アルファ線がん治療薬、素早く分析=化合物の種類と放射能、小型装置で―原子力機構と量研機構が開発

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2025年04月22日 07:31  時事通信社

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時事通信社

アルファ線がん治療薬用の小型分析システム(手前の箱形)を開発した日本原子力研究開発機構の瀬川麻里子マネジャー(中央)や量子科学技術研究開発機構の西中一朗上席研究員(左)ら=18日、東京都千代田区の原子力機構東京事務所
 日本原子力研究開発機構と量子科学技術研究開発機構は21日までに、がん治療薬用のアルファ線を放出する放射性物質を素早く、効率良く分析する小型システムを開発したと発表した。アルファ線がん治療は、発見時に既に進行して全身に転移し、手術で切除できず、抗がん剤も効かないようながんに対する切り札になると期待されている。

 このシステムは電子機器メーカー「明昌機工」(兵庫県丹波市)が「NuS―Alpha(ニュースアルファ)」として商品化し、販売を開始した。原子力機構の瀬川麻里子マネジャーは「アルファ線がん治療の実用化が加速する」と話している。

 アルファ線の実体はヘリウムの原子核で、体内では細胞数個分しか通り抜けられない。アルファ線を放出する放射性物質としては、ヨウ素に性質が似た「アスタチン211」が国内での臨床試験に使われている。がん細胞だけに集まる薬剤と組み合わせて注射などで投与すれば、高いエネルギーでがん細胞のDNAを切断して死滅させる一方、正常な組織に対する副作用は少ないと考えられている。

 ただし、アスタチン211の半減期は約7時間と短く、加速器で生成してから薬剤と組み合わせ、患者に投与するまで急がなければならない。アスタチン211を含む物質はさまざまな化合物になるため、化合物の種類や放射能を工程ごとに分析するが、現状は人手がかかり、広い作業スペースが必要だった。

 瀬川マネジャーや量研機構の西中一朗上席研究員らは、「薄層クロマトグラフィー」と呼ばれる手法で化合物ごとに分離するとともに、放出されるアルファ線だけを可視光に変換し、光の明るさをカメラで撮影して放射能の強さを測定するシステムを開発した。 
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