『私たちが光と想うすべて』(C) PETIT CHAOS - CHALK & CHEESE FILMS - BALDR FILM - LES FILMS FAUVES - ARTE FRANCE CINÉMA - 2024 インド映画史上初、第77回カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した新鋭女性監督パヤル・カパーリヤーによる『All We Imagine as Light』が、邦題『私たちが光と想うすべて』として7月25日(金)に日本公開が決定。本ビジュアルポスターおよび、メイン写真1点が解禁となった。
インドのムンバイで看護師をしているプラバと、年下の同僚のアヌ。2人はルームメイトとして一緒に暮らしているが、職場と自宅を往復するだけの真面目なプラバと、何事も楽しみたい陽気なアヌの間には少し心の距離があった。
プラバは親が決めた相手と結婚したが、ドイツで仕事を見つけた夫から、もうずっと音沙汰がない。アヌには密かに付き合うイスラム教徒の恋人がいるが、親に知られたら大反対されることは分かっていた。
そんな中、病院の食堂に勤めるパルヴァディが、高層ビル建築のために立ち退きを迫られ、故郷の海辺の村へ帰ることに。揺れる想いを抱えたプラバとアヌは、1人で生きていくというパルヴァディを村まで見送る旅に出る。神秘的な森や洞窟のある別世界のような村で、2人はそれぞれの人生を変えようと決意させる、ある出来事に遭遇する――。
インド映画として30年振りに第77回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門入りを果たした本作。
グレタ・ガーウィグ監督を審査員長に、日本から審査員として参加した是枝裕和監督も本作を絶賛し、パルム・ドールを受賞後アカデミー賞作品賞を受賞した『ANORA アノーラ』や『エミリア・ペレス』『サブスタンス』など、その年の注目作品となる強豪作品が多数出品された中で、インド映画史上初のグランプリを受賞。
「夜のムンバイを背景にした孤独なロマンスを、これほど美しくとらえた映画は初めてだ」(Variety)、「心を奪われない人はいないはず」(BBC)、「完璧な1作」(Les Inrockuptibles)と絶賛が続出し、さらにゴールデン・グローブ賞など100以上の映画祭・映画賞にノミネートされ25以上の賞を受賞、オバマ元大統領の2024年のベスト10に選ばれ、70か国以上での上映が決定するなど、世界中から高評価を獲得している。
本作の監督を務めたムンバイ生まれの新鋭パヤル・カパーリヤーが、最初にその稀有なる感性を世界に見つけられたのは、初の長編ドキュメンタリー映画『何も知らない夜』。
2021年のカンヌ国際映画祭監督週間でベスト・ドキュメンタリー賞に当たるゴールデンアイ賞、2023年の山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション部門でロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)を受賞。鋭く政治的でありながら美しく詩的なハイブリッド作品と高評価を受け、ドキュメンタリーというジャンルの可能性を広げた。
そして初の長編劇映画となった本作で、見事カンヌ国際映画祭グランプリを獲得。光に満ちたやさしく淡い映像美、洗練されたサウンド、そして夢のように詩的で幻想的な世界観を紡ぎ出し、これまでのインド映画のイメージを一新。
「ウォン・カーウァイを彷彿とさせる」と評判を呼び、シャーロット・ウェルズ監督(『aftersun/アフターサン』)、セリーヌ・ソン監督(『パスト ライブス/再会』)など、若手女性監督たちの作品が世界の映画祭で脚光を浴びる中、パヤル・カパーリヤー監督もまた、世界中から新たな才能として注目を集めている。
この度解禁された本ポスターは、夜のムンバイの駅のホームに静かに佇むアヌの姿を捉えたもの。監督が映し出す、夜の青い光と影の美しいコントラストの中で浮かび上がるアヌの静かな眼差しは、「運命から、解き放たれる」というキャッチコピーと深く呼応、力強く惹きつける印象的なビジュアルとなった。
また、シーン写真は外国へ行ったきりのプラバの夫から突然<炊飯器>の贈り物が届く様子を映し出したもの。長年音沙汰がなかった夫からの唐突なプレゼントに戸惑いながら、ルームメイトのアヌとあれこれ推察しあう様子は、寄り添い、ときにはそっと距離を置く。そんなもどかしくも心地良い2人の関係が伝わってくるようなカットとなっている。
プラバを演じるのは、『Biriyaani』(原題)でケーララ州映画賞・主演女優賞を受賞、2024年度東京フィルメックスでも上映され話題を呼んだ『女の子は女の子』にも出演したカニ・クスルティ。
アヌには『Ariyippu』(原題)でロカルノ国際映画祭国際コンペティション部門主演女優賞にノミネートされたディヴィヤ・プラバ。
パルヴァディには、日本でもスマッシュヒットを記録したインド映画『花嫁はどこへ?』のベテラン俳優のチャヤ・カダム。生きる様を表現するかのようなリアルな演技が、観る者の心の芯を静かに深く揺さぶる。
世代や境遇、性格も異なる3人の女性の共通点は、ままならない人生に葛藤しながらも、自由に生きたいと願っていること。
はじめは分かり合えなかった3人が、互いを思いやり支え合っていく。そこにあるのは、ただ相手の存在を“認める”という温かな視線。彼女たちの姿に国境も人種も超えて、共感が広がっている本作だが、さらにメディアや批評家から讃えられたのは、美しさを極めた映像と音楽。
ムンバイの街並みとラトナギリの自然を対比させ、監督の類稀なる感受性を通すことでアートへと昇華。また、街を彷徨いながら小さなカメラで撮影した映像と録音した環境音をドラマに組み合わせるという、ドキュメンタリー経験者ならではのテクニックにも注目だ。
『私たちが光と想うすべて』は7月25日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)