
阪神からマイナー契約でフィリーズへ移籍した青柳晃洋(31)が、フロリダで元メジャーリーガーの上原浩治さん(49)の取材に応じた。取材時は、あいにくの雨で、アメリカでも“雨柳さん”が健在。キャンプに招待選手として参加していた青柳は、インタビューで、投手として先にメジャーへ移籍していた阪神時代のチームメイト・藤浪晋太郎(30)にアドバイスをもらったことを明かした。
【写真を見る】フィリーズ・青柳晃洋、藤浪晋太郎へ「どんなマインドでやってる?」元虎の同志からアドバイス“打たれたらしょうがない”
上原浩治さん:メジャーへの憧れはいつから持ってた?
青柳晃洋選手:正直最初は全然なくて。東京オリンピック™に出させてもらったときに、全く通用しなかったんですよ。シーズンでは最多勝を獲れた年だったんですけど、メジャーリーガーが出ていない大会で全く通用しなかったんで、そこからもう「アメリカの野球はどんなのかな」っていう興味がどんどん出てきて、そこからですね。
上原:オリンピックのときは僕も解説で、横浜スタジアムで見てたんですけど、確かにちょっとシーズンの良いときの自分(青柳)ではなかった。あれは何か緊張とか日本野球と違うものがあった?
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青柳:そうですね。野球の仕方も違いますし、僕自身も初めてのナショナルチームだったんで、そういう部分の緊張もありましたし。思うように自分が動けなかったのもありますけど、でも良いボールでもやっぱり打たれたところがあったんで。
上原:そこからアメリカの野球とはどういうものだと。そのアメリカの野球で先に藤浪(晋太郎、30、マリナーズ)選手とか、井川(慶、45)選手とかが阪神から来てると思うんですけど、彼らからアドバイスをもらったりしましたか?
青柳:井川さんとはお話をする機会がなかったんですけど、晋太郎とは「どんなマインドでやってる?」みたいな話とかも。日本だったらここにこう投げてほしいとか、投げなきゃいけないというのがあったけど、晋太郎の場合は素晴らしいものがあるんで、“ストライクゾーンに思い切って来いよ。それで打たれたなら、もうしょうがないよ、みたいな感じで向こうはやってるよ”っていう、話を聞いたりとか。ベストボールの160kmを投げたとしても、簡単にはじき返されるって話を聞いてたんで。僕みたいに球が遅いピッチャーでも、どうやって抑えていくかは、考えていかなきゃいけないなと思います。
上原:青柳選手はサイドスロー。このサイドスローはアメリカの野球ではちょっと珍しい部類に入るんじゃないかなと思うんですけど、そこは強みとして自分で持ってる意識はありますか?
青柳:日本でもそうですけど、人と違うことをやってるんで、競争率はちょっと下がるかなと思うんで、そこを活かしながら。でもやっぱり力がないと、こっちでは珍しいだけでは投げさせてもらえないと思うんで、その力だったり、成績で示していかないと、メジャーリーグで投げることができないのかなと思ってます。
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上原:メジャーリーグっていう話がありましたけど、契約としては今、マイナー契約。どうやったらメジャーに上がれるかなとか、自分がどうアピールすれば契約してもらえるかなって、どう考えてますか?
青柳:僕の場合は特殊なのは投げ方だけなんで。あとは精度だったり、日本人はコントロールがいいって言われてる方だと思うので。僕自身はそんなコントロールよくないですけど、それでもそういうとこで勝負していかないといけないと思いますし。フィリーズの先発であれば、上投げの人しかいないんで、アームアングルが変わるところではやっぱり珍しいんで、その後に活躍できるように。あと僕自身、日本では先発でしたけど、リリーフでもロングでも敗戦処理でも、何でも行くっていう所まで来てるんで。どんな役割でも、自分が与えられた役割を遂行していくのを繰り返していかなきゃいけないなと思ってます。
上原:こっちに来る日本人の選手が最初に戸惑うのってボールの違いだと思うんですけども、その辺は今のところ全然感じてない?
青柳:いや、ちょっと感じてますね(笑)
上原:やっぱり投げにくいですか?
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青柳:日本よりは滑るっていう感覚もありますし、気持ち(ボールのサイズが)大きい感じもするので、それはたぶん縫い目の高さだったりになりますけど、でもちゃんと投げられたときは、いいボールがすごい投げられるんで、そこはもう慣れていくしかないなと思ってますね。
上原:どういうときに滑ります?まっすぐなのか、変化球なのか。
青柳:僕は変化球ですね。やっぱスライダーで抜けちゃうことが多かったんで、でもちゃんとかかったときは素晴らしい変化をするんで、日本よりもボールが動くなと思いますね。
上原:その対策としてはどういうことをやってます?
青柳:まだあまり見つかってないですね。なので、メジャーで活躍する選手がどうやってやってるかっていうのを聞いてます。
上原:あとは、キャンプでどうアピールするか。まだ先発って言われてるわけではないですか?
青柳:基本的には多分リリーバーとして考えられてると思うんで。でもやっぱりリリーバーでも1イニングじゃなくて、ロングだったり、最初はそういうとこから始まると思うんで、いつでもどこでも投げられる準備はしてますね。
“雨柳さん”はフロリダでも健在上原:今日はあいにくの雨なんですけど、日本からよく言われてるみたいで、今日は試合ではないんですけど、なぜピンポイントでインタビューのときに降るのかと(笑)
※青柳は、阪神時代から登板する日に雨天が多く“雨柳さん”の愛称で親しまれていた。
青柳:あわせてきましたね(笑)
上原:(笑)それは自分の中で何か意識とかあるんだ?先発のときにあるでしょ?
青柳:先発のときは、はい。もう言われ続けてるんで(笑)でも先発の日に雨が降ったら、僕大体勝てるんで。いいものだと思ってるんですけど。
上原:じゃあ今日はいい方向って捉えて?
青柳:そうですね(笑)
上原:チームの中でやっぱり先発ローテーションに入っている人たちはすごいですか?
青柳:すごいですね。ザック・ウィーラー(34)のライブBPを見させてもらったんすけど、やっぱレベルが違うなって。日本人ピッチャーももちろんすごいと僕は思ってるんすけど、でもメジャーでそれだけ活躍してる選手のボールは違うなって、その日に感じましたね。
上原:バッターはどうですか?味方だったらブライス・ハーパー(32)がいて、カイル・シュワーバー(32)もいて。
青柳:まだ練習しか見てないですけど、やっぱり規格外というか。でもなんかもっと大きいイメージがあったんですよ。実際会ってみたら、そこまでゴリゴリでかいって感じはしないですけど、ものすごい飛ばすんで。「どこからそのパワーは来てるのかな」って。
上原:ハーパーは本当に日本人みたいな体格で、そこまででかくはないんですけどね。そういう人たちを相手に、戦っていかなくちゃいけないので、最後どうアピールするかですね。
青柳:そうですね、上原さんが1年目のときって、どういう気持ちでした?
上原:自分は憧れで来てたんで。ポスティングをずっと訴えてて、「ダメだダメだダメだ」って、結局FAになってきたときは、もう楽しみしかなかった。やっと行けるって。来たときは本当に気持ちとしては小学生のときに味わった野球感みたいな感じで。思いっきり打って、思いっきり投げても楽しくやってたっていう感覚で過ごせたかな、キャンプは。
青柳:シーズンに入っても同じマインドでした?
上原:いきなり僕は(相手が)ヤンキースだったから、松井(秀喜)さんもいたし、その中で投げてて、「もうテレビで見た人ばっかりやん」みたいな感じで、わくわく感でやってましたね。「打たれたらどうしよう」っていうよりも、わくわく感が出てくると思います。今もあると思いますけど。
青柳:ライブBPでJT.リアルミュート(34、フィリーズ)と組ませてもらって、そのときに「うわ、リアルミュートだ」と思って(笑)本当にちょっと少年の気持ちじゃないんですけど、そういうメジャーでやってた選手と一緒にできるっていう。僕はまだマイナー契約なんでシーズンをどう過ごすかになってくると思いますけど。キャンプですら、そのメジャーリーガーに触れることがいっぱいあるんで、みんなすごいですし。なんか正直アメリカの方が練習しないよって聞いてたんですよ、最初は。でも全体練習が短いだけで、個人的にはすごいやるんで。
上原:朝5時ぐらいから来て、ウエイトトレーニングしてる選手とかもいますから。
青柳:僕も初日は6時半とかに来たんですけど、ウエイトを終えてる選手がいるんですよ。本当に一流であればあるほど、準備だったり練習がすごいなっていうのをすごい感じます。
上原:あとは、私生活ですね。食事だったり、言葉の壁であったり、その辺はどうですか?
青柳:言葉は本当に苦労しますね。通訳がいるんで喋ってくれますけど、やっぱ自分から行きたくても行けないっていう気持ちになっちゃうんで。まず言葉を覚えたいなと思ってますね。
上原:それはもうボディーランゲージでもいいと思うんですよ。あと、自分がやっていたのは、本当は通訳をグラウンド内に入れない方がいいと思う。自分1人で外野とか球拾いとかそういうときに行って、一緒に単語だけ使うと。そうなると、向こうが結構歩み寄ってきてくれるから、いいと思うんだけどね。
青柳:頑張ります(笑)
上原:食事はもう大丈夫?
青柳:食事は基本的には全然問題なく過ごせてるかなと思います。
上原:最後に今シーズンの目標、どうでしょう。
青柳:もちろん大前提としてメジャーのマウンドに上がるっていうのが、一番だと思うので、メジャーに上がったら、どんな役割でも多分続けて出るのが大切になってくると思うんで、そこにしがみついてシーズン最後はメジャーで終われるように頑張っていきたいと思ってます。