すべてを振り回すトランプの意外な影響。企業トップからは訴訟におびえる声も!?

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2025年04月21日 12:20  週プレNEWS

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相互関税の対象国の企業トップも、そして関税分の上乗せコストを払うことになる米国企業のトップも、胃が痛い日々?


あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「トランプの影響」について。

*  *  *

株式市場が不安定だ。数年前なら「株価が下がった? 関係ねえよ。金持ちザマーみろ」と思っていた中間層の多くは新NISAを始めたはずで、今回のトランプ関税による株価下落に驚愕(きょうがく)したに違いない。

私の思い出話を。「同業者とは絶対に話すなよ」。自動車メーカー勤務当時、米国出張の注意点として念押しされた。米国には日米韓欧の自動車メーカー関係者がたくさんいる。彼らとたまたま出会っても、挨拶や世間話もダメ。

理由は反トラスト法の存在。日本でいうところの独占禁止法だ。市場の透明化と自由化を促進するために、競合類似企業の接触を禁じている。米国はそれほどまでにクリーンなのだと驚いた。

その市場のなかで日韓の自動車メーカーは必死にディーラー網を築き、行政と折衝し、米国民の好みを拾い上げてシェアを拡大していった。

トランプ大統領は日本に対し、非関税障壁を撤廃し、アメ車をもっと売れるようにしろという。

もちろん日本特有の商習慣や行政認可の問題はあるだろう。しかし、米国市場での日韓メーカーの努力とおなじく、日本市場でも商品力のあるテスラは急速に広がったし、BYDなんて非関税障壁をものともせずにシェアを拡大している。それなのに、アメ車が売れない仕返しに日本車に追加関税って、米国は新興国かよ。

産業が育っていない新興国では関税政策が重要だ。

外国から競争力のある商品が入ってくるのは望ましくない。だから国内の商品を優遇し、国外の商品を高くする。高くなる分は自国民が負担することになるものの、雇用を中長期的に増やしていく。

だけどねえ。そもそも米国の失業率は4%台と低い。産業を回帰させるといっても従業員が集まらない。

たしかに米国人労働者のあいだでの金銭的な格差はひどいと思う。だけれど、それは製造業を国内回帰させて解決するような問題ではない。

だいたい米国は製造業を一度捨てた国なので、ミドルクラスの生産管理マネージャーを探すのは容易ではない。製造業といっても、現代では単に組立をする単純な仕事だけではなく、相当に高度化している。

ところで、ここからは企業の現場からの報告。意外な影響も出ている。

日本企業は3月末締めの決算が多く、6月の有価証券報告書提出まで時間がない。事業のリスクをどう書くか、次期の業績予想をどうするか、大混乱に陥っている。

あるいは、6月に大卒の新卒採用の選定活動が解禁されるが、採用人数、とくに米国むけビジネスの人員数をどう設定すべきか、まったく不透明なままだ。

また金融機関からすると、融資の判断をどうすればいいのか。さらに、下請け、孫請けの中小企業からすると賃上げには消極的にならざるを得ない。原油価格は下がっているけれど、関税問題の影響の大きさを考えればトータルではマイナスだ。

企業トップからは、善管(ぜんかん)注意義務におびえる声も聞かれる。米国大統領が当選前から関税を上げると公言していたのに、対策をしなかったから株主代表訴訟の可能性があるというのだ。そりゃ酷だよ。

それにしても、中国など各国からの輸入品が高騰する米国の経営者は大変だろうね。米国の製造業復活は期待薄だが、胃薬市場の成長は確実だ。あ、でも原薬は中国製だぜ。

このニュースに関するつぶやき

  • 株価が下がっても自分には関係ないとか言ってる人は、金融リテラシーが低いですね。株価下がれば、企業は株を保有してますから含み益が減りますし、含み損になれば業績悪化し、人員削減の構造改革しますからね。
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