
【写真】吉岡里帆はうっとりするほど美しい肩出しドレス姿で 撮り下ろしショット(ほか10枚)
■新潟の撮影は大変だった
――シーズン1の撮影前には1ヵ月ほどリハーサルを行ったそうですね。大悟と有希の出会いや告白するシーンなどをエチュード(即興演劇)的に行ったと伺いました。
吉岡里帆(以下、吉岡):自分で言うのもなんですが、めちゃくちゃかわいい家族だなと思いました(笑)。
柳楽優弥(以下、柳楽):確かに(笑)。
吉岡:「こういうシチュエーションだったらどうする?」というお題に対する中身を自分たちで考えていく形式で、大悟が初めて有希に告白するシーンなども恥ずかしがりながら自分たちで考えて、それをご覧になった片山慎三監督が「なるほど」「いいですね」と反応してくれて――。ましろ役の志水心音ちゃんはひょっとしたらエチュード自体初めてだったかもしれませんが、緊張しながらも「大人二人には負けないぞ!」と参加しているのも伝わってきました。片山さんが撮影する時にワクワクしちゃうタイプなのも分かって「きっと現場でどんどん面白いことを思いついちゃうに違いない」とその様子から想像できました。
――シーズン2の撮影前には同様のリハーサルを行ったのでしょうか。
柳楽:いえ、ありませんでした。どんなリハーサルよりもシーズン1に勝るものはありませんから、(リハーサルがないことの)不安はありませんでした。
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吉岡:シーズン1のクランクアップの時も、もしシーズン2を作れるとしたらあのシーンから続くのかと思うと、少し怖くなってしまいました。2年間も気持ちを保ち続けられるだろうか、大丈夫かなという不安は正直ありました。
柳楽:ましろ(志水)が大きくなっちゃう! という懸念もありましたしね。
吉岡:確かに(笑)。ただ、シーズン1が配信されて、私もいち観客としてすごく面白く観賞しましたし、新しい挑戦をしているチームとして皆さんにセンセーショナルに受け取っていただけたとも思います。そういったことで自信といいますか「思い詰めなくても大丈夫」という気持ちをもらえて、作品は自分たちがやってきた積み重ねでできているから、時間が経ってもあの瞬間に戻れる、と思えるようになりました。
柳楽:僕も本当にその通りだと感じます。シーズン1が本当に濃い6ヵ月間だったため、2年間ぐらいじゃ全然薄れないんだと感じましたし、シーズン1の評判が大きな自信になった状態でシーズン2の撮影に臨めました。キャストだけでなく、スタッフも追い風にしてシーズン2の撮影を乗り越えた感じがあります。
――余談ですが、シーズン1の最終話で有希は「Apple Pie」と描かれたTシャツを着ていますよね。あれはどのようにして決まったのでしょう。
吉岡:細かいところまで見てくださりありがとうございます(笑)。私も聞きたいくらいなのですが、衣装合わせのことはよく覚えています。さまざまな服を着ましたから。有希はちょっと口も悪いし、大悟と釣り合う感じにということで元ヤン要素やギャルっぽい感じを入れてみたりと色々と着ていくなかで、白のタンクトップにチェックのシャツが片山さんにビビッと来られて“正装”になっていきました。その派生で、「Apple Pie」Tシャツが選ばれたのだと思います。
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吉岡:洗濯物を干すシーンもありますが、よく見ていただくと有希のチェックのシャツがたくさん掛かっています(笑)。
柳楽:全体を通して、「本当にこういう人がいるよね」と思える雰囲気が衣装や美術から感じられるのが僕は好きでした。
吉岡:ただ、新潟の撮影は大変でしたよね。寒くて雪が降っているのに夏のシーンを撮らないといけないし、大悟に至ってはケガをしてから包帯を巻いた状態のような衣装を着ていて(笑)。
柳楽:そうでしたね(笑)。あれは寒かった。
――新潟で撮影されたトンネル内のシーンは、シーズン2第4話に登場します。大悟と有希の再会に加えて、恵介(笠松将)や岩男(吉原光夫)も集合するなど非常に重要な局面となりました。
■新幹線で移動して…驚きの撮影裏
柳楽:撮影は大変でしたが、みんなでカラオケに行ったり楽しい時間を過ごせました。吉岡さんはお忙しくて新潟に弾丸で来られていたから、カラオケには来られなかったんですよね。
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柳楽:佐野隆英監督も撮影時に勢いがありましたね。活気を感じました。
吉岡:トンネルのシーンはアクションシーンが何段階もあったため、しっかりとした絵コンテが用意されて体育館でリハーサルを行いました。絵コンテを見た時に「あ、大変だ、このシーン」と思ったことを覚えています。
柳楽:「トンネルって書いてあるけど実際はどんな感じなんだろう?」と想像がつかなくてちょっと怖かったですしね。
吉岡:実際に現場に行ったら雪が積もっていて、スタッフさんがまず雪かきをして、緑の芝生を敷き詰めて夏の空気感にして、すごいチームだなと思いました。
柳楽:リハーサルも含めて、丁寧なものづくりでしたね。
――トンネルといっても、視聴者の皆さんがパッと想像されるタイプとはまるで違いますよね。よくこんな場所が見つかったな、とロケーションに驚かされました。
柳楽:巨大な筒ですからね。隙間から絶景が見られるトンネルで、風も吹き抜けて寒かったですが、映る部分をみんなで必死に雪かきをしたりしつつ乗り切りました。
――ロケで訪れる山の数も多かったと伺いました。
柳楽:まるで同じ場所のように見えますし、見えるように工夫もされていますが、かなりの数の山でロケをしています。しかも近い距離ではなく、新幹線で3時間くらいかけて移動しているんです。視聴者の方にはぜひ知っていただきたいポイントです。
吉岡:一つの山で撮っていない分、奥深さがありますよね。
――シーズン2の第1話から、大悟と有希はそれぞれのパートで大変な目に遭いますよね。完成版をご覧になった際はどのように感じられましたか?
吉岡:大悟がさぶ(中村梅雀)と話した後の戦闘シーンが好きです(シーズン2第2〜3話)。覚醒する大悟の存在感が圧倒的ですし、何を守るために闘っているのかがはっきり見えてカッコよさに胸が熱くなりました。
柳楽:僕は、有希が乗った車にトラックが激突するシーンにびっくりしてしまいました。あれはどうやって撮ったんですか?
吉岡:グリーンバックではなく、本当に私たちが乗った車にトラックが寄って来ています。シーズン1で大悟を膝に乗せて頭をなでてあげるシーンはグリーンバックで撮りましたが、あれ以来私が出演したシーンは全部現場で実際に撮っています。
柳楽:そうだったんだ。お疲れ様でした。
吉岡:私は大悟の行動範囲の広さにびっくりしました。シーズン2は24時間に起こった出来事を描いていますが、ちょっと動き過ぎですし「どうしたらそんな危険な目に遭うの!?」というぐらい危険な目に遭い過ぎていて、見ながらツッコんでしまいました。「私とましろがこんな時に何やってんの!」「どこ行ってんの! 連絡してよ!」とどうしても有希目線で見てしまいました。
柳楽:畳の下に埋められていましたもんね。あのシーンは僕は知らなくて、完成版で見た時はびっくりしました。
吉岡:その後に大悟が電話で「お前たちを傷つけたやつは全員ぶっ殺してやるから大丈夫だ」的なセリフがあり、「そういうことじゃない!」と思っていました(笑)。
――有希は作品全体を通して大悟のブレーキといいますか、狂気に対して正気であり続けますよね。吉岡さんは演じられる際、何か特別な意識をされていたのでしょうか。
吉岡:普通じゃない人が本当にたくさん出てくるような、みんなが狂っている作品なので、「私だけは絶対に狂わないぞ」と常に意識していました。自分が狂わないことで母としての強さを見せられるんじゃないかと考えていました。みんなが歴史や暴力や殺人に狂っていくなかで、有希が見つめるものは娘のましろだけです。普通の生活を望んで供花村に来ている人なので、みんなの気狂いに負けてたまるかという気持ちでいました。
柳楽:俳優のタイプにも色々とあって、相性を加味してキャスティングされているかとは思いますが、吉岡さんとはツボも近くて夫婦役を演じる上でも信頼感がありました。だからこそ、撮影が別々の場所であっても関係値が築けていたかと思います。冒頭にエチュードの話をしましたが、事前にリハーサルや準備ができたとしても、そこに身を投じて懸けられる人同士でないとうまくいかないと思います。告白するシーンは僕たちの実体験ではありませんが、僕たちが大悟と有希として考えて行ったことで限りなく実体験に近いものになりました。あの時は恥ずかしかったですが、お互い真剣に向き合ったからこそずっと良い関係でここまで来られたと感じています。
(取材・文:SYO 写真:高野広美)
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