漫画は複数の要素を組み合わせるケースが多く、その組み合わせにギャップがあればあるほどより魅力的な作品になる。Xに3月上旬に投稿された『シスターと嘘と銃の話』は、シスターという清楚を代表するような存在と、銃という血生臭さを連想させるものが絡み合ったストーリーが繰り広げられる。
戦時中、シスターのフランツィカ(フラン)は路地裏で負傷している外国人女性・ソフィアを見かける。教会に連れて行って手当てをした後、外国人ということで防空壕にも入れさせてもらえないソフィアの身を案じて教会で暮らすことを提案。その後、ソフィアが徴兵された夫に向けて書いた手紙を渡され、フランが代わりに郵便局に届けに行くと……。
現在大学に通いながら、講義の合間に漫画制作に取り組んでいるという作者の山嶋さん(@simazuzuzu)に本作制作について話を聞いた。(望月悠木)
◼︎「シスター」と「銃」の組み合わせは緊張感は演出するため
|
|
――今回『シスターと嘘と銃の話』を制作した背景を教えてください。
山嶋:「『コミティア』の出張編集部に持ち込むための漫画を描こう」と思ったことが始まりです。大学の講義で“識字”について知り、読み書きを教える側と教わる側の関係が面白いと思い、この物語を考えました。
――シスターと負傷した女性をメインに据えた理由は?
山嶋:まず世界観は二次大戦中のドイツをモデルにしています。当時負傷者の救護を行っていたこと、迫害を受ける人々の保護を行っていたこと、かつては識字教育の担い手だったことから、シスターを起用しました。そこに負傷した外国人を組み合わせれば「文字を教える」というやり取りをドラマチックに描けると考えました。
――ちなみに「シスターと銃」という相容れない2つを組み合わせた理由は何ですか?
|
|
山嶋:“幼いシスター”という暴力からかけ離れた存在が“銃”を手に取ることで緊張感を演出できると考えたからです。あと「フランにいっぱい罪悪感を感じさせたかったから」というのもあります。
――ストーリーで言えば、「嘘は短い脚を持つ」ということわざが軸になっていますね。
山嶋:特別なこだわりはなく、図書館にあったドイツ語のことわざの本から拝借しました。ことわざを組み込むことで「嘘をついてしまったシスター」という物語を強調するために効果的だと思ったのですが、かえって混乱を招く結果になってしまい「失敗だったな」と思っています。
――ビジュアルはどう作りましたか?
山嶋:フランは幼さを強調するため、背を低くしたり前髪を作ったりしました。一方、ソフィアについては大人であること、異国人であることを強調するため、リアルに寄せたデザインにしています。
|
|
――自転車や教会など、登場人物以外の作画も印象的でした。
山嶋:常に意識しているのは映画のような構図です。特に本作では黒ベタを多用してノワール調に描いています。また、フィルム・ノワールや、ドキュメンタリー番組『映像の世紀』(NHK系)とかで流れるようなモノクロ映像を意識して、戦時中の空気感を演出しています。
――今後の漫画制作における目標など教えてください。
山嶋:目指しているのは「映画を一本見終わった時の満足感が味わえる漫画」を作ることです。周囲から“シュウカツ”や“ナイテイ”といった単語が聞こえてきて不安を感じることもありますが、潰されないように商業を目指して日々精進していきたいです。
(文・取材=望月悠木)
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 realsound.jp 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
Switch2抽選 約220万人が応募(写真:ORICON NEWS)143
Switch2抽選 約220万人が応募(写真:ORICON NEWS)143