映画『片思い世界』公開記念ティーチインに参加した坂元裕二氏 (C)ORICON NewS inc. 脚本家の坂元裕二氏(57)が13日、都内で行われた映画『片思い世界』の公開記念ティーチインイベントに参加した。
【写真】かわいい!観客向けのフォトセッションでピースサインする坂元裕二氏 冒頭のあいさつで坂元氏は「最近よく使うけどわかってない言葉の第1位がティーチイン。だから、あまりわかってないんです」と話して笑わせた。この日のイベントで、古い一軒家で一緒に暮らす美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)という主人公3人が実は死んでいた、という情報が解禁となった。
ネタバレが解禁となったことで、テーマについての質問が。「2年前か3年前に、親戚が亡くなりまして。その帰り道に、ただ思いついただけだったんです」とする。しかし、後から思えば「もしかしたら自分が子どものころに考えていたお話だったんじゃないか」という考えに行き着いたそう。子ども時代は布団の中でよく泣いてたという坂元少年。「詳しくは言えないんですけど、人が亡くなったり。大阪の祖父が建てた汚い家が台風で飛んでいってしまって。で、その後に父がそこに家を建てたんですけど、そこの居間に家族全員で暮らしていて。誰にも言えなくて。亡くなった人のことや、人は亡くなるんだ、ということを4、5歳の頃に認識して。自分じゃなくて、自分の家族やおじいちゃんやおばあちゃんや、そういう人たちは死んでしまうんだ、ということを思うと、それが受け入れられなくて、毎日布団の中で泣いてたんですよ」と理由を明かした。
幼少期に天国や地獄の図鑑を読んだそう。「主に地獄図鑑。閻魔様がいて、舌を抜かれるとか、血の池に入れられるとか、釜ゆでにされるとか。そういうこと読んでいて、それがすごく怖かったんです。それが受け入れられなくて。で、自分で考えたお話がいなくなってないんだと。ただ別の世界に行って、普通に同じように暮らしていて、ご飯も食べるし、おならもするし、すべったり、転んだりもしてるんだっていうことを、布団の中で僕はいつも考えてたんです。それを思い出して、もっともっと大昔に考えてたことだと思ったんですよ」としみじみと語った。
さらに、当時から思っていた自身の考えも。「僕はその頃から天国や地獄という概念があまり自分の中でピンと来なかったんです。結局、天国とか地獄の概念、人の死の物語は古代エジプトの3000年ぐらい前からあるんです。何かと言ったら現世において、ちゃんとしなさいよ、という秩序とか統治するために天国や地獄は存在していて。人の悲しみや亡くなった人への思いとかを癒すための物語ではなかった。古代エジプトの頃から。やっぱり死んだらどうなるとかいうのは、道徳や、人を統治し『こういう風に生きなさい』、『こういう風にあるべきだ』と強いる、統治するために常に天国や死後の世界の物語はあって。それとは違うものがあった方がいいんじゃないだろうか。そんなことが始まりですね」としていた。
本作は、映画『花束みたいな恋をした』以降、ドラマだけでなく『怪物』(第76回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞)、『クレイジークルーズ』(Netflix)、最新作『ファーストキス 1ST KISS』など、映画でも精力的に活動する脚本家・坂元裕二氏が新たに書き下ろした物語。
現代の東京の片隅、古い一軒家で一緒に暮らす美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)。仕事に行ったり学校に行ったりバイトに行ったり。家族でも同級生でもないけれど、お互いを思い合いながら他愛のないおしゃべりをして過ごす、楽しく気ままな3人だけの日々。もう12年、強い絆で結ばれているそんな彼女たちの、誰にも言えない“片思い”とは。