上げに貢献すべく“伝説の花魁”瀬川の名を継いだ。

大河ドラマは夢だった

「“伝説の”ってつけないで〜って思っていました(笑)。でも大河ドラマに出ることはひとつの大きな夢でしたし、祖父母がすごく喜んでくれて。孝行ができた喜びはありましたね」

 花魁の実年齢は10代〜20代前半だという。小芝は現在27歳。

「もしかしたら、花魁の役は最後かもしれない。だから、全部思い切って出し切りたいと、いろいろ研究しました。ちょっとしたしぐさや目線などは、今までの役以上に細部まで意識して。声も低くしましたし、メイクさんもすごく考えてくださって。少しでも不安があったら、“これはやってもいいことですか?”と所作指導の先生の元へ確認に行って」

 花魁として、ひとりの女性として、複雑な感情を抱える瀬川。根底にある思いは“蔦重のため”。

「自分の思いや感情を押し殺して、犠牲にできるところはなかなかまねできることじゃないし、切なくもあるんですけど。蔦重の性格も知っているし、“結ばれるわけがない”という諦めもありながらも、少しでも彼の夢が叶うようにサポートする。身を切る仕事で、きついお客さんを引き受けて、どんどん心も身体も疲弊していく。でも、絶対に蔦重の前では疲れているそぶりを見せない。

 瀬川という大きな看板を背負って立つ姿は、すごくカッコいいなと思います」

大門を出たら二度と蔦重に会えない

 第9回(3月2日放送)では、瀬川と茶屋で親しそうに話す太客の鳥山検校(市原隼人)に、蔦重は嫉妬。鳥山が瀬川を身請けする話を聞き、初めて自分の思いに気づく。

「“俺が幸せにしたい”。まさか蔦重の口から、そんな言葉が出るなんて。その驚きと変化。でも甘いモードにはならず(笑)、蔦重の胸ぐらをつかんで“心変わりしないだろうね!?”と言うシーンは、ふたりの関係性っぽくて好きでしたね」

 ふたりで足抜けを画策しつつも、身請けは女郎たちの夢。瀬川は正々堂々と大門を出る背中を女郎たちに見せることが自分の務めと考え直し、身請けを承諾した。

「第10回(3月9日放送)の花嫁道中は、衣装がいちばん重くて。本当に布団のようでした(笑)。もうお勤めをしなくてもいい解放感もあるんですが、ここを出たら二度と蔦重と会えない。すごく複雑で。蔦重を見たら大門を出ていけなくなりそうで、その目を見られなかったです」

「こだわってよかった。伝わってうれしい」

 これからは鳥山の妻として、蔦重への思いにふたをして生きていく瀬川。

「やり切った安心感はあります。それこそやっぱり、私のイメージ的に花魁がピンとこない方も多かったと思います。私自身もそうでした」

 放送が始まると“いい意味でギャップがある”“まるで別人のよう”など、小芝がつくり上げた艶っぽさと男前っぷりに、SNSには驚きと賛辞があふれた。

「うれしいです。いろんな役柄を演じられることは、やっぱり幸せ。今までは、特に10代や20代前半までは真っすぐな役が多かったんです。元気で明るくて、自分の正義感で突っ込むいい子……みたいな」

 実は色気や大人っぽさに苦手意識を感じ、課題だと捉えていたという。

「年齢より下に見られることが多いですし、“そういうイメージはない”って言われることが多かったので。大河ドラマでこの大きな難題にチャレンジさせていただけた。不安やプレッシャーもありつつ、でも新たな挑戦ができることはやっぱり楽しいし、うれしい。そして、本当に細かいところまで瀬川の感情を(視聴者が)酌み取ってくださっていて。そんな声を見るたびに、“ああ、こだわってよかった”“伝わってうれしいな”という気持ちでいっぱいです」

 瀬川という難役が、小芝に女優の階段をひとつ上らせた――。

吉原の華“花魁道中”

花魁道中にめちゃくちゃお金がかかることは知ってはいて。だからすごく特別なイベントだと思っていました。でもあれは、お客さんをお茶屋さんまで迎えに行くものだから、日常的にあったことだと知り、すごくびっくりしました。

 お代はお客さん持ちなんですが、花魁の世話役の禿(かむろ)ちゃんという少女ふたりと、振袖新造(ふりそでしんぞう)のふたりのお着物代などは全部、花魁持ち。花の井が瀬川になったとき、すごく気合を入れて彼女たちのお着物も全部新調しているんです。それだけの覚悟を持って瀬川を継いだことが実はわかるので、ぜひ見返してください(笑)」

取材・文/池谷百合子

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