写真 ペットの寿命は年々伸びています。
「一般社団法人 ペットフード協会」の令和5年全国犬猫飼育実態調査によると、室内飼育の猫の平均寿命は16.25歳、外に出ることのある猫の平均寿命は14.18歳という結果が出ました。
最近では、20歳くらいまで生きる元気な高齢猫も。しかし、高齢猫になると、普通の猫よりもさらに細かいケアが大切になります。
そこで、長年、患猫を診てきた森動物病院院長で、『愛猫かぶ20歳まで一緒にいたかった〜高齢猫を看取るまで〜』で監修を務める獣医師・森健三先生に、飼い猫がシニアになったとき、心地よい毎日を過ごすために、具体的にどのようなケアをしたらいいのかを教えてもらいました。
(本記事は、『愛猫かぶ20歳まで一緒にいたかった〜高齢猫を看取るまで〜』より一部を抜粋し、再編集しています)
◆できるだけ猫の生活環境を変えない
日々の生活環境が変わるというのは、猫にとって非常に大きなストレスになります。
「特に高齢猫は、住居や食事の変化で体調を崩しやすいもの。できるだけ変えないように、また変える場合は徐々に行うことで、猫に与えるストレスを極力少なくすることが大切」だと森先生は言います。
「特に来客や小さな子どもは、高齢猫にとっては大きなストレスになりやすいので要注意です。新しい猫を迎えるというのも、特にそれが元気いっぱいな子猫の場合は、高齢猫への負担が大きいのでお勧めしません。事情があって迎える場合は、先住猫と生活空間を分けるなどの工夫をしましょう」
◆爪切りやブラッシングをして、身体を清潔に!
「年をとってくると爪が厚くなったり、巻き爪になりやすくなったりします。また、以前よりも爪とぎをしなくなるので、爪がのびすぎて自分の皮膚に刺さってしまい、出血したり化膿したりして来院する猫もいます。そうなる前に、爪をまめにチェックして、切ってあげるようにしてください」
同じように、年をとるとセルフグルーミングもあまりしなくなるようです。
「長毛種だと毛玉になりますし、短毛種でも加齢で皮膚の代謝が落ちているので、皮膚の血行促進のためにも飼い主さんがブラッシングしてあげてください。また、高齢猫は目やにがつきやすくなるので、目の周りをガーゼなどでやさしく拭いてあげます。
ただし、爪切りやブラッシング、顔の周りを拭かれるのを嫌がる猫もいます。無理やりするとそれもストレスになるので、無理にやる必要はありません。気になるときは獣医師に相談してください」
高齢猫は歯肉炎や歯周病になりやすいため、予防のために歯磨きなどの口腔内ケアも行ったほうがいいですが、森先生によると、嫌がる場合は無理にしなくてもOKだとか。できれば子猫の頃から歯磨きをして、口の中を触られることに慣らしておくのが理想のようです。
◆室温にも注意して、愛猫の身体の状態に合った室内レイアウトを!
猫は年齢を重ねるにつれて、自分での体温調節が難しくなるので、部屋の温度にも注意を払う必要があります。
「エアコンや暖房器具を上手に使って、夏は28度程度、冬は22〜24度をキープするのが最適です。冷やしすぎや暖めすぎにならないよう注意してください。また、冬は乾燥するので加湿器などを使い、湿度を50%くらいに保ちましょう」
加齢によって筋力の落ちてきた猫がケガをしたりストレスを感じたりしないように、快適な住環境を整えてあげることも飼い主にとっては大切なケアです。
「例えば、落下してケガをしないように、キャットタワーを段差の低いものに変えたり、ステップやスロープを使って移動をしやすくしたり。足腰が弱ると階段から転落することもあるので、階段スペースに入らないようにフェンスなどをつけることも検討するといいでしょう。また、筋力の低下でトイレのへりをまたぐのがつらそうな場合は、入り口が低くなっているトイレを用意したり、スロープや踏み台を置くという方法もあります」
◆高齢で食が細くなったときにできるケアとは?
次に食事面や水分補給で気をつけたほうがいいポイントや、できる工夫を森先生に聞きました。
猫も人間と同じように、体調が悪いと食欲も落ちてしまいがち。そんな中で少しでも食べてもらうために、あまりない食欲をさらに削ぐような不便さや不快感を取り除いてあげてほしい、と森先生は言います。
「もし固いフードが食べにくそうなら、水でふやかしたり、柔らかいフードに変えてあげるのもいいと思います。茹でたササミやお刺身が好きな猫にはそういう好物を与えて、少しでも自発的に食べてもらうことが大切です」
また、できるだけフードは変えないほうがいいそうですが、何も食べなくなるのが一番よくないので、それよりは、そのときに食べられるものをとにかく食べてくれたほうがいいようです。
「以前、参加したセミナーで聞いた話ですが、猫の食欲がないときは、なるべく平たい皿の真ん中にフードをピラミッド型にしてちょこっと盛るのがいいそうです。また、食べるとき、深い皿だとヒゲが皿に触って不快に感じるので、そうならないような平たい皿がいいようですよ」
すべての猫に効く方法ではないかもしれませんが、一度やってみてもいいかもしれません。
◆水分補給で注意すべきポイントは?
「猫にあげる水は、水道水でもミネラルウォーターでも、どちらでもかまいません。ただし、硬水(ヨーロッパの水に多い)はマグネシウム量が多くて、尿石のできやすい体質の猫にはよくないので、軟水(日本の水の多くは軟水)がいい」と森先生はアドバイスします。
「猫はもともとあまり水を飲まない動物。それはイエネコの祖先が水の少ない砂漠で暮らしていたからだと言われています。しかし、水をあまり飲まないと膀胱炎や便秘などになりやすいため、できるだけ飲ませたほうがいいのですが、特に高齢猫の場合はのどの乾きに鈍くなり、摂取水分量が減る傾向にあります。
さらに、高齢猫は飲もうと思ってもそのときにいる場所から水の置き場所が遠いと、行くのが面倒でやめてしまうこともあります。ですので、若いときよりも水の置き場所を増やしたり、普段よくいる場所の近くに設置してあげたりするといいでしょう」
なかなか水を飲まない場合は、「水分を多く含むウェットフードに切り替えたり、人肌に温めたぬるめの水をあげてみたり、流水器などを使って流れる水を与えてみたりなど、その猫に合う方法を探してみてください」と森先生。
大切な猫が一日でも長生きしてくれるよう、シニア猫ならではのこまめなケアを心掛けてあげたいですね。
【女子SPA!編集部】
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