成宮寛貴の8年ぶり俳優復帰作として話題になり、個性的で闇深いキャラクターたちと、先の読めない衝撃的な展開で反響を呼んでいるABEMAオリジナルドラマ『死ぬほど愛して』(「ABEMA」にて毎週木曜夜11時より無料放送、Netflixでも同時配信中)。
本作は、累計発行部数1億以上突破のヒット作『金田一少年の事件簿』などで知られる天樹征丸氏の同名漫画が原作の純愛サスペンス。幸せな結婚生活の裏で巻き起こる「女性記者殺人事件」を発端に、やがて「究極の愛」と「狂気」に翻弄されていく神城真人(成宮)と澪(瀧本美織)の夫婦の物語であり、鬼才・城定秀夫監督がメガホンを握る。
今後の展開が気になる『死ぬほど愛して』について、プロデューサー・小林宙さんに番組制作の裏側を語ってもらった。
■4話で明かされた幼少期、真人を描くうえで大切にした「美学」
4話は殺人鬼である真人誕生の回です。これからの話は徐々に過去の謎が紐解かれていき、伏線も回収していきます。
|
|
特に4話は、1話とリンクするところが多くありました。震災時の真実、宮沢賢治の詩の再登場、『青い鳥』を歌っていた母親のキャラクター、妹の存在(そして、病室にいる現在の妹であろう女性の存在)。そういった事実がめくられることで、現在の怪物である真人がどうやって生まれたかの発端を垣間見ることができる回になっています。
作り手として思いがあるので、すべてのエピソードについて語りたいのですが、今回は、特に好きな伏線である『青い鳥』の歌の話を書きたいと思います。
『青い鳥』は、桜田淳子さんが1973年にリリースした歌でして、ドラマオリジナルの設定で監督が書いてきたアイデアです。真人と澪の歌声をお聞きしたい方は1話を是非見返してください。ポップで明るい曲調の歌ですが、4話までくると真人の存在が闇深くなっているので、逆に歌の明るさがいいようのない狂気をはらんだものに見えてくるかもしれません。
1話では、真人が「母が好きだった曲です」と、自殺をしようとした澪を励ますために歌っています。そして4話を見ると、母が好きだった曲であるのは事実ですが、真人にとって母親は愛すべき存在だったのかよくわからず、なので、1話での澪を励ますための『青い鳥』がポジティブな意味なのか、ネガティブな意味なのか、4話を知って1話を見ると、見え方がかなり違うのではないでしょうか。
母子家庭であり、子供たちを虐待するような恋人を家に連れ込む母親。真人にとって母親は、愛してはいたが、もっと自分を愛して欲しかった存在であり、同時に男に依存して自分たちを傷つける唾棄すべき存在でもあり、そこに今の真人の女性観や恋愛観や、殺人鬼としての狂ったポリシーの根っこがあると思って、ドラマを作っていました。監督はそのポリシーを「真人だけの美学」と表現してドラマを作っていましたが、狂いに狂ってるポリシーが、どこか「美学」に思えてしまう魅力を、真人を描く上で大切にしました。
|
|
成宮さんは演じるにあたって、そんな狂った真人を「理解できてしまうかもしれない危うさがある」と言っていました。まさに、脚本を作る時には「危うさ」を大切にしたので、演じられる成宮さんにわかってもらえて嬉しかったですし、それがどこか、禁断の果実のような魅力的な意味合いで、視聴者の方々にもきちんと伝わっていけばいいなと思っています。
4話には、少年の真人が妹の茜に「死んじゃうなんて簡単に言っちゃダメだ」と言うセリフがあるのですが、殺人鬼である真人が幼少時は優しく妹思いであったことが垣間見え、何気ないセリフですが、私はいつもそこを見ると感慨深くなってしまいます。もしこの少年が幸せな家庭で、幸せな境遇で生きていたら、優しい大人になったのかもしれないと考えてしまいます。数奇な運命に翻弄される真人の悲哀が「危うさ」の根源なんだと思います。
また、真人の少年時代の名前が俊紀であることが4話でわかりますが、なぜ名前が変わっているのか、それが5話での鍵になるので、その謎を楽しんでいただけると嬉しいです。
■フィクションにリアリティを持たせるのが、天才的にうまい城定監督
今回初めて城定秀夫監督とドラマ作りをご一緒させていただき、非常に素晴らしい監督だと率直に思いました。
|
|
脚本も書いてくださっていることもあるのですが、台本における演出の狙いが明確で、台本を読んだだけでも絵が想像でき、十分監督の意図が伝わりました。各キャラクターに裏表があるので、演じるのがとても難しいのですが、監督は現場で役者に長々と芝居などの演出や指示をしている印象はありませんでした。それでも、あがってきた映像を繋ぐと、しっかりと各俳優が、難しい各キャラクターを活き活きと演じていて、皆さん、それぞれにそれぞれの狂気があり、ドラマが目指す世界観とぴったりだと思いました。
一見過激に見えるシーンでも、無駄にエロやグロを目指しているわけではなく、監督と脚本家と精査して、映像として必要な部分を置いているので、キャスト、スタッフが、同じ方向で作品に向き合えたと思っています。
そういった中で、過去に私も色々な監督とお仕事をしてきましたが、城定監督はフィクションにリアリティを持たせるのが天才的にうまいなと感じています。『死ぬほど愛して』には、突拍子のない設定やキャラクターがたくさん出てきますが、あがったものを見てみて、「もしかしたら本当にこういうことあるんじゃないか?」「こういう人っているんじゃないかな?」って思えることがたくさんありましたし、そこのリアリティに説得力があるので、ずっと見ていられました。
原作の天樹征丸さんには「みんな芝居がうまい。子役でさえうまい」と感想をいただいたのですが、もちろん役者の力もあるのですが、個人的には監督の稀有な能力によるところもかなり大きいと感じています。監督パワーでお芝居が上振れする感じです。大人の方は、過去の城定監督の作品も是非ご覧ください。エロがほとんどじゃないかと思われるかもですが、いい意味での狂気性を楽しめると思います。
ただ、私は何度考えても、技術的・物理的に、監督がなんでそんなにリアルっぽくお芝居を上手に切り取れるのかがわからなくて、監督の細かいセンスや努力の積み重ねがなせる技なんだなと、羨望の気持ちです。
私がこの業界に入った時、「監督ってカッケー。自分も監督やりたい」と思い、すぐに挫折したはるか昔のことを思い出しました。もし城定監督のテクニックが理解できたら、私もこれから監督を目指したいですが、多分無理です。単純にすごいです。尊敬します、城定監督。
■5話の見どころは「ただのヤバいやつ」真人の行方
4話に引き続き、殺人鬼・真人の過去がめくられる回になります。そして真人には、初めてアクションシーンがあり、俳優・成宮さんにとっても久しぶりのアクションになっています。
その5話のアクションで私が一番好きなのは、ボトルで人の頭を殴るところです。1話で配達員を蹴って、ネットでは「成宮キック」と話題になっていましたが、バイオレンスの雰囲気が似ています。無表情で躊躇なく真人がバイオレンスをしていて、まさに「成宮寛貴ここにあり」って感じました。静かな雰囲気の中でも狂気を演じられるお芝居もいつものことながら必見ですし、久々のアクションなのにクオリティーが非常に高いです。
そして物語的には、そんな無表情の真人の心が、本当はどこにあるのかが徐々にわかっていくので、「ただのヤバいやつじゃん」から視聴者の皆さんも変わっていくと思います。
真人の悲哀を早くも感じとってもらえるのか、それかもしかして「もっとヤバいやつじゃん、真人」に加速方向に変化したとしても、それはそれで作り手としては嬉しいです。何はともあれ、ヤバい物語に是非ご期待ください。
動画・画像が表示されない場合はこちら
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 Kobunsha Co., Ltd. All Rights Reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
GACKT「1人暮らし」投稿に賛否(写真:ORICON NEWS)211
GACKT「1人暮らし」投稿に賛否(写真:ORICON NEWS)211