『絶対刺さる! 愛と官能の名画』ヤスダコーシキ さくら舎 Xでフォロワー20万人超の人気アカウント「昔の芸術をつぶやくよ」。その運営者であるヤスダコーシキ氏がこのたび、書籍『絶対刺さる! 愛と官能の名画』を出版しました。同書は、美しい純愛や心ざわつく悲恋、ゲスな恋愛にいたるまで「愛」にまつわる名画を真面目に、ときにちょっぴり不真面目に解説した一冊です。
同書の魅力のひとつと言えるのが、一般的にはあまり知られていないような作品も詳しく知ることができる点です。たとえば、レオナルド・ダ・ヴィンチといえば『モナ・リザ』が有名ですが、同書で紹介されているのはダ・ヴィンチ最晩年の作とされる『洗礼者聖ヨハネ』。ヨハネはいわばキリストの先輩格にあたる人物ですが、この絵ではやたらとお色気ムンムンに描かれています。その理由について著者は「モデルに由来しているのかもしれない」と推測します。
この作品のモデルはダ・ヴィンチの弟子であるジャン・ジャコモ・カプロッティ(通称:サライ)だと言われており、「サライはとびきりの美少年で、数多の弟子の中でもダ・ヴィンチのお気に入りでした。10歳の頃からダ・ヴィンチの晩年まで彼に仕えています」(同書より)とのこと。
同書ではダ・ヴィンチ以外にも、クリムト、ゴヤ、ルノワール、モネなど有名画家の作品に触れることができます。
さまざまな愛の形として紹介したいのが、ジャン=オノレ・フラゴナールの『閂(かんぬき)』です。同作は、部屋の閂を今まさに閉める男性と、その男の腕から逃れようとする貴婦人を描いた作品。一見すると男女の自由闊達な恋愛を描いているだけに見えますが、著者は二人の関係性について、隅のテーブルにあるリンゴの存在を指摘します。「リンゴは罪の象徴ですから、貴婦人が既婚者である可能性が高い」(同書より)との情報を知ったうえで見ると、この絵画がさらにドラマ性があるものに見えてくるのではないでしょうか。
ほかにも同書では、義理の息子にのめり込む継母の許されざる恋を描いた『パイドラ』(アレクサンドル・カバネル作)や、ガチ恋した彫像が人間へと変身する奇跡の瞬間を描いた『ピュグマリオンとガラテア』(ジャン=レオン・ジェローム作)など50作品以上を収録。古今東西、世界にはこれほどさまざまな愛の形があるなんて......! 著者は「昭和の名曲風に言えば、正解は『これも愛、それも愛、たぶん愛♪』でしょう」(同書より)と綴っています。
名画と聞くとちょっと身構えてしまう......なんて人にこそ手に取っていただきたい同書。皆さんの日常に新たな知識と教養をもたらしてくれること請け合いです。
[文・鷺ノ宮やよい]
『絶対刺さる! 愛と官能の名画』
著者:ヤスダコーシキ
出版社:さくら舎
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