『おむすび』阪神・淡路大震災の記憶をつなぐ最終回 ラストシーンに込めた想い【宇佐川隆史統括インタビュー】

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2025年03月28日 10:30  クランクイン!

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連続テレビ小説『おむすび』最終回より (C)NHK
 半年にわたり放送されてきた連続テレビ小説『おむすび』がついに最終回を迎えた。ラストシーンでは、阪神・淡路大震災の際に結(橋本環奈/子ども時代:磯村アメリ)と歩(仲里依紗/子ども時代:高松咲希)たちがいた避難所におむすびを届けてくれた雅美さん(安藤千代子)と、温かいおむすびを一緒に食べる姿が描かれた。被災当時、結は雅美さんがくれたおむすびを口にし、「冷たい」と不満を口にしてしまった。それは、彼女にとって忘れられない後悔となっていた。そんな結が今、雅美さんと共に温かいおむすびを食べる――。このラストシーンに込めた想いを、宇佐川隆史統括が語る。

【写真】今、温かいおむすびを食べる2人 『おむすび』最終回のラストシーン

宇佐川統括:物語を「今」で終わらせることは当初から考えていました。そのラストシーンで、歩(仲里依紗)にとっての詩(大島美優)のように、結(橋本環奈)にとっても、ドラマだからこそできることを表現したいと思ったんです。そこで、彼女と震災のときにおむすびを届けてくれた雅美さんがどこかで接点を持ち、それ以来、毎年おむすびを一緒に食べるようになっていた、という物語があってもいいのではないかと考えました。

実は「雅美さんと一緒におむすびを食べる」ことは、あながちファンタジーではないぞと思っています。2年以上前、脚本の根本ノンジさんと本作のタイトルを考えていた際に、元になった阪神・淡路大震災のリポートVTRを見つけました。それは約2分ほどの短い映像で、震災直後、兵庫県内でも被害の少なかった丹波篠山の方々が、おむすびを作って避難所で配ったというものでした。その話自体は比較的知られていますが、もしこのような形で雅美さんを取材したリポートを、米田家や桜通り商店街の方が見たら、「あの時おむすびを持ってきてくれた方だ」と覚えている人がいるかもしれない…そんなリアルな世界線が浮かんだんです。

もちろん、ドラマはフィクションですから、リアルな背景をわざわざ説明するかどうかは悩みました。しかし、このリポートVTRは、本作のタイトルを決めるきっかけになるほど強いインパクトがありましたし、この映像を見たとき、結と雅美さんは本当に再会していてもおかしくないのではないか、と思えたので、視聴者の皆さんにとっても、そして結にとっても、ある意味“プレゼント”のようなワンシーンとして思って頂けたら嬉しいです。

(取材・文:川辺想子)
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