れんたろうさんの“窮屈な大胸筋”をベッドにして眠るギャオス君 2024年末に男児を出産した、Xユーザーののんぴさん(@sakeyakuzaneko)。現在は夫のれんたろうさん(@tarochan_cons)とともに、お子様のギャオス君(仮名)を育児中です。
そんなのんぴさんがXで発信しているのは、れんたろうさんが育児記録アプリ「ぴよログ」に執筆した文章の数々。これが、いちいちおもしろいんです。
◆育児記録なのに、文才がビシビシ伝わってくる
たとえば、2月13日に発表されたのはこんな作品でした。
14:30
「『これからママが外出する』というタイミングでご機嫌タイム終了。からのギャオス。ここからおよそ4時間、パパによるワンオペが始まる。ママの帰宅時、家の中に2つの屍が並んでいるようなことにならないように祈りたい。」
14:45
「ギャオりが収まらないのでひとまず抱きかかえようと右手でお尻、左手を頭の裏に手を回す。すると手が触れた途端にピタッと泣き止む。『こやつ…生後44日にして抱っこされる流れを学習してやがるな…』。だがしかし、こちらは親である。この先生きていくにおいて、時には『進研ゼミでやったところだ!』が、通用しない場合もあるということを教え諭す必要がある。というわけで、一度で手を引いてみる。時間にして2秒だろうか。一瞬困惑の表情を浮かべたのちにすぐさまギャオスが始まった。『通用しないのなら通用するまでやり抜くまで』。そんな心の内が聞こえてくるようだった。どうやら父親の脳筋な部分と母親の頑固な部分をともに受け継いだらしい。縦抱きであやしつつ、タイミングを見て予め腰に装着しておいた抱っこ紐にギャオスを通す。手足がほんのり暖かい。眠かったね。窮屈な大胸筋ですが、しばらく快適な夢の旅をお過ごしください」
育児記録でありながら、ルポライターの文章を読んでいるかのような臨場感! その文才が評判を呼び、フォロワーから「育児界の文豪」という称号を与えられたれんたろうさんの素性が興味深いです。
そこで、夫の育児記録をXで発表しているのんぴさんに話を聞いてみました。
◆SNSで試しに公開してみると大バズり!
――れんたろうさんの文書力には驚きました。お子様の状態を見つつ、ご自身の心境も余すことなく書いていらっしゃいます。
のんぴ:言葉選びが独特で、文章を書くのは上手だなとはずっと思っていたんです。それを本人に言っても「普通、普通」と言うので「絶対、それはない!」と思い、ぴよログを公開したらバズったので「それ、見たことか」って(笑)。
――なんで、あんなおもしろい文章が書けるのでしょうか?
のんぴ:彼は月に何万円も課金するくらい、めちゃくちゃ本を読むんです。それでボキャブラリーが身についたんじゃないかなあと、私は勝手に思っています(笑)。
――じゃあ、バズりの要素は見抜いていたわけですね。
のんぴ:バズらせようと思っていたわけじゃないんですけど、おもしろいのでバズっても不思議じゃないなとは思いました(笑)。
――もともと、「ぴよログ」はご夫婦間でやり取りを見せ合うツールですが、れんたろうさんはXなどSNSで公開するつもりでああいうおもしろい文章を書いたのでしょうか?
のんぴ:SNSに公開する気はまったくなかったと思います。私に報告するにしても普通に書いたらおもしろくないという夫の発想で、ああいう文章を書いてくれて。SNSに載せてないやつもまだまだたくさんあります。
◆いつか息子にも見せたい
――ストックはある(笑)。
のんぴ:私が厳選して、おもしろいなと思ったものを勝手に公開しているだけなので(笑)。たぶん、SNSに載せようと思って書いてるわけじゃないです。
――ただの報告だけだとちょっと味気ないから、ああいう文章に?
のんぴ:そうです。なんか、見返した後におもしろいじゃないですか?
――おもしろいですね(笑)。
のんぴ:だから自分たちのためにもなるし、息子が大きくなって「お前、どんだけ手がかかったかこれを見てみろ」と言いたいって言っていました(笑)。
◆ギャン泣きした息子を「男梅」とたとえる
――のんぴさんが特に印象に残ってる文章はありますか?
のんぴ:私がサウナに行きたくて、2人にお留守番を頼んだんですね。その間、子どもをベビーカーに乗せて買い物に行ってきたみたいなんですけど、やっぱり息子がギャン泣きしてしまって、そのとき様子を「男梅をベビーカーに乗せる」って表現していたのがおもしろかったです(笑)。
――男梅(笑)。
のんぴ:男梅っておやつあるじゃないですか。あのキャラクターの顔って想像つきますよね? 子どもがギャン泣きしてるときの顔って男梅なんですよ。真っ赤になって、顔のパーツをギュっと中央に寄せて。
――酸っぱい顔してる感じですよね(笑)。
のんぴ:そうそう。あの泣き顔を見て「男梅をベビーカーに乗せる」という表現がよく出てくるなって思います(笑)。
◆育児で余裕がないからこそ、おもしろい文章を書いている
――育児をすると子どもの成長が楽しみな一方、大変なことも多いですよね。のんぴさんは、れんたろうさんの文章を読むことで育児の大変さが薄れたり、楽しさが増幅するような感覚はありますか?
のんぴ:これを見たからラクになるということはないです。だけど、夫は私と同じ目線に立って一緒に育児してくれています。その結果があの「ぴよログ」につながっているわけだし、息子と向き合っていないとあの文章は書けないと思います。そういう意味では、文章がおもしろいからというより、夫が育児してくれているから私の気持ちもちょっとラクになるという言い方のほうが正しいです。
――育児をするなかで女性側に頼りがちになるご夫婦は多い印象ですが、れんたろうさんはどうですか?
のんぴ:もう、100点満点中120点だと思います! 期待以上のことをしてくれるし、おむつ替えとか散歩とか洗濯とかすごく率先してやってくれるし、言わなくても動いてくれるので。
――育児には非常にパワーを使いますから、こういう長文をこまめに記録しているのはすごいと思いました。こんなふうにアウトプットすることによって、れんたろうさん自身も溜まっているものを発散しているのでしょうか?
のんぴ:気力が残っているわけは絶対になくて、本当に余裕がないからこそ文章にしているんだと思います。書かないとやっていられないぐらい(笑)。で、ただ真面目に書いてもつまらないじゃないですか? 「泣き止まない」とか「吐き戻した」とか「寝てくれない」とか、そういうのはいくらでも書けるけど、そういう事実にスパイスを交えておもしろく書くというのは彼なりのフラストレーション発散の方法なのかなと思います。
――大変なことこそ、楽しく表現した方がフッと気持ちが軽くなるかもしれないですよね。
◆フォロワーさんからの反響は
――Xにアップされた画像を見るとマッチョなボディが確認できるんですが、れんたろうさんのお仕事はトレーナーさんですか?
のんぴ:全然違って、普段は某大学の職員として働いています。
――そうだったんですか。見たところ、れんたろうさんは普段からかなりハードなトレーニングをされていると思うんですけど、育児をすることでトレーニングに支障はないのでしょうか?
のんぴ:それが夫婦の中で一番話し合ったポイントです。夫は今年の夏にボディビルの大会に出るんですね。私が妊娠する前から彼はそれを宣言していて、育児を理由にその目標を諦めてほしくないと私はずっと思っていました。「育児をするから趣味をやめてよ」というのは、本当にナンセンス。だから、忙しい間でもどうしてもジムの時間だけは確保しようというのをベースに育児のスケジュールを組みました。
――その辺はお互いが助け合っているわけですね。
のんぴ:尊重し合っていると思います。お互いのやりたいことをできるように。私はサウナとかお酒を飲むのが好きなので、「飲みに行きたい」と言ったら行かせてくれるし。夫は週5ペースでジムに行っているんですけど、その時間は絶対に確保するように私も協力します。
――「ぴよログ」をXにアップするようになってから、フォロワーさんからはどんな反響が寄せられましたか?
のんぴ:「すごくいい旦那さんだね」と褒めていただけるコメントがほとんどです。
――やっぱり、女性からの反響が多い?
のんぴ:女性の反響がほとんどでした。子育て中のママが「旦那に見せて爪の垢を煎じて飲ませてあげたい」みたいな(笑)。たまに、男性から「これは見習わないとな」「こうあるべきだよな」という反響もありました。若い男性から「自分が子育てをするときは、こんなふうにしたい」というコメントもあった気がします。
◆育児記録は絶対につけたほうがいい
――非常におもしろい育児記録なので、どこかでまとめて発表したもらいたいです。たとえば、書籍化とか。
のんぴ:そんな展開があったらうれしいですよね(笑)。夫の育児記録は単純におもしろいからアップしていただけなんですけど、仲のいいフォロワーさんのなかで私が上げるポストをきっかけに「夫もぴよログを書き始めた」という人が実は結構いるんです。
だから、もしも夫の文章をまとめたものができて、それをきっかけに「育児記録をつけよう」と思う男の人が増えたら、それは素晴らしいなと思います。
――やっぱり、育児記録ってつけたほうがいいものですか?
のんぴ:絶対、つけた方がいいと思います! 夫婦間で「今日はどうだった」という会話にもなりますし。しかも、育児記録を書いてくれているだけで「育児をしてくれているんだな」というのは、一目見て妻側にもわかるので。
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楽しさと壮絶さが同時に伝わってくる、れんたろうさんの秀逸な育児記録。まさに“育児界の文豪”にふさわしい才気ですが、その裏にはお互いを尊重し合う夫婦の姿がありました。
毎日奮闘されているギャオス君の育児と、夏に出場を予定しているボディビル大会、どちらもがんばってください!
<取材・文/寺西ジャジューカ>