増上寺=東京都港区 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の執行委員会は17日、世界的に重要な資料の保存などを目的とする「世界の記憶」に「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書(そうしょ)」を登録した。日本では9件目。2023年以来2度目の審議で認められた。
政府が叢書と共に推薦し、被爆80年を迎える今年の登録を目指していた「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」は見送られた。
叢書は12〜13世紀に中国と朝鮮半島で刷られた経典約1万2000点。江戸幕府初代将軍、徳川家康が収集し、浄土宗の大本山である増上寺(東京都港区)に寄進した。
仏教学の基盤形成に貢献したほか、歴史学や言語学など多分野で重要な役割を果たしている。15世紀以前の経典がほぼ完全な状態で残っているのは世界的にも珍しいといい、法人としての浄土宗と増上寺が登録を申請した。
一方、広島原爆の視覚的資料は、原爆が投下された45年8月6日〜12月末、広島市などで報道カメラマンや市民らが撮影した写真1532点と動画2点。中国新聞社が他の報道機関や広島市に呼び掛け、共同申請していた。

増上寺所蔵の三種の仏教聖典叢書(そうしょ)の一部(浄土宗・増上寺提供)

「広島原爆の視覚的資料」のうち、松重美人氏が撮影した被爆当日の広島市民の惨状(中国新聞社所有、日本写真保存センター保管)