写真はイメージです―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。村野氏は「人も企業も栄枯盛衰があり、いつかは繁栄が終わる」と言います。栄枯盛衰を乗り越えるための方法について聞きました。
◆企業も人もいつかは滅ぶ、栄枯盛衰を乗り越えるための方法とは?
企業にも人にも栄枯盛衰があります。平家物語の一節には「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。驕れる人も久からず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者も遂にはほろびぬ、偏に風の前の塵におなじ」とあり、いつかはみな滅ぶと指摘しています。
栄枯盛衰について「驕っていると転落する」と解釈している人も多いかと思いますが……。私は違う解釈をしています。実は世の中は、そもそも「栄えた人、企業は転落する仕組み」で回っていると思っています。
例えば、市場で大きなシェアを取っているA社とそれを追いかける同業のB社があったとしましょう。
そもそも市場でシェアを取っているA社は新しい技術を用いて新しいことをする必要はありません。むしろ、新しいことをすると一時的に既存の顧客に対しても変化を強いることになり、マーケットシェアをみすみす明け渡してしまいます。自分からマーケットを明け渡すことはありませんから、新しいことをするインセンティブは働きにくいでしょう。
一方でマーケットシェアが低いB社は失うものがA社に比べて少ない状態なので、新しいことを行っていくインセンティブはA社のそれよりは働くでしょう。そもそも新しいなにかを起こしてマーケットに波風を立てないことには、自分たちがジリ貧になってしまうかもしれません。
もちろん新しいことに取り組むことにはリスクが発生し、失敗するかもしれません。しかしチャレンジしない限り、イノベーションは起きないのです。もしその新しいことがうまくいった場合、A社の伸びよりB社の伸びのほうが大きくなり、結果としてA社とB社のマーケットシェアが逆転していくことに繋がっていくのです。
◆企業の栄枯盛衰から人はどう動くべきか?
ビジネスの世界を見れば一目瞭然でしょう。80年代〜90年代に白物家電で圧倒的なシェアを誇っていたパナソニック、ソニー、日立、東芝などはもはや家電の企業ではなくなっています。三洋電機に至ってはブランド自体が無くなりました。
携帯電話も同じく、2000年代はNEC、SHARP、京セラ、富士通などのメーカーがこぞってガラケーを出し、しのぎを削っていましたが……。iPhoneの上陸でスマホに取って代わられていきました。
そもそも、企業のなかで働く人も30年前後くらいのサイクルで入れ替わっていきます。その意味では安泰な企業はありません。経営学者のクレイトン・クリステンセンは、大企業が既存事業のカニバリゼーションを恐れて新興市場に参入できないことを「イノベーションのジレンマ」としても指摘していたりします。
このイノベーションのジレンマを乗り越えようとしている企業もあります。例えば、接着剤や研磨剤などで有名な3M。文房具用品のポストイットは付けて剥がせるのが特徴です。強力な接着剤を開発するなかで、全然くっつかない弱い接着剤ができたとき、「1回付けても剥がせる文具にしたら便利では?」という発想からポストイットが生まれました。同社は新製品を出し続けることを命題に置き「15%ルール」という制度があるそうで、上司に許可を取らずに業務の15%は別の開発やプロジェクトの時間に当てることが許されているとのこと。結果、常に毎年売れ筋の商品が変わる状況になっているのです。
◆市況の変化について、投資家が考えること
投資家も同じです。不動産投資や株式投資など一つの分野、一つの手法に集中することで結果が出てしまうと、どうしてもそこに注力してしまいがちです。しかし、仮に集中投資をして結果が出たとしても、長い人生でずっとその方法で良い結果が続く、と信じることが私にはどうしても怖くてできません。ですから私は負けない投資を目指し、不動産で一定の家賃収入があっても他のものを止めて不動産に集中するのではなく、債券や株、FXへの投資もずっと続けています。結果、どの分野においても専門家ではありませんが、どの分野でも損失を出す=負けることはありません。プラスになる=勝てるまで続けるのですから当たり前なのですが。
ちなみに、不動産の世界を見ていても栄枯盛衰が見て取れます。今から20年以上前に私が不動産投資を始める際、周囲からは「地価が下がっているので今から不動産投資は難しい」とアドバイスされました。ちなみに今は……。「地価が上がっているので今から不動産投資は難しい」と言われます(笑)。
「下がっていても上がっていても不動産投資は難しい」と言われるのですから、きっとどんな時でも不動産投資はやるべきではないのでしょう。そんな「いつでも不動産投資をやるべきではない」と考えている人からの不動産投資に対するアドバイスに「意味がある」と思えるほうが不思議です。どうせ「やめておけ」しか言われないのですから……。
さまざまなことを行うと分散ができ、新しい種まきができ、新しい人にも出会えます。そうやって、新しいコトをしっかりやっていくことで、私は栄枯盛衰の波から逃げ出していきたいと考えています。
構成/上野 智(まてい社)
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【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)