画像提供:マイナビニュースNTT西日本は、QUINTBRIDGEの開業3周年を記念し、これまでの活動成果と今後の展望を紹介する成果報告会を、4月21日に開催した。
当日はNTT西日本の北村亮太社長によるプレゼンテーションや、大阪城公園周辺エリア(京橋・森之宮)の活性化の未来像を描くパネルディスカッションを実施。業界初の「出資確約型」事業共創プログラムについても紹介された。
○■オープンイノベーション拠点「QUINTBRIDGE」の成果
2022年3月にNTT西日本が開設した「QUINTBRIDGE」は、企業・スタートアップ・自治体・大学などのパートナーとの共創と社会実装を通じ、ウェルビーイングが実感できる社会の実現を掲げるオープンイノベーション施設。
NTT西日本の北村亮太社長はオープニングプレゼンテーションを行い、社会課題の解決と未来社会の創造を成し遂げるための本施設の特徴、3年間の成果と今後の取り組みについて語った。
「『QUINTBRIDGE』の特徴は、NTT西日本という一企業が運営母体となり、自社ではなく課題や問いを起点に、企業・自治体・大学・スターアップ・市民がオープンにフラットに共創できる場づくりを徹底してきたこと。そのべースにあるのが、「Self-as-We」(「わたし」の挑戦を、「わたしたち」の挑戦へ)という理念です。一人ひとりの志や課題意識を大切に、一人では解決できない社会課題の解決を目指していくことを示しています」
現在「QUINTBRIDGE」の個人会員は約2万5,000人、法人会員は1,895組織まで広がり、そのネットワークは年々拡大している。
共創活動を進める連携パートナーは77組織となり、延べ利用者数は累計で25万人を突破。1日平均利用者数は300名以上、イベント・プログラム開催は年間453回に上り、そのうち約7割は、会員の持ち込み型というかたちで行われているという。
「『QUINTBRIDGE』が会員主導の共創フィールドとして機能していることが、これらの数字にも表れているのではないかと考えています。この3年間で累計115件の共創プロジェクトが本施設で生まれ、事業化・サービス化、ポップや出資、組織設立などのアクションへと結びついてきました。NTT西日本もいち会員として、現在約30件のプロジェクトに関わらせていただいています」
会員間の共創事例として紹介されたのが、スタートアップ「二加屋」社の赤外線サバイバルゲーム事業だ。自治体職員が地域課題をプレゼンする「QUINTBRIDGE」の人気イベントに、京都市の担当者が公園活性化事業のためピッチ登壇したことが契機となり、赤外線サバゲーの市民向け共催イベントが実現。赤外線サバゲーの可能性が広がり、新規ビジネスとして事業会社化に至っているという。
また、NTT西日本グループの共創事例では、警備ロボットを開発するロボティクス系スタートアップ「ugo」社との取り組みが紹介された。「QUINTBRIDGE」にテナントとして入居する同社は、NTT西日本のICT技術などを掛け合わせた共創を進め、2023年11月に実証実験を実施。
その後「NTTドコモ・ベンチャーズ」の出資へつながり、翌年7月には商用サービス「ロボメンおまかせビルパック」の提供を開始した。「Osaka Metro」との連携も始まり、現在は夢洲駅での多言語対応ロボットの実証実験に発展している。
「こちらの事例は『QUINTBRIDGE』という場を起点にNTT西日本グループ内の複数部署が連携し、スタートアップとのサービス開発・事業化が実現したケースです。この3年間で私たちは場をつくることから始まり、つながりを生み、共創を支え、社会実装というプロセスを歩んできました。まだまだ試行錯誤の連続ですが、今後は関西地域全体の活性化へのさらなる貢献を目指します」
○■QUINTBRIDGE、4年目の新たな挑戦
4年目を迎えるにあたり、「QUINTBRIDGE」は新たに出資確約型事業共創プログラム「Spark-Edge For Next Challengers」と「イノベーションディストリクト構想」という2つの取り組みを開始する。
「Spark-Edge」はNTTファイナンス社と連携し、1社当たり最大500万円を採択企業に出資するプログラム。「QUINTBRIDGE」開設以降、NTT西日本グループは外部企業との共創プログラムを実施してきたが、資金調達が必要なスタートアップを対象に出資確約型のプログラムを用意し、早期事業化を見据えた共創を推進していくという。
本プログラムでは第1弾として、エンタメ領域の2テーマ(声の可能性を広げるビジネス/推し活IDビジネス)で、成長拡大をめざすパートナーを募集する。
「イノベーションディストリクト構想」は「QUINTBRIDGE」の立地する京橋・森ノ宮エリアをイノベーションが連鎖する街に進化させていく構想。「QUINTBRIDGE」をハブにして異分野連携を日常的に起こし、商店街や地域住民の課題やテーマを学生や企業が一緒に解決していく街づくりのムーブメントを起こす。
イノベーション・ディストリクトは、企業・行政・大学・地域住民などが連携し、有機的にイノベーションを生み出すための地域のこと。かつては郊外にある研究学園都市などの施設がイノベーション創出の中心だったが、近年は次世代オープンイノベーションのかたちとして世界的に都心部が注目されているという。
京橋・森ノ宮エリアは、そんなイノベーション・ディストリクトに共通の要件とされる4つの主体的な駆動者の存在などに恵まれた地域とのことで、パネルディスカッションも実施された。
○■IOWNを活用した未来のコミュニケーション体験
2025大阪・関西万博のNTTパビリオンでは、3D空間転送などを体験できるブースなどを提供。4つの分棟に分かれたパビリオンのうちZONE1〜3の3棟では、一般来場者が未来のコアテクノロジー「IOWN(アイオン) APN(All Photonics Network)」を活用した未来のコミュニケーションを体験できる。
「QUINTBRIDGE」は大阪・関西万博会場と次世代通信基盤「IOWN」の進化版となる「IOWN APN」で接続されており、本会ではNTTパビリオンと連動した体験コーナーもメディア向けに実施された。
遠隔でのタッチセラピーを再現するリラックスシート「Remotouch(リモタッチ)」は、「映像+音声+人のあたたかな触感」が伝わる新しいコミュニケーション体験を実現するNTTとトヨタ紡織の共創プロジェクトだ。NTTグループが提供する次世代情報通信基盤「IOWN APN」と、トヨタ紡織のあたたかな触れ合いを再現する技術で触感を伝送するという技術を活用。
NTTパビリオンにいるセラピストの優しく人をさする繊細な力加減と動きをリアルタイムで再現し、遠隔地(QUINTBRIDGE)でタッチセラピーを受けられる。
オキシトシンの分泌を促すタッチセラピーはリラックス効果、うつ病改善や認知症の予防効果などもあり、将来、ヘルスケア分野の事業へ発展につながる可能性があるという。
また、NTTコミュニケーションズとセブン-イレブン・ジャパンの共創プロジェクトでは、「newme」というロボットを活用し、万博会場内のセブンイレブン店舗での遠隔接客サービスの実証実験も実施されている。接客業務の省人化と効率化を検証するもので、万博会場のオペレーターが「IOWN APN」を介して「QUINTBRIDGE」のロボットを遠隔操作した。
会員が最新テクノロジーに触れることで新たなビジネスアイデアが社会実装されていくことを目指し、「QUINTBRIDGE」ではNTTグループをはじめとする会員の実証実験や実証展示を行う場にもなっているようだ。
伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら(伊藤綾)