上海モーターショーに出展した自動車部品企業のブース=24日、中国・上海 【上海時事】出口が見えない米中貿易戦争が、両国に関連する自動車業界のサプライチェーン(供給網)にもダメージを与えている。高関税の応酬の中、米国向け部品の出荷を全面停止するメーカーが相次ぐ。昨年の自動車部品の対米輸出額は990億元(約2兆円)で、中国の自動車部品輸出全体の15%に相当。中国の自動車部品生産は世界需要の3割を占める。米中の部品メーカーを巻き込んだ混乱は継続しそうだ。
上海市で開催中の上海モーターショーには中国を含む各国の部品メーカーも出展。製品の7割が米国向けという江蘇省の車載センサーメーカーは素材などを米国から輸入し、中国で加工した製品を米国に輸出している。輸出入双方に関税が課されるため「二重の痛手」となっており、急きょマレーシアで生産する計画を進めているという。ただ、担当者は「品質の問題もあり、簡単には切り替えられない」と不安を口にした。
悪影響を受けているのは、中国で操業する米部品メーカーも同じだ。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)に納入している米部品メーカーも、中国からの出荷停止を余儀なくされた。製品に組み込む半導体は米国から輸入しており、米国以外の供給業者への切り替えを視野に入れている。この米部品メーカーの担当者は「工場を中国国外に置くことも検討しているが、資金が必要だ。トランプ米政権の『朝令暮改』には困っている」と嘆く。
一方、貿易摩擦激化を想定し、既に海外に生産を移転した中国企業も多い。上海市のモーターメーカーは「関税引き上げを予想していた」ため、米企業を買収し、米国で生産している。広東省深セン市の半導体メーカーは米国向け出荷が停止したものの、傘下に収めたブラジルの工場で対米輸出を増やす算段だ。
また、米半導体大手インテルの担当者も「中国市場向けは米国以外の工場で生産することを検討している」と明かす。
逆に、江蘇省無錫市の半導体企業には外資系メーカーからの発注が増えているという。担当者は「(半導体需要が爆発的に拡大した)コロナ禍以来の動きだ。これを機に成長を目指す」と期待を示した。