
映画『港のひかり』が11月14日に公開される。
同作は、『余命10年』『ヤクザと家族 The Family』などの藤井道人監督と『八甲田山』『駅 STATION』『鉄道員(ぽっぽや)』などの撮影や『劔岳 点の記』などの監督作でも知られ、2020年に文化功労者として選出されたキャメラマン木村大作が初タッグを組んだ作品。北陸の港町を舞台に、元ヤクザで漁師の「おじさん」と、両親を事故で失い、視力を失ってしまった少年・幸太との十数年間の友情を描く。2023年10月〜12月に能登半島、富山で全編フィルム撮影された。クランクアップ直後に起こった能登半島地震の影響により、海が隆起してしまい入船することが難しくなってしまった大沢漁港や、焼失してしまった輪島の観光名所・朝市通りなども映し出されるという。
主演は、『ヤクザと家族 The Family』以来、藤井監督と2度目のタッグとなる舘ひろし。藤井監督との映画をもう1本撮りたいと熱望していた舘は、今回企画から作品に参加し、監督と脚本の内容について何度も打合せを重ね、「無償で自らの人生をささげる愚直な男という故・渡哲也の面影を宿すような男を演じたい」と直談判したという。
幸太役を演じるのは、寺島しのぶの息子で映画初出演となる尾上眞秀。
【舘ひろしのコメント】
2021年公開の映画「ヤクザと家族」の撮影が終わった時、藤井監督と「必ずもう一度ご一緒したいです」と約束しておりました。その後、東映さん、スターサンズの河村プロデューサー、藤井監督とともに、約3年間にわたり企画について議論を重ねてきました。
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“強い男”とは何かを考えたとき、石原裕次郎さんや渡哲也さんの生き様が頭をよぎりました。
本作は、日本映画界を代表するキャメラマン・木村大作さんが、35mmフィルムに地震前の能登半島の美しい自然を、役者の心情と共に見事に焼き付けてくださいました。また、地元の皆様の多大なるご協力をいただきながら完成した作品です。現在、能登半島は復興の途上にあり、大変な状況が続いておりますが、本作を通じて少しでも恩返しができればと願っております。
大スクリーンでこそ味わうべき、一見の価値がある映画です。きっと映画史に残る感動作だと自負しております。ぜひ劇場でご覧ください。
【尾上眞秀のコメント】
港のひかりの撮影で一ヶ月くらい能登にいました。僕にとって初めての映画だったので張り切ってやりました。幸太は孤独で目が不自由な役だったので、撮影前に盲学校に行かせてもらったり色々準備をしました。お芝居の中で特に難しかったのは涙を流すシーンでした。
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藤井監督や藤井組のスタッフの皆さんにもとてもよくしていただきました。
撮影中寒かった時はみんなであったかくしてくださったりして、嬉しかったです。
撮影最後の日は本当に皆さんと別れたくありませんでした。
キャメラマンの木村大作さんは怖い方なのかなと思っていましたが、すごく優しかったです。
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【藤井道人監督のコメント】
2022年に急逝した河村光庸プロデューサーの企画である『港のひかり』は、自分の人生においてもとても意味のある作品になりました。『自己犠牲』をテーマに描かれる本作は、『ヤクザと家族 The Family』以来、常に気をかけてくださっていた舘ひろしさんを主演に迎え、北陸・能登半島の美しい景色と地元の皆さまのお力で完成した日本映画です。
そして木村大作さんとの共同作業も、発見と勉強の連続で、沢山の偉大な背中を見せていただきました。ロケーションへの敬意、撮影現場での情熱、そして何より映画への愛。そのすべてが、デジタルによって便利に、そして簡易になった現代へのメッセージともとれる大作さんの哲学を感じました。35mmフィルムでの撮影、モニターのない撮影現場のスタッフ、キャストの集中力は凄まじく、「先輩たちは、この集中力の中で映画を作っていたのか」と圧倒されました。
大作さんはじめ、美術の原田満生さん、音楽の岩代太郎さんなど、日本映画を代表する先輩方と若輩者の藤井組が一つの集合体となり、『港のひかり』を作れたこと、誇りに思います。
そして、何より主演の舘ひろしさんが現場の中心に立って下さり『監督、楽しんでますか?』といつも優しく声をかけてくれたことが、毎日の心の支えでした。
日本映画界の未来といっても過言ではない尾上眞秀くんも、素晴らしい演技でスクリーンを彩ってくれています。本作公開まで是非楽しみにしていてください。
そして撮影地でもある、北陸地方の皆さまの一日でも早い復興を、心より願っています。
【木村大作のコメント】
映画100年の歴史の中で名作と言われる作品も、実は過去の作品の模倣の連続であり、その模倣を超えてオリジナリティを生み出している。この作品のショートプロットを読んだとき、これは他人への自己犠牲の物語であり、今までにない新しい映画ができると思った。
キャメラマンとして「映画を撮る」のではなく、「映画を作る」というスタイルを貫き通してきた私は、「この作品は、元ヤクザの漁師が盲目の少年のために自らを犠牲にして光を与える、という限りなく非日常の物語。だからリアリティではなく、叙事として作りたい」という意志を藤井監督に伝え、その意志をベースに、能登半島・富山の素晴らしい場所にこだわって撮影を行った。そこに立つ舘ひろしは、誰かのために生きる男を情感たっぷりに演じ、自分がこの人を一番表現できる位置にキャメラを据えた。
そして、本作の少年役はとても重要だと思っていて、尾上眞秀は映画初出演とは思えない、自然体で豊かな感情表現を見せてくれた。撮影・編集を終え完成した今、キャメラマンとしてこの映画のために全てを懸けた自負がある。