今回改めて取材に応じてくださった絵美さん(仮名) こんにちは。これまで3000人以上の男女の相談に乗ってきた、恋愛・婚活コンサルタントの菊乃です。髪もボサボサで化粧もしない“完全なる非モテ”から脱出した経験を活かし、多くの方々の「もったいない」をご指摘してきました。誰も言ってくれない「恋愛に役立つリアルな情報」をお伝えします。
数年前に婚活の相談にいらっしゃった絵美さん(仮名・関東在住)。現在は30代後半で、結婚してお子さんもいる彼女は、結婚に最も効果があった経験は「一人暮らし」だと語ります。
絵美さんは長年、母親にコントロールされてきました。ですがそのことに気が付いたのは大人になってからでした。
「公務員になれ」「結婚するなら公務員」という過剰な“公務員信仰”の母親の呪いと、絵美さんがそんな母親から逃れて自分の居場所を手に入れるまでを取材しました。
◆公務員が立派で、販売・サービス業は格下という偏見
絵美さんの母親は、定年まで公立の保育園に勤務していた地方公務員です。そのためなのか、公務員が立派な仕事だと思い込み、小売業などの販売やサービス業を格下に見ていました。
絵美さんは以前、書店でアルバイトをしていました。ある日バイト先にやってきた近所の人が、母親に「絵美ちゃんは駅前の本屋で働いているのね」と言ってしまいます。その夜、家で絵美さんは「販売なんてみっともない」「お母さんは恥ずかしかった」と詰められました。
その後も母親の偏見は絵美さんを苦しめ続けます。就職活動の際、絵美さんは美容・出版・WEB業界などに興味があったのですが、母親から一般企業を受けることは反対され、公務員採用試験しか受けられませんでした。
正規公務員には不採用でしたが、市役所の臨時職員として採用され、非正規公務員として働き始めました。書店でのアルバイトは責めてきたのに、非正規であっても「公務員」ということに母親は満足そうでした。絵美さんには2歳年下の妹がいますが、妹は母親の期待通りに公務員になりました。
◆「不良みたいな服はやめろ!」「下品」娘の服装を否定
母親は服の好みもうるさく、昭和の女子大生のような紺色プリーツスカートなど、お嬢様風の服を押し付けてきました。10代の頃、パンク系のファッションに憧れてごつめの服や迷彩柄のメンズライクな服を購入した際、「そんな不良みたいな服はやめろ!」と怒られました。母親はその服のセンスが絵美さんの友人の影響だと思い込み、「友達を選べ」とも言いました。
痩せている絵美さんはマーメイドスカートやボディラインが出る服も好きでよく着ていましたが、それらも「下品」「いい年してみっともない」「無駄遣い」と言われました。否定されることが日常になっていたといいます。
成人後も、絵美さんの門限は日没頃でした。友達から「小学生みたい」と突っ込まれた際、やっと自分の親が異常だと感じたそうです。
◆母親からの電話のせいで彼氏も逃げ出す
学生時代、絵美さんに初めての彼氏ができました。ある日ドライブデートに誘われ楽しんでいた途中、携帯電話を確認するとそこには母親からの着信履歴が何件も。
仕方がなく電話に出ると、「夕飯の時間だから早く帰ってきて手伝え」と言われました。彼氏はその内容にドン引き。その彼とは別れることになります。
次に彼氏ができた時は、母親に邪魔されないように念入りに裏工作をするようになりました。旅行に行く際は、誰と行くのか名前と連絡先を事前に伝えなければならず、彼氏と旅行に行くとは言えず、友達の連絡先を伝えて口裏を合わせてもらうようお願いすることもしばしばでした。
そんなある日、妹が職場でできた公務員の彼氏と結婚することになりました。
◆娘を勝手に結婚相談所に入会させ、面談でもやりたい放題
絵美さんが20代後半のころ、母親は勝手に結婚相談所の面談を申し込みます。絵美さんは仕方なく母親と二人で結婚相談所に行くことに。担当者から希望条件を聞かれると、母親は絵美さんを遮って「公務員で」と即答したそうです。
仲人が警察官の会員を薦めてきましたが、母親は「その人は長男なの?」と確認したりやりたい放題。母親が入会手続きを済ませましたが、絵美さんはその後結婚相談所にいくことはありませんでした。
30代になっても母親の過干渉は止まらず、やることをことごとく反対された絵美さん。このままでは親に人生を台無しにされると思い、一人暮らしを計画し始めました。
親に相談すれば絶対に反対されることは分かっていたので同僚に相談したところ、「親に許可を取るようなことでもないし、あなたなら大丈夫よ! 自立したいという気持ちが素敵」と言ってもらえたことで、踏み出す勇気が出たそうです。
絵美さんが母親の長年の支配に慣れてしまい、社会人なのに「親の承認が必要」という思い込みに縛られていた様子がうかがえます。
◆30代の一人暮らしに「まさかのコメント」
ひそかに物件を調べて契約し、自分の車で荷物を運び込み、家電を揃えて一人暮らしができる状態になってから、親に「一人暮らしをするから」と報告しました。
30代での一人暮らしにもかかわらず、母親は「家出娘」と罵り、「そんな不良娘は結婚できなくなる」と根拠に乏しい理由で猛反対してきました。
一人暮らしを始めてからは、帰宅時間を詮索されることもなくなり自由になりました。絵美さんは転職をして、自らマッチングアプリに登録して婚活を始めました。その後、のちに結婚前提で交際することになる年下の男性と出会います。彼はメーカー勤務の一人っ子。母親が納得しなさそうな相手です。
彼氏から「親が絵美ちゃんに会いたいって言ってる」と言われたため、先に彼の実家へ。彼の両親と仲良くなることができて嬉しかったといいます。
その後「結婚したい人がいる」と電話で母親に伝えた際には、真っ先に「公務員なの?」と返ってきました。次に「長男じゃないわよね」と確認されましたが、「一人っ子長男だよ」と言うとがっかりされたものの、彼氏と会ってもらう約束を取り付けました。
◆話し合いが不可能な母親に、結婚を認めさせた義母
彼氏を絵美さんの実家に連れて行く際、彼氏の両親にも同行してもらいました。彼氏のお母さんが「絵美さんにはぜひうちにお嫁に来てほしいの。これからも末永くお付き合いさせてください」と、まるで昭和の結納のように言いました。それが効果的だったのか、外面を気にする母親は折れて、結婚に合意してくれました。
旦那さんとの出会いはマッチングアプリでしたが、そのことも母親が知れば「出会い系だ」と反対されそうなので、婚姻届を提出するまで言わなかったそうです。
絵美さんは現在、結婚してお子さんも生まれ、平和な家庭を築いています。今もアポなしで母親が孫に会いに突撃訪問してくるのには困っているものの、適当にかわしながら付き合っています。
◆産後、母親の“ひと言”で発狂しそうに
「出産後、退院してから母が産後サポートの名目でうちにきてくれたことがあったんです。でも私が授乳がうまくいかず苦戦していた時に『下手くそ』『それじゃダメ』『この子の気持ちをもっと考えろ』と言われて、発狂しそうになりました。これならワンオペ育児の方がまだマシ」
絵美さんの気持ちをさんざん踏みにじってきたのに「この子の気持ちを考えろ」だなんて、この母親に、自分が毒親だという自覚はないようです。他にも沐浴など赤ちゃんの反応が見られる楽しい育児ばかりやりたがり、それ以外のことや雑用は一切しないのだとか。
干渉や束縛が激しすぎる親に対して、まともな話し合いや理解を求めるのは無駄かもしれません。ドキッとした方は、親との距離を見つめ直すことをお勧めします。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
<取材・文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt