
昨年1月の能登半島地震で被災し、大きな被害を受けた石川県七尾市の寺の住職が、東本願寺(真宗大谷派本山、京都市下京区)から福井県北部まで1週間かけて約240キロを歩く伝統行事に加わっている。「平生になすべきことを平生になすが、平生ならざることなり」。住職は道中で「常日頃から備えることを意識する大切さ」を伝えるつもりだ。
安泉寺住職の國分大慶さん(61)。昨年元日の地震では客殿と呼ばれる建物が倒壊し、2007年の地震で損傷し修復を終えたばかりの山門が損壊するなど大きな被害が出た。現在は本堂を立ち入り禁止にし、阿弥陀如来を座敷の床の間に移してお勤めを行っている。
伝統行事は「蓮如上人御影道中」と呼ばれる。北陸で布教した本願寺中興の祖・蓮如(1415〜99年)をしのび、蓮如の肖像画「御影」を携え、東本願寺から布教拠点だった福井県あわら市までを往復する。京都から滋賀県湖西地方を通り福井県までの「御下向」、福井県から滋賀県湖東地方を通る「御上洛」がある。國分さんは2018年以来、2度目の「御下向」に臨む。
昨年、御下向に同行する僧侶「随行教導」の打診があった。2018年では足を痛め、十分に歩けなかった区間もあることから再度、挑むことにした。國分さんは携帯電話の歩数計アプリを使用しながら、長距離を歩く訓練を重ねた。
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道中では各地の寺や門徒宅に立ち寄り、「随行教導」は法話や勤行を行う。國分さんは「能登半島地震のことも語っていこうと思っています」と話す。
自身の寺の瓦は、数年前に吹き替えた部分の損傷は少なかったが、しばらく手入れしていなかったところは広範囲に落下した。寺の建物でも補強できていなかった部分は傷みが大きかった。
御影道中は23日に福井県あわら市の真宗大谷派吉崎別院に到着する予定。
「日常の生活に追われて、心を向けることができていなかった箇所はあっという間に壊れました。平生の手入れをおろそかにしてはいけないと改めて感じます」と地震での教訓を語る。
「普段の生活の中から心を向けるべきなのは、防災も宗教も平和も同じです。立ち寄り先のお寺に来た方にはこうした大切さを語っていきたいです」と話す。
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(まいどなニュース/京都新聞・浅井 佳穂)