
何が猫にとっての「幸せ」なのだろうか。愛猫に思わぬ病が見つかると、飼い主はそう悩んでしまう。
【写真】保護された猫さん 治療薬を与えても体調不良は改善せず…多い時は週2〜3回通院したそうです
猫おばさん(けろ)さん(@keromagi)は愛猫けだまくんに心臓病が発覚したことを機に、“うちの子が望む幸せの形”を考えた。
娘さんが旅行先で見つけた子猫をお迎え
2023年9月、飼い主さんの長女さんは県外の旅行先でけだまくんと出会った。当時、子猫だったけだまくんは漁港でうずくまっており、周りにはカラスが…。命を救いたいと思った長女さんは、母親に連絡をした。
飼い主さんは写真や動画を送ってもらい、保温の仕方を指示。贈られてくる情報を確認しながら、保護の準備を進めた。
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長女さんはネットで診察してもらえる動物病院を探し、駆け込んだ。
「診察をしてくださった動物病院は使わないキャリーケースを譲ってくださり、応急処置してくださいました」
その後、けだまくんは長女さんによって電車で運ばれ、飼い主さん宅へ。すぐにかかりつけ医へ連れて行くと、軽度の低体温症であることが判明。けだまくんは、貧血や猫風邪、結膜炎、瞬膜炎なども患っていたという。
「生後2カ月〜2カ月半で、体重は450g。体にはノミやシラミがいました」
処方された治療薬を与えるも、状態は良くならず。下痢が見られ、食事量や体重が増えない日々が続いた。
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飼い主さんは獣医師の指示を受け、強制給餌を行うように。すると、3週間後、驚くべきことが…。けだまくんの便から衝撃的な数の寄生虫が出てきたのだ。
どうやら、体調不良の原因はこの寄生虫だったよう。その後、けだまくんの体調は快方へ向かっていった。
「大動脈弁狭窄」が判明!隔離生活の中で“愛猫にとっての幸せ”を考えた
だが、ホっとしたのも束の間。生後5カ月を過ぎた頃、けだまくんの体に異変が見られた。
「先住猫と遊んでいる時、呼吸が早かったんです。抱き上げると心拍数も異常なほど早くて…。ただ、平常時は心拍数が少し多いくらいだったので、差し迫っていた予防接種の時に相談をしようと思いました」
医師から告げられたのは、「大動脈弁狭窄」(※左心室と大動脈の間にある弁(大動脈弁)が狭くなって血流が悪くなる心臓病)という病名だった。根治は、現代の医学では難しい。飼い主さんは獣医師からアドバイスを受け、心臓に負担をかけないよう、けだまくんを隔離して育てることにした。
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ところが、けだまくんは隔離生活の中で孤独を感じるようになっていく。部屋から出たがったり、飼い主さんが部屋を出ていく時には寂しそうな素振りを見せたりするようになったのだ。
それでも飼い主さんは「生きてもらうため」と、心を鬼にして隔離生活を続けたが、けだまくんはストレスから状態が安定しなくなり、食欲も低下。そんな姿を見た母から「可哀想」と言われたことを機に、改めてけだまくんの幸せを考えるようになった。
「悩んで出した答えは、“けだまに合った幸せを叶えて幸せにしてあげたい“でした。お部屋から出て先住猫と遊びたい気持ちを尊重し、病院と相談をして隔離は夜寝る時だけにしました」
すると、けだまくんの表情はイキイキとし始めたそう。飼い主さんはその変化を嬉しく思い、自分にできる見守り方を見出した。例えば、同居猫との遊びが激しくなった時にはストップをかけたり、落ち着くまで隔離をしたりし、心臓にかかる負担を減らしている。
また、月1回の定期健診や毎日の投薬も忘れない。
「朝晩の薬は大好きな『とろリッチ』に混ぜてあげるので、本ニャンはお薬という名のおやつを心待ちにしています(笑)」
娘さんに見せた“優しい気遣い”に涙…
同居猫と遊ぶのが好きなけだまくんは、人家族のことも大好き。ニャンとも感動するのが、次女さんが骨折をした時のエピソードだ。
松葉杖を警戒する猫たちをよそに、けだまくんだけは次女さんから離れず。いつもなら起きないのに次女さんが夜中にトイレへ行こうとすると部屋からダッシュし、先導。ドアの前でトイレ待ちをし、次女さんがベッドで横になったのを見届けてから自分の部屋に戻っていった。
「次女は『けだまは優しいね』と嬉しそうにしていましたし、私もけだまの優しさを改めて感じた出来事でした。ちなみに、足が治ったら付き添いはなくなりました」
けだまくんには、胃腸障害や左目の結膜の腫れという後遺症がある。決まったもの以外を食べると下痢をし、左目は腫れたり目やにが出たりするのだ。そうした事情も全て受け止め、家族はけだまくんを愛す。
「心臓病が発覚して獣医師から『長くても平均寿命の半分と思ってください』と言われた時はショックでしたが、限りある時間だからこそ、この子にとっての幸せは何か?を、より考えて行動できるようになりました」
手足が長いのに肝心な時、ジャンプに失敗する鈍くささがかわいい。先住猫の前では素直に甘えられない不器用なところが愛らしい。そう話す飼い主さんはこれからも、深い猫愛でけだまくんを包み込んでいく。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)