日本人が初めて挑戦する国際オリンピック委員会(IOC)の会長選が20日にギリシャ南部のコスタナバリノで行われる。立候補した国際体操連盟の渡辺守成会長(66)が17日、日刊スポーツの単独取材に応じた。
IOCを世界スポーツ機関(WSO)に改組することを公約に掲げる中、「私的な倶楽部」から国連機関を目指すことを初めて明かした。夏季五輪の5大陸同時共催案の中身も語った。1894年の設立から現在のトーマス・バッハ氏(71)まで9人を数える会長は全て欧米人。アジア人初のトップを目指す。
スイス・ジュネーブからIOC総会が行われるギリシャに向かう飛行機に搭乗する直前だった。渡辺氏は取材に応じ、3日後に迫った「日本人初の挑戦」へ思いを語った。
「IOCは五輪を開催することで世界のスポーツをリードしようとしていたけど、今は五輪でお金もうけをしてるイメージで、印象が良くないですよね。五輪の存在価値をかえって下げてしまった」
だからこそIOCを世界スポーツ機関(WSO=ワールド・スポーツ・オーガニゼーション)へ改組し、改革を起こしたい考えだ。サッカーや陸上など各国際競技連盟との関係値は従来通りとし、WSOは世界各国のスポーツ省庁やオリンピック委員会を束ねる機関となり、世界のスポーツ界の底上げを目指す。
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「実は世界のスポーツを統括する機関は今ないんです。IOCはあくまでも五輪を開催する民間団体です。スポーツは公平さや団体活動を重んじる精神を養えますよね。その先に平和へとつながっていく。スポーツ教育なくして世界平和はないと考えていて、WSOはその責任を担っていきたい。これがうまく回れば各国のスポーツの存在感が高まり、結果的に五輪の存在価値も上がっていきます」
元々、欧州の貴族らが集まって組織されたIOCは現在も公的機関ではない。WSOに改組した暁には、国連の専門機関に入ることを目指すのか問うと「当然です。私的な倶楽部から国連加盟の公的機関へ変わるのが目的です」と初めて明かした。
世界5大陸の5都市で同時期に夏季大会を共催する「5大陸五輪」構想も独自色が強い公約だ。10競技ずつ計50競技を実施し、24時間で動画中継する。
「各都市の経費負担が減り、小規模な自治体でも開催が可能になる。また世界の1都市で開催するより五輪が身近な存在になる。32年のブリスベンまでは開催都市が決まっているので早くても実現は36年以降。10年先にはデジタル技術も格段に上がり、動画視聴ももっと手軽になるでしょう」
人気の陸上競技を「ぜひうちの大陸で」と競合した場合は「サッカーW杯の抽選会のようにショーアップして決めるのも良いでしょう」と話す。現在のアジア大会のような大陸大会を、5大陸五輪へと移行していくイメージも明かした。
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五輪は都市単位の開催だが「将来的には国単位でも良いと思っています。ある年のアジアの開催地が日中韓の共催になってもいい。とにかく柔軟になって世界がもっと一体感を得られることの方が大切です」と語った。
運命の会長選が20日に迫るが気負いはない。「勝っても負けてもチャレンジすることが大事。今の日本にはそういうことが欠けていると思います。結果はどうあれ後世につながる一歩にもなりますから」。定年までイオンを勤め上げた“サラリーマンIOC委員”が欧米の牙城に挑む。【三須一紀】
◆渡辺守成(わたなべ・もりなり)1959年(昭34)2月21日、北九州市生まれ。戸畑高時代に体操を始め東海大に進学。その間、2年間ブルガリア国立体育大に研究生として留学し新体操に出会う。84年ジャスコ(現イオン)に入社し、新体操の育成強化に尽力した。00年日本体操協会常務理事。04年アテネ五輪の男子団体「復活金メダル」に貢献した。09年専務理事。FIGでは13年から理事を務め、16年10月にFIG会長選で当選し、17年1月から同職。18年10月に、日本から通算14人目のIOC委員に就任した。
◆過去のIOC会長と渡辺氏以外の立候補者 初代会長のヴィケラス氏(ギリシャ)、2代目のクーベルタン男爵(フランス)から9代のバッハ氏(ドイツ)まで欧州出身が8人、米国出身が1人だった。以下、今回の立候補者。
▽セバスチャン・コー世界陸連会長(英国)
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▽ダビド・ラパルティアン国際自転車連合会長(フランス)
▽フアンアントニオ・サマランチ・ジュニアIOC副会長(スペイン)※父が元IOC会長
▽ファイサル王子、IOC理事(ヨルダン)
▽カースティ・コベントリーIOC理事(ジンバブエ)※女性初の会長を目指す
▽ヨハン・エリアシュ国際スキー・スノーボード連盟の会長(英国)
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