限定公開( 1 )
セブン-イレブンが店頭コーヒーサービス「セブンカフェ」を導入してから久しい。セブンカフェは2013年1月に展開を開始し、同年9月に全店への導入を完了。同様のサービスは2011年開始のローソン、翌2012年開始のファミマが先手を打っていたが、セブンは導入の速さで差を付けた。
【画像】へ〜、これがセブンの紅茶なんだ。価格、見た目、独自の紅茶マシンを見る(計3枚)
今般、セブンは新たに紅茶を販売する「セブンカフェ ティー」を本格的に展開する方針だ。2027年2月までに1万店舗への導入を目指す。女性や若年層の間で紅茶人気が続く昨今、新たな需要を呼び込む狙いがあるのだろう。セブンカフェ ティーの可能性を分析していく。
●茶葉は3種類、アイスティーも提供
カップを購入し、レジ横のマシンにセットして飲み物を注ぐセブンカフェではホット/アイスコーヒーの他、キリマンジャロブレンド、カフェラテなどを提供している。導入当初、レギュラーサイズのコーヒーは100円(現在は120円)。「100円で本格的なコーヒーを楽しめる」と話題になった。
|
|
スターバックスやドトールといったカフェチェーンと比較して、圧倒的に安い点が消費者に受けたのだ。とはいえセブンカフェ導入後も大手カフェチェーンの店舗数は増えている。他の市場とバッティングしたわけではなく、新たな需要を創出した成功事例といえる。
セブンは新たに紅茶の提供を進めようとしている。セブンカフェ ティーという名称で、2月末時点では埼玉県を中心とした約90のテスト店舗で展開する。Rサイズの「ホットティー」はコーヒーと同じく120円、Lサイズは180円だ。
アイスティーもあり、ミルクティーもアイスとホットの両方を提供する。茶葉はアールグレイ、アッサムブレンド、ダージリンブレンドの3種類から選べる(ミルクティーは前者2つ)。
●「ジャンピング」方式を採用
カフェで飲む温かい紅茶は、ティーバッグ付きで提供するのが一般的だ。ファミリーマートも都心部の店舗「ファミマ!!」で紅茶を提供しており、ティーバッグを使った方式である。一方、セブンカフェ ティーでは、マシン内で茶葉を「ジャンピング」させて成分を抽出し、液体のみを容器に入れる方式を採る。
|
|
ゆっくり飲む場合は気にならないが、コンビニで買うような場面でティーバッグは邪魔な存在といえる。頃合いを見て取り出したくても、一旦置いておく場所に困りそうだ。ティーバッグなしにしたのは、利便性の面で正解といえる。
セブンカフェ ティーは2026年2月末までに2000店舗、2027年2月末までに1万店舗への導入を目指す。現在提供しているテスト店舗では、レジ横のベーカリー商品「セブンカフェ ベーカリー」との相性も検証する方針だ。
店舗のオーブンで焼くセブンカフェ ベーカリーは、メロンパンやクロワッサンなどが定番商品だ。2025年3月末までに3000店舗への導入を目標に掲げていた。セブンカフェ ティーのテスト店舗では明太フランスやピザなども提供し、ベーカリー商品のラインアップが充実しているのが特徴だ。
過去、セブンは2014年にドーナツの店頭販売を開始し、2017年に撤退したが、2024年から「お店で揚げたドーナツ」を再投入している。紅茶との相性が良ければ、ベーカリーやドーナツ製品の提供店舗がさらに増えるかもしれない。
●タリーズ、スタバも紅茶を強化し始めた
|
|
セブンカフェ ティーは女性客や若年層の集客を狙った施策であると考えられる。2020年にLINEリサーチが実施した調査では、男性のうち「紅茶派」が2割にとどまった一方、女性は4割だった。また、男女ともに年齢が若いほど紅茶派が多い傾向にあり、女性の10〜20代では紅茶派がコーヒー派を上回っている。
3月にセブンが実施した商品政策説明会で、羽石奈緒執行役員は明確な男女比率を伏せつつも「都市部のテスト店において、セブンカフェ ティーを利用する女性客は多い」と発言している。
アフタヌーンティーを楽しむ「ヌン活」も若年層の女性を中心に広まり、外で紅茶を飲む習慣が定着しつつある。タリーズコーヒーは2017年に紅茶を拡充した新業態店「&TEA」をオープン。4月8日時点で36店舗を展開する。
米スターバックスも2012年に紅茶会社の「TEAVANA」を買収し、日本では同ブランドの紅茶メニューを2016年から販売している。2020年からはタリーズと同様に紅茶に特化した「STARBUCKS Tea & Cafe」を展開し始めた。
こうした紅茶人気にあやかろうとして、セブンも参入を決めたのだろう。コンビニ他社は女性客を呼び込むべく、これまで無印良品コーナーを設置したり、コスメを強化したりしてきた。一方、そもそもコンビニには限られた面積で売り上げを伸ばす難しさがある。女性客が増えた分、男性客が減ってしまっては意味がない。
その点、今回のセブンカフェ ティーはコーヒーマシンの横に設置でき、面積の占有率も小さい。他商品の売り上げや売場を減らさず、女性客など新たな客層を呼び込める。コンビニ―コーヒーに続く成功事例になる可能性が高く、セブンに続いて他社も導入するか注目が集まる。
●著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
返礼品のコメ半分に? 利用者反発(写真:ITmedia NEWS)112
返礼品のコメ半分に? 利用者反発(写真:ITmedia NEWS)112