「10年で店舗数が30倍」“日本式ラーメン店”が韓国で爆増したワケ。「昨年だけで約600軒オープンしました」

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2025年04月21日 16:10  日刊SPA!

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ソウルの二郎系「566ラーメン」で実際に提供された、限定煮干しラーメン
日本人から長く愛され続けられる味の一つである、ラーメン。今や、チェーン店が海外進出を果たすことも珍しくなく、今年2月には「喜多方ラーメン坂内」がドイツ・フランクフルトにヨーロッパ1号店をオープンしたことが話題となりました。
お隣・韓国では、日本で修行した店主が開業し、本場の味に挑戦するお店が増えているといいます。日本式ラーメンが独自に発展を遂げ、ラーメンオタクが発生するなど、その勢いは年々増しているそうです。

今回は、ラーメンYouTubeチャンネル“SUSURU TV”にも出演経験があり、自らも韓国でラーメンYouTuberとして活躍するobambbi(オバンピー)さんに、現地でのラーメン事情を伺いました。

◆韓国で急増する日本式ラーメン。10年で30倍に拡大

ーー韓国での日本式ラーメン店の増え方は、どれほどのものですか?

obambbiさん:本当に爆発的な増加ですよ。2011年頃はソウル全体でも約40店舗しかなかった日本式ラーメン屋は、今や約1,200店舗まで増えました。とくに最近の伸びがすごくて、2023年の約650店舗から2024年には倍近くになっています。

ーー10年ほどでそこまで店舗が増えたんですね!一体、何がきっかけだったんでしょうか?

obambbiさん:大きなきっかけは2011年〜2012年頃に一風堂や京都の豚人(ぶたんちゅ)が韓国に進出したことですね。残念ながら一風堂は2016年に撤退しましたが、そこで働いていた従業員たちが身に付けた技術を活かして独立し始めました。

それからはもう、木の枝が広がるようにラーメン屋が増えていきました。修行した人が独立して、そこでまた新しい人が修行して独立する…このサイクルがどんどん加速しています。

◆自家製麺が普及し、技術も向上している

ーーobambbiさんは2003年から2011年まで日本に滞在し、その間に日本式ラーメンにハマったそうですね。韓国に帰国された頃、現地の日本式ラーメンの味はいかがでしたか?

obambbiさん:2011年頃は、ほとんどの店が工場の既製品の材料を組み合わせた味でしたね。自家製スープのお店は何店舗かあったものの、麺をイチから作るお店はほとんどありませんでした。

それが今では韓国内で約300店舗、つまり全体の約4割が自家製麺を提供するまでになりました。

最初はどの店も日本の製麺機を使っていましたが、今は3割ほどが韓国の製麺機を使っています。日本のラーメン屋で修行した店主のお店も15店舗ほどあって、技術的にもかなり向上していると感じます。

◆「脂っこい」「塩辛い」のに…中毒性にハマる韓国人たち

ーー韓国の方々の日本式ラーメンに対する反応は、どう変わっていますか?

obambbiさん:今ほどラーメンが浸透する前は「脂っこい」「塩辛い」という反応がほとんどでしたね。

私自身も、2003年に人生で初めてラーメンを食べたときは同じ感想を持ち、もう二度と食べないと確信しました。

しかし、ラーメンには一度食べると、不思議とまた食べたくなる中毒性があるんですよね。時間が経つとなぜか食べたくなる中毒性も、ラーメンの味が受け入れられつつある理由の一つではないかと思います。

◆新宿「麺屋翔」で修業した店主が韓国で塩ラーメンを人気にした

ーー今回はobambbiさんおすすめのソウルの塩ラーメン専門店「ジャパニーズラーメン ロングシーズン」で塩ラーメンをご一緒にいただきました。店内の香りから本格的で、味も日本のラーメンそのもの…いや、日本のクオリティを超えそうな勢いでひたすら驚きました。

obambbiさん:おいしかったですね!韓国で塩ラーメンが人気になったのは、ソウルの「麺屋純」というお店がきっかけです。韓国人店主が新宿の「麺屋翔」で修行した後に開いたお店です。

韓国では“ラーメン”と聞くと豚骨ラーメンを思い浮かべる人が多く、塩や味噌など、さまざまな味があるのを知らない人もまだまだ少なくありません。

私も以前は、ラーメンはどこも同じ味だと勘違いしてました。でも、実際は麺の製法からスープの味、トッピングまで、日本式ラーメンは可能性が無限大。

お店ごとに個性があって、地域や系統によっても違う魅力がある。ラーメンにハマった韓国人には、この多様性が面白いポイントになっているかもしれません。

◆韓国のラーメントレンド最前線

ーーobambbiさん的・次に韓国で流行るラーメンを教えてください!

obambbiさん:今は「家系」と「二郎系」が流行っていますが、次は「にぼし」系ブームが来るのではないかと思っています。ソウルではすでに、有名店が数日限定でにぼしラーメンを提供し、連日にぎわいを見せています。

ーー実は、私もソウルのお店で限定のにぼしラーメンを食べたことがあるのですが、スープが濃厚でかなり再現度が高かったです!でも、物珍しさや限定という言葉につられて並ぶ人もいるのではないでしょうか。

obambbiさん:それが、味をおいしいと感じてリピートする人が多いですよ。にぼしは韓国にもありますが、日本より種類が少なめです。種類によって味や香りが変わるので、わざわざ日本から取り寄せる店主もいます。そのこだわりを求めるお客さんも多いのでは。

◆日本式ラーメンの進出にはパートナー選びが肝心

ーー日本式ラーメンの韓国進出において、課題はありますか?

obambbiさん:日本独自の食材の輸入規制や、手続きの複雑さが課題です。そのため、日本のラーメン店は韓国に進出するにあたり、韓国人パートナーと手を組む人がほとんどです。

ここでもっとも重要なのが、ラーメンに理解や愛情があるパートナーと手を組むことだと僕は考えています。パートナー選びに手こずり、事業が道半ばに終わったプロジェクトも知っています。

パートナー選びがうまくいけば、日本独自の味が今後さらに受け入れられる可能性があると思いますよ。

ーーこれからは、さらに韓国独自の日本式ラーメン文化が根づきそうですね!

obambbiさん:そうですね。韓国には、まだまだ「脂っこい」「塩辛い」味が苦手な、韓国人の味覚に寄せるラーメン店は多いです。だけど、そこから本場の日本式ラーメンの味にハマっていく可能性もあるので、そういう店があってもいいと思っています。

日本式ラーメンブームは地方都市にも広がっており、釜山や大邱で『一緒にラーメンデー』というラーメンイベントが開催されるようにもなりました。今後は、地方での日本式ラーメン市場もさらに拡大していくでしょう。

何より、もっと多くの人が日本式ラーメンを楽しめるようになってほしいです。私も、自分の好きなラーメン屋がなくならないように、これからも応援し続けたいと思います!

ーー日本文化が外国でここまで発展を遂げているとは、驚きました。日本式ラーメンが今後さらに盛り上がれば、日韓ラーメン巡りのような楽しみ方も増えそうですね!

<取材・文・撮影/松浦聡美>

【松浦聡美】
韓国のじめっとしたアングラ情報を嗅ぎ回ることに生きがいを感じるライター。新卒入社した会社を4年で辞め、コロナ禍で唯一国境が開かれていた韓国へ留学し、韓国の魅力に気づく。珍スポットやオタク文化、韓国のリアルを探るのが趣味。X:@bleu_perfume

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