
【写真】松山ケンイチ&シム・ウンギョンの“お化けピース”がかわいい
劇場公開デビュー作『Playback』(2012)が高く評価され、『きみの鳥はうたえる』(2018)、『ケイコ 目を澄ませて』(2022)、昨年公開された『夜明けのすべて』(2024)と、作品を発表するごとに、毎日映画コンクール、キネマ旬報など国内の賞を席巻、3作がベルリン国際映画祭に出品されるなど、国内外で注目を集める三宅唱監督。
『旅と日々』は、そんな三宅監督が、つげ義春『海辺の叙景』『ほんやら洞のべんさん』を原作に、シム・ウンギョン主演、堤真一共演で作り上げた最新作。脚本家の李(シム・ウンギョン)が旅先で宿主・べん造(堤真一)と出会ったことをきっかけに、人生と向き合っていく過程を李本人がつづっていく物語だ。ひっそりと身を寄せ合う登場人物たちが、やさしさと愛おしさあふれるまなざしで描かれる。
うだつの上がらない脚本家の李は、ひょんなことから訪れた雪荒ぶ旅先の山奥でおんぼろ宿に迷い込む。雪の重みで今にも落ちてしまいそうな屋根。“べん造”と名乗る、やる気の感じられない宿主。暖房もない、まともな食事も出ない、布団も自分で敷く始末。しかし、べん造にはちょっとした秘密があるようだ。ある夜、べん造は李を、夜の雪の原へと連れ出すのだった…。
主人公・李(イ)を演じたシム・ウンギョンは「ここ数年間で読んだ台本の中で最も好きな物語」と評し、「李という役は、私でもあり、そして皆さんでもある。皆さんが映画を見て、李とともに映画館で旅をすることができたら、それは何より嬉しいですね」とコメント。
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三宅監督は、つげ義春による原作を「畏怖すら覚えるほど面白く、逃げ出したくなる日もありました」と明かしながらも、「とことん新しい映画が生まれそうだという感触があります」と手ごたえをにじませた。
映画『旅と日々』は、11月全国公開。
※キャスト&監督のコメント全文は以下の通り。
<コメント全文>
■シム・ウンギョン(李役)
――本作への出演オファーを受けた時の気持ちや台本の感想をお聞かせください。
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――役作りについて教えてください。
本作は自分の自然体そのままで入ることが大事だと思い、旅に来て自分自身が感じていることを表現しました。悩んだときは監督に相談して、一緒に作り上げていく作業がすごく楽しかったです。
――三宅唱監督との仕事はいかがでしたか。
すごくパワフルで、とても素晴らしい監督だなと思いました。この現場で、今まで経験できなかったことを新たに経験できて、お芝居に関しても、映画に関しても学びましたし、響いたことがたくさんあります。
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堤さんからインスパイアをたくさんいただきました。すごく会話があるわけじゃないですが、何かつながっているような気持ちもあって、こういうことを絆っていうんだろうなと思いました。まさに『旅と日々』という映画はそんな「絆」に関しての映画であるということを実感した日々でした。
――どのような作品になると思いますか?
李という役は、私でもあり、そして皆さんでもある。皆さんが映画を見て、李とともに映画館で旅をすることができたら、それは何より嬉しいですね。完成をとても楽しみにしています。
――つげ義春さんの原作の感想を教えてください。
つげ義春さんの漫画を読むと、物語は静かに進み、何事も起こってないようなのに、大きく響いてくるものがある。そういうつげさんの漫画の力をたくさんいただいて、李という役を頑張ろうと決めました。
■堤真一(べん造役)
――本作への出演オファーを受けた時の気持ちや台本の感想をお聞かせください。
つげ義春さんの独特の世界観で、特別なことは何も起きないけれど、ちょっとしたことが「それも人生」と思える作品だと思いました。脚本を読んで「ぜひやらせていただきたいです」と即答しました。
――役作りについて教えてください。
とにかく言葉が難しかったので、撮影に入る前から何度も方言指導のテープを聞いていました。普段はここまで全部覚えることはないのですが、今回は、初めてと言っていいほど、しっかりと叩き込んでから撮影に入りました。また、セットや衣装もとても助けになりました。
――三宅唱監督との仕事はいかがでしたか。
三宅監督の演出は無駄がなくて、とてもシンプルです。かといって決め付けるのではなく、現場で一度芝居を見て、動きも見る。「不思議な世界」だけど「非現実的」ではない、とても現実的な表現でこの作品を捉えられている気がします。「こんなことは初めてなんですけど」と監督はおっしゃっていましたが、一度リテイクしたシーンがあるのですが、それでかなりそぎ落とされたんです。リテイクって面倒な作業ですが、監督の機転の利かせ方や流れの変え方を見ることができて、すごく面白かったです。
――シム・ウンギョンさんの印象をお聞かせください。
日本語ができる韓国人の役ですから、彼女らしさが存分に出ているのではないかと思いました。撮影の間も、いつも楽しそうで、明るい方ですね。
――どのような作品になると思いますか?
別なことは何も起きない、その土地で生きる人、不器用に生きる人の物語です。高級店ではなくて、おじいちゃんとおばあちゃんがやっている町中華のほうが安心するような感覚。妙に落ち着けて、クスっと笑えるような、そういう作品になると思います。
■三宅唱(監督)
つげ義春さん、つげ正助さんに心より感謝申しあげます。ここ数年、家でも旅先でもマンガや紀行文をくりかえし読んできました。畏怖すら覚えるほど面白く、逃げ出したくなる日もありましたが、編集中のいま、とことん新しい映画が生まれそうだという感触があります。
シム・ウンギョンさん、堤真一さん、各部署の仕事は驚くほど純度の高いものです。ぜひ大きなスクリーンで堪能していただきたい。ぞわぞわしながらお待ちください。